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2009年03月24日
伊藤計劃『ハーモニー』
■前作『虐殺器官』も面白かったこともあって、発売からはちょっと間が空いてしまったものの楽しみに読み始めたのが一昨日のこと。と思ったとたんに突然の訃報。ある本を読んでいるまさにその間にその著者が亡くなる、それが唐突に遺作になってしまう、というのはこれまで経験したことがなかったので、何だか動揺してしまって、どう反応していいのかわからずにいる。しかもその本の内容が内容だし。
■舞台は近未来。何らかのカタストロフがあって(おそらく『虐殺器官』とつながっている)世界の人口は激減。残された人々は一人ひとりが人類にとって貴重な「リソース」であるという意識のもと、徹底した健康管理/監視に基づいたある種の「ユートピア」を作り上げた。あらゆる病気や不摂生は取り除かれ、暴力や心に傷を与えるようなネガティヴな要素がすべて排除され互いに気遣いあう(子供たちの間ですら「いじめ」の一つもない!)。そんな世界に息苦しさを感じ、自殺することでそこから解放されることを求めた少女たち……というのが冒頭。
■まあ最近よく見かける「快適なディストピア」ものですわな。そしてそこから更にスケールは拡がり、意識とは何かとかそういった思弁的な領域に突入していく。これまた完全に偶然なんだけど、ちょうどこれを読んでる間に更新された松岡正剛の千夜千冊「神々の沈黙」の話とリンクしてきて、これまた変にタイミングが絶妙で気味が悪い。
■作品自体たいへん面白いのだけど、それだけでなく色々な意味で、忘れられない一冊になってしまいそうだ。こんなことで記憶に残るのも嫌なのだけど。この「先」をこそ書いてほしかったのに。この「先」が書けた作家はぼくが知ってる限りまだいないだけに、惜しまれてならない。
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投稿者 junne : 2009年03月24日 20:49
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