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2005年12月27日
デジタル音楽の行方
デジタル技術の発展により、音楽業界は今後どうなるのか!?という本。レコード業界は一環して「デジタル技術がもたらした違法コピーにより、音楽は危機に瀕している!」と叫び続けているわけだが、本書の主張によればそもそも「音楽業界=レコード業界」という図式が成り立っていたこと自体が異例なことであり、むしろ音楽へのニーズは今までになく高まっている。人々の暮らしの中で音楽というのは欠かせないものになっており、旧態依然としたパッケージ商法から上手く抜け出した者が今後の音楽産業で生き残っていくだろう。
結構去年から今年にかけてはこの手の議論に関わる本を色々読んだ(ローレンス・レッシグの三部作『CODE』『コモンズ』『Free Culture』、津田大介『だれが「音楽」を殺すのか?』、烏賀陽弘道『Jポップとは何か―巨大化する音楽産業』など)ので、個人的には結構既視観のある議論ではある。
で、本書で言われているようにリスナーはただ同然で音楽を楽しむことができて、かつアーティスト側には適切に利益が分配される、そんな世の中になれば大変素晴らしいことだと思う。とはいえ現状のレコード業界の抵抗ぶりを見てると、ほんとにそんなに上手くいくのかなあ、という気も(本書では、かつてのラジオやケーブルテレビなどの例をひいて、最終的には行政が介入して強制的に解決するだろう、という見通しをしている)。
あと、ここで言われている「アーティスト」っていうのが、なんだかんだでポップスターを想定してるのかな、っていう気はしました。もっとこう、ちょっとデータ形式での「配信」というのが馴染まないタイプの音楽って世の中にはたくさんあると思うんだけど。いや、テクノロジーの発達によって「ニッチ」な音楽でもそれを求める層に着実に届けることが可能になる、という話であるんだけど。んー、うまく言葉にできないんだけど微妙に引っかかるとこもないではない。
それこそ「アルバム」という単位がなくなって、みんな「好きな曲」だけを手に入れるようになる、という話とか。あと機械的に「これもオススメ」ってしてくれる機能が発達して、どんどん自動的に「好きな音楽」と出会いやすくなる、なんていう話も個人的にはちょっと胡散臭く思ってるのね。それって、「用意された」「想定内の」多様さでしかないんじゃないかな、っていう。それこそ「オススメ」機能なんていうのは、むしろシステムにより個々人のテイストまでが管理される世の中を招いてるようにも思えちゃうのです。偶然の出会いの機会がスポイルされるというか。
とはいえ、その辺は偏った音楽が好きな偏屈者が文句つけてるってだけの話で、概ね大変オプティミスティックで元気の出る本だと思うので、読んでみてはいかがでしょうか。
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投稿者 junne : 2005年12月27日 23:59