2015年07月23日
【6冊目】パリッコ『安レトルトカレーの研究 1』
■ミュージシャンで漫画家で酒エッセイストのパリッコ氏は自分でミニコミも出していて、ウェブ連載をまとめた「大衆酒場ベスト1000」シリーズはほんとに面白いのだけど、こちらも大変面白かったのである。
■タイトルどおり、ひたすら100円前後のレトルトカレーを食べてはレビューしていくというもの。レアものとかご当地ものとかそういうのじゃなくて、あくまでもだいたいどこでも買えそうなものばかりを「辛味」「甘味」「スパイス感」「もったり感」「独自性」「ナチュラルさ」といった項目ごとに星取り表を作って紹介していく。ボンカレーやククレカレーを「甘口」「中辛」「辛口」「大辛」と、ちゃんとそれぞれ食べていく真面目さが可笑しい。わざわざ専用ノートまで用意しているあたりは植草甚一を思い出させて個人的に共感。
■考えてみるとぼくはわりとレトルトカレーって具や調味料やスパイスで勝手にアレンジしちゃうことが多いのだが(それもあって、どのレトルトがどんな味だったとかあんまりよく覚えてなかったりするのだ)、この本では(たまに中農ソースを足したりはするものの)あくまでレビューという性質上、そのままの味を食べ比べている。これ、何かに似てるなと思ったら我らがカレー部部長・田畑満さんが一時マイブームだった「市販のカレーをレシピに忠実に作る」
というやつじゃないか。
■ちなみに購入はこちらからできます。「大衆酒場ベスト1000」シリーズも売ってるよ!
投稿者 junne : 02:55 | コメント (0) | トラックバック
2015年05月27日
【4冊目】【5冊目】『Jazz The New Chapter』『Jazz The New Chapter 2』
■現在来日中のロバート・グラスパーですが、来週東京公演を観に行く予定なので予習も兼ねて「Jazz The New Chapter」2冊とも読んだ。
■1冊目はここ10年くらいの「グラスパー以降」と言われる潮流の概説。主要ミュージシャンや主要ディスクの紹介が中心。2冊目はグラスパー周辺のほかにフライング・ロータス/ブレインフィーダー周辺、そしてECMを中心とした「黒くないジャズ」という切り口(いずれも一冊目でも言及はされている)を導入、アーティスト取材が1冊目より増えている感じ。
■「いまこれが面白い!」というものを見つけて、その文脈を示して線を引き、複数の文脈を交差させて面として展開するという、音楽評論の鑑のような仕事で、いまさらながら感服。
■それで思ったのだけど、いま「エクストリーム・ミュージックの新潮流」みたいのがある気がしてまして、これを何か形にしたいんだよなと思っていたのだが、大変その参考になる作り方がされた本だった。
Jazz The New Chapter~ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平 (シンコー・ミュージックMOOK) 柳樂 光隆 シンコーミュージック 2014-02-14 by G-Tools |
Jazz The New Chapter 2 (シンコー・ミュージックMOOK) 柳樂 光隆 シンコーミュージック 2014-09-08 by G-Tools |
投稿者 junne : 23:59 | コメント (0) | トラックバック
2015年03月13日
【3冊目】蓮實重彦『「ボヴァリー夫人」論』
■大著。今年は正月休みがちょっと長めだったのでその間に読もうと思って昨年末購入したのだが全然読み終わらず結局二ヶ月以上かかってしまった。ずっと読み続けてたわけではなく飛び飛びだけど。時折けっこう間が空いたりもしたので今ひとつ論旨を終えてない部分も多々あるし、膨大な脚註にも全然目を通せていないので「読み終えた」とはとても言えないが、まずはひと通り目を通したというだけで達成感(笑)。
■「エンマ・ボヴァリー」という名前はこの小説には一度たりとも出てこない(「エンマ」または「ボヴァリー夫人」と言われる)という事実を指摘し、それゆえにこれまで膨大に書かれた『ボヴァリー夫人』についての論考において「エンマ・ボヴァリー」という言葉を使っている論者はすべて「テクスト的な現実」から離れているとバッサリやることから始まり、様々な反復される動作や記号などを細かく読み解いていく。手法としては極めて蓮實重彦らしいものだが、「テクスト的な現実」にこだわりつつも草稿や著者の伝記的な事実、社会背景、先行研究など様々な資料を駆使しているあたりは流石長年のテーマだなと思わせる。
■別にライフワークとかではないとあちこちで強調しているようだけど、なんだかんだで高齢なので長年取り組んでいる題材にかたをつけていきたいんだろうな、という気はする。となると次はジョン・フォード論ですな!
「ボヴァリー夫人」論 (単行本) 蓮實 重彦 筑摩書房 2014-06-27 by G-Tools |
ボヴァリー夫人 (河出文庫) ギュスターヴ・フローベール 山田 ジャク 河出書房新社 2009-07-03 by G-Tools |
投稿者 junne : 00:43 | コメント (0) | トラックバック
2015年02月13日
【1冊目】【2冊目】湯浅学『ボブ・ディラン ロックの精霊』、萩原健太『ボブ・ディランは何を歌ってきたのか』
■「1000枚紹介する」に続けて「1000冊紹介する」もスタートするよ。まずはいきなり2冊紹介だ。
■湯浅学と萩原健太というベテラン音楽評論家によるボブ・ディラン伝。湯浅さんのほうはいかんせん新書なのでボリューム的に物足りないうらみはあるものの、その代わりにコンパクトにまとまっててありがたい。
■ボリュームと熱量でいうなら断然萩原健太さんのほう。本当によく調べられているなと感心する一方で、作品ごとの好き嫌いがものすごくはっきりしてて面白い。「ブートレッグ・シリーズ」のこともしっかり触れてくれているのもいいですね。実はぼくが最初に買ったディランの音源は未発表曲ボックスの『ブートレッグ・シリーズ第一集〜第三集』だったので(我ながら何故!?って感じ)、この本があればようやくこの3枚組の世界に踏み込んでいくことができそうだ。
■当たり前だけど注目するポイントが微妙に違ったりもするので、この2冊を見比べながら順番にディランの作品を聴いていく、というのがいちばんいいと思う。
■実際、今後、これらの本を傍らに置いてディランの作品の数々を聴くということができるのは幸せなことだ。ぼくはこのところ、これらを片手に初期作品から聞き直しているところ。ていうか初期作品とベスト盤くらいしか聴いたことなかったので、これからちょっとずつ聴いていくという楽しみができてありがたいと思っている。
■しかしどうせだったら萩原健太氏にはエルヴィスでお願いしたいところではある。湯浅さんにはいろいろ書いてほしいけどまずはザッパだろうか(と思ってたらエレキングブックスからサン・ラの本が出ましたね。その手があったか!)。
ボブ・ディラン――ロックの精霊 (岩波新書) 湯浅 学 岩波書店 2013-11-21 by G-Tools |
ボブ・ディランは何を歌ってきたのか (ele-king books) 萩原健太 Pヴァイン 2014-08-06 by G-Tools |
Shadows in the Night Bob Dylan Sony 2015-02-02 by G-Tools |