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2013年09月09日
8/19(Mon)Songs in the Bookshelf: 本棚の音楽#1
■当日は二部構成でお送りしました。前半は矢野利裕さんと2人でここ最近のヒップホップ本をご紹介。まず一冊目はこちら。
ヒップホップ!: 黒い断層と21世紀 関口 義人 青弓社 2013-06-06 by G-Tools |
基本的にワールド・ミュージック系のライターによるヒップホップ本。最初のほう、USのヒップホップについての部分はわりとどの本にも書いてあるようなことだったりして、正直なんでこんな本を今頃?と思ったのだけど、後半に入ると日本も含めて世界中のヒップホップについて、それぞれの国におけるシーンの流れをコンパクトながら丁寧に紹介しておりすごくためになる。アフリカとか、この本を片手にいろいろ掘りたいですな。
■そして日本語ラップシーンをしっかりフォローしているわりと数少ないプロパーな書き手の一人として、二木信さんの『しくじるなよ、ルーディ!』を紹介。この本の見どころとしてはやはり、かつてWebエレキング上で行われた環ロイとのやりとりでしょうか。
二木信評論集 ~しくじるなよルーディ~ (ele‐king books) 二木信 Pヴァイン 2013-01-18 by G-Tools |
■あとは、なんといっても日本語ラップについては金字塔感のある大著、都築響一さんの『ヒップホップの詩人たち』。ボリューム、人選、内容まで、ひとまず現時点での日本語ラップ本としては決定版と言っていいと思います。また、この本にも登場するB.I.G.ジョーの獄中体験を綴った『監獄ラッパー』にも合わせて矢野さんが紹介してくれました。
ヒップホップの詩人たち 都築 響一 新潮社 2013-01-31 by G-Tools |
監獄ラッパー B.I.G. JOE 獄中から作品を発表し続けた、日本人ラッパー6年間の記録 B.I.G. JOE リットーミュージック 2011-08-25 by G-Tools |
■で、ここで本日の議題のひとつと言うべき「リアリティ」の問題についての話題に。ラップの評価軸として「リアリティ」というのが問題になってくるわけですが、そのリアリティというのは実体験が伴わなくてはいけないのか。矢野さんは現在のラップ批評における実体験至上主義について、本来の専門である日本近代文学になぞらえて「”写生文”の時代で止まっている」と表現。
■後半は『街のものがたり』著者の巻紗葉さんとゲストの三田格さんに登壇いただき、『街のものがたり』についてお話を聞きました。「10年代以降の若手ラッパーを中心に」取り上げたとされる本書ですが、実は著者が2012年に良かったと思った人たちであり、自身が現場で遊んでいる時の実感を伝えたい、というのが根底にあったそうです。
■また三田さんはスチャダラパーを聞いた時に日本語の音楽表現がラップに移行しつつあるのかと思ったものの、その後いまひとつノレる相手が出てこなかったことをストレートに吐露。ヒップホップ自体に興味を持ったのはLL COOL Jの「I Need Love」だそうで。全体にヒップホップ観が独特すぎて面白かった。
■「ロックはアウトサイダーを志向するけどヒップホップはルールを守るのが好き」など、特に矢野さんから色々と興味深い視点が提示されて個人的には実に面白く過ごせた2時間半でありました。
街のものがたり―新世代ラッパーたちの証言―(ele‐king books) (ele-king books) 巻紗葉 Pヴァイン 2013-06-28 by G-Tools |
■次回は9/24(火)、『AMBIENT Definitive 1958-2013』を取り上げます。2009年〜2010年に刊行された『アンビエント・ミュージック』『裏アンビエント・ミュージック』を統合した決定版であり、さらに10年代におけるアンビエント観の大きな変化を捉えようとした野心的な一冊(と、解釈した)。詳細はまた追って告知しますのでお楽しみに!
アンビエント・ディフィニティヴ 1958-2013 (ele-king books) 三田 格 Pヴァイン 2013-07-26 by G-Tools |
投稿者 junne : 2013年09月09日 21:18
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