2015年07月23日
【6冊目】パリッコ『安レトルトカレーの研究 1』
■ミュージシャンで漫画家で酒エッセイストのパリッコ氏は自分でミニコミも出していて、ウェブ連載をまとめた「大衆酒場ベスト1000」シリーズはほんとに面白いのだけど、こちらも大変面白かったのである。
■タイトルどおり、ひたすら100円前後のレトルトカレーを食べてはレビューしていくというもの。レアものとかご当地ものとかそういうのじゃなくて、あくまでもだいたいどこでも買えそうなものばかりを「辛味」「甘味」「スパイス感」「もったり感」「独自性」「ナチュラルさ」といった項目ごとに星取り表を作って紹介していく。ボンカレーやククレカレーを「甘口」「中辛」「辛口」「大辛」と、ちゃんとそれぞれ食べていく真面目さが可笑しい。わざわざ専用ノートまで用意しているあたりは植草甚一を思い出させて個人的に共感。
■考えてみるとぼくはわりとレトルトカレーって具や調味料やスパイスで勝手にアレンジしちゃうことが多いのだが(それもあって、どのレトルトがどんな味だったとかあんまりよく覚えてなかったりするのだ)、この本では(たまに中農ソースを足したりはするものの)あくまでレビューという性質上、そのままの味を食べ比べている。これ、何かに似てるなと思ったら我らがカレー部部長・田畑満さんが一時マイブームだった「市販のカレーをレシピに忠実に作る」
というやつじゃないか。
■ちなみに購入はこちらからできます。「大衆酒場ベスト1000」シリーズも売ってるよ!
投稿者 junne : 02:55 | コメント (0) | トラックバック
2015年05月27日
【4冊目】【5冊目】『Jazz The New Chapter』『Jazz The New Chapter 2』
■現在来日中のロバート・グラスパーですが、来週東京公演を観に行く予定なので予習も兼ねて「Jazz The New Chapter」2冊とも読んだ。
■1冊目はここ10年くらいの「グラスパー以降」と言われる潮流の概説。主要ミュージシャンや主要ディスクの紹介が中心。2冊目はグラスパー周辺のほかにフライング・ロータス/ブレインフィーダー周辺、そしてECMを中心とした「黒くないジャズ」という切り口(いずれも一冊目でも言及はされている)を導入、アーティスト取材が1冊目より増えている感じ。
■「いまこれが面白い!」というものを見つけて、その文脈を示して線を引き、複数の文脈を交差させて面として展開するという、音楽評論の鑑のような仕事で、いまさらながら感服。
■それで思ったのだけど、いま「エクストリーム・ミュージックの新潮流」みたいのがある気がしてまして、これを何か形にしたいんだよなと思っていたのだが、大変その参考になる作り方がされた本だった。
Jazz The New Chapter~ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平 (シンコー・ミュージックMOOK) 柳樂 光隆 シンコーミュージック 2014-02-14 by G-Tools |
Jazz The New Chapter 2 (シンコー・ミュージックMOOK) 柳樂 光隆 シンコーミュージック 2014-09-08 by G-Tools |
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2015年03月13日
【3冊目】蓮實重彦『「ボヴァリー夫人」論』
■大著。今年は正月休みがちょっと長めだったのでその間に読もうと思って昨年末購入したのだが全然読み終わらず結局二ヶ月以上かかってしまった。ずっと読み続けてたわけではなく飛び飛びだけど。時折けっこう間が空いたりもしたので今ひとつ論旨を終えてない部分も多々あるし、膨大な脚註にも全然目を通せていないので「読み終えた」とはとても言えないが、まずはひと通り目を通したというだけで達成感(笑)。
■「エンマ・ボヴァリー」という名前はこの小説には一度たりとも出てこない(「エンマ」または「ボヴァリー夫人」と言われる)という事実を指摘し、それゆえにこれまで膨大に書かれた『ボヴァリー夫人』についての論考において「エンマ・ボヴァリー」という言葉を使っている論者はすべて「テクスト的な現実」から離れているとバッサリやることから始まり、様々な反復される動作や記号などを細かく読み解いていく。手法としては極めて蓮實重彦らしいものだが、「テクスト的な現実」にこだわりつつも草稿や著者の伝記的な事実、社会背景、先行研究など様々な資料を駆使しているあたりは流石長年のテーマだなと思わせる。
■別にライフワークとかではないとあちこちで強調しているようだけど、なんだかんだで高齢なので長年取り組んでいる題材にかたをつけていきたいんだろうな、という気はする。となると次はジョン・フォード論ですな!
