2006年02月20日
Bob Dylan / No Direction Home
■渋谷シアター・イメージフォーラムにて(吉祥寺のバウスでもやってたんだけど、終わっちゃったのよね)。
■4時間に及ぶ長尺作品(途中で10分間の休憩を挟む)。前半はディランを絡めたアメリカ音楽史、という感じの内容。このへん、スコセッシ自身の興味のポイントなんでしょうな。フーク=フォークロアがどのようにして伝わっていくのか。ニューヨークのフォークシーンの描写など興味深い。んで、ディラン自身のソングライティングも初期の頃は昔からあるフォークソングに現代的な解釈の加わった歌詞を乗っけるという手法が多く、これっていうのはフォークでは珍しいものではない、というようなところも面白かったな。
■んで、66年のザ・バンドを従えてのイギリス公演で、酷いブーイングを受ける場面が映画全体を通じて何度も出てくるのだけど、これって単に音楽的に趣味が合わないっていう話じゃなく、また新しいスタイルに聴衆がついてこれなかったっていう話でもなくて、フォーク/フォークロアにまつわる「民衆の中から生まれた」「伝統のある」「真摯で純粋な音楽」っていう幻想、それに対してロックやポップスっていうのは資本がバックについた商業主義的な音楽だ、とまあそういったイデオロギー的な反応だったわけですよね。
■でも実際は「フォーク」だってレコードとして売られていくわけで、充分に商業的である。例えばピーター・ポール・アンド・マリーなんていうのはマネージャーの周到なマーケティング/イメージ戦略が背後にあるわけで、それに対してむしろディラン自身はマネージャーに操られることもなく、常に「自分のやりたいこと」だけをやっていた(少なくともこの映画の中ではそのように描かれている)。辣腕マネージャの一枚上をいく強かな面(若い頃からレコードをちゃっかり借りパクして、「あれは僕のような孤独な探究者には必要なものなんだ」とおそらく本気で言いきってたり)。
■んで、あと印象的なのが本人の急激な変化。ニューヨークに出てきた頃はどっちかというと可愛い感じなのだけど、2、3年でみるみるうちにもの凄い神秘的なオーラを身に纏うに至る。この間にいったい何があったのだろう。
■そして何が凄いって、4時間かけてもバイク事故の頃までしか話が進まないということ。これはもう、是非続編を作っていただきたい。んで、最終的にディランの全キャリアを16時間くらいで振り返る、みたいな超大作にしてもらいたいものです。
投稿者 junne : 2006年02月20日 18:06