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2007年10月10日
伊藤計劃『虐殺器官』
■早川SFシリーズ Jコレクションといえば西島大介『アトモスフィア』(上)(下)や円城塔『Self-Reference Engine』など注目作が目白押しなわけだけれど、近未来を舞台にした正統派SFの本書もこれまたえらく面白かった。
■9.11以降、先進国では個人認証の技術が進み、誰もがあらゆる個人情報を記録されている。一方、後進国では内戦などによる虐殺が横行。主人公はアメリカ軍の特殊部隊に属する軍人で、そうした虐殺の鍵を握ると思われる要人の暗殺を職業としている。そして、彼らの行く先々で姿をチラつかせる謎の男の存在が浮かび上がる……。
■セキュリティの名の下で管理されるプライバシー、軍隊や刑務所にいたるまで進む民営化など、なんとなく設定上は「ギートステイト」なんかとも重なる部分が多い。というのはやっぱSFが描く「未来」は常に「現在」を反映するものだから、なんでしょうな。
■主人公の心に圧し掛かる罪、それを投影して主人公の眼前に現われる「死者の国」、任務で訪れるたびに繰り返される地獄絵図、重いテーマを扱いつつもサスペンスフルにガンガン読ませる、非常にクオリティの高い作品かと。
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投稿者 junne : 2007年10月10日 02:05
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