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2007年10月14日
内田樹『村上春樹にご用心』
■内田樹の本、以前は出れば必ず買っていたのだけれど、最近は正直ぜんぜんフォローできていない。本出しすぎ!っていうのもあるし、ちょっと政治的に首をかしげる箇所が多くなってきたせいもある。ともあれ久々に購入した最新刊。
■タイトルどおり、村上春樹に関するテキストを集めたもの。多くは初出がブログだが、一部雑誌等に発表されたものもある。ものによってはかなり加筆が加えられている模様。「村上春樹はなぜ世界中で読まれるようになったのか」というのが大きなテーマであり、村上春樹の小説の多くに見られる物語構造を読み解くことでその答えを提示している。それ自体は面白いし「なるほど」と思う。また、その視点は他の小説を読む際にも新たな補助線というか座標軸というか、そういうのを与えてくれるものでもある。ぼくにとっては優れた批評というのは、「それによってものの見方が変わる」ような新たな座標軸を与えてくれるものだと思っているので、そういう意味では本書もすぐれた批評だと言っていいと思う。
■んだけど、なんか引っかかる点があって、それは何かというと、執拗に繰り返される「批評家」「評論家」批判なのね。村上春樹が評論家を「馬糞のようなもの」と言っているというのを嬉々として何度も引用してたり。そういう政治性がどうしても引っかかって、「スリリングな批評を読んだ!」という爽快感がだいぶ減じられてしまったのが非常に残念ではある。
■とはいえ、村上春樹の小説についての「読み」に関しては非常に面白いのは確かなので、一読をお薦めはしますよ。
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投稿者 junne : 2007年10月14日 23:40
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