「ボヴァリー夫人」論 (単行本) 蓮實 重彦 筑摩書房 2014-06-27 by G-Tools |
ボヴァリー夫人 (河出文庫) ギュスターヴ・フローベール 山田 ジャク 河出書房新社 2009-07-03 by G-Tools |
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2015年02月13日
【1冊目】【2冊目】湯浅学『ボブ・ディラン ロックの精霊』、萩原健太『ボブ・ディランは何を歌ってきたのか』
■「1000枚紹介する」に続けて「1000冊紹介する」もスタートするよ。まずはいきなり2冊紹介だ。
■湯浅学と萩原健太というベテラン音楽評論家によるボブ・ディラン伝。湯浅さんのほうはいかんせん新書なのでボリューム的に物足りないうらみはあるものの、その代わりにコンパクトにまとまっててありがたい。
■ボリュームと熱量でいうなら断然萩原健太さんのほう。本当によく調べられているなと感心する一方で、作品ごとの好き嫌いがものすごくはっきりしてて面白い。「ブートレッグ・シリーズ」のこともしっかり触れてくれているのもいいですね。実はぼくが最初に買ったディランの音源は未発表曲ボックスの『ブートレッグ・シリーズ第一集〜第三集』だったので(我ながら何故!?って感じ)、この本があればようやくこの3枚組の世界に踏み込んでいくことができそうだ。
■当たり前だけど注目するポイントが微妙に違ったりもするので、この2冊を見比べながら順番にディランの作品を聴いていく、というのがいちばんいいと思う。
■実際、今後、これらの本を傍らに置いてディランの作品の数々を聴くということができるのは幸せなことだ。ぼくはこのところ、これらを片手に初期作品から聞き直しているところ。ていうか初期作品とベスト盤くらいしか聴いたことなかったので、これからちょっとずつ聴いていくという楽しみができてありがたいと思っている。
■しかしどうせだったら萩原健太氏にはエルヴィスでお願いしたいところではある。湯浅さんにはいろいろ書いてほしいけどまずはザッパだろうか(と思ってたらエレキングブックスからサン・ラの本が出ましたね。その手があったか!)。
ボブ・ディラン――ロックの精霊 (岩波新書) 湯浅 学 岩波書店 2013-11-21 by G-Tools |
ボブ・ディランは何を歌ってきたのか (ele-king books) 萩原健太 Pヴァイン 2014-08-06 by G-Tools |
Shadows in the Night Bob Dylan Sony 2015-02-02 by G-Tools |
投稿者 junne : 00:50 | コメント (0) | トラックバック
2015年01月02日
2014ベスト10 Book篇
ぼくにしては珍しく2014年は旅行の多かった年だった。韓国とインドネシアへの旅行はすごく自分にとって収穫のある旅となった。そんな自分にとって大変に刺激になったのが以下の2冊。
史上最強の台北カオスガイド101 (SPACE SHOWER BOOKs) 丸屋九兵衛 スペースシャワーネットワーク 2014-01-30 by G-Tools |
大韓ロック探訪記 (海を渡って、ギターを仕事にした男) 長谷川 陽平 大石 始 DU BOOKS 2014-05-16 by G-Tools |
音楽書でも良書が多かった。特にいわゆるモノグラフで力の入った本が多かったと思う(『「4分33秒」論』とかね!)。萩原健太さんの本を片手にディランのアルバムを辿っていく、というのが昨年後半のひそかな楽しみだったのだけれど、これを今年も継続していきたいと思う。あと、ぜひエルヴィスの本も書いてください。
ボブ・ディランは何を歌ってきたのか (ele-king books) 萩原健太 Pヴァイン 2014-08-06 by G-Tools |
小説の新刊はあまり読めなかったのだけど、読んだ中でよかったのを日本と海外で一冊ずつ挙げておきます。
春の庭 柴崎 友香 文藝春秋 2014-07-28 by G-Tools |
ペナンブラ氏の24時間書店 ロビン・スローン 島村 浩子 東京創元社 2014-04-21 by G-Tools |
ブックガイドではこの2冊
ベスト珍書 - このヘンな本がすごい! (中公新書ラクレ) ハマザキカク 中央公論新社 2014-09-09 by G-Tools |
ROADSIDE BOOKS ── 書評2006-2014 都築 響一 本の雑誌社 2014-06-24 by G-Tools |
ジンを始めようと思うきっかけになった本のひとつ。会社で本が作れないなら自分で出しちゃえばいいのだ(出版社を作っちゃうほど思い切ってはいないのだけど)。
あしたから出版社 (就職しないで生きるには21) 島田 潤一郎 晶文社 2014-06-27 by G-Tools |
去年に限らずここ数年、音楽雑誌で面いといえばだんぜんこの2つです。俺もがんばります。
ついでに2014年の新刊じゃないけど読んで面白かった本も6冊ほど
ルイス・ブニュエル 四方田 犬彦 作品社 2013-06-21 by G-Tools |
脳病院をめぐる人びと: 帝都・東京の精神病理を探索する 近藤 祐 彩流社 2013-10-02 by G-Tools |
HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション) ローラン・ビネ 高橋 啓 東京創元社 2013-06-28 by G-Tools |
家族喰い――尼崎連続変死事件の真相 小野一光 太田出版 2013-10-30 by G-Tools |
東京プリズン (河出文庫) 赤坂 真理 河出書房新社 2014-07-08 by G-Tools |
怪奇映画天国アジア 四方田 犬彦 白水社 2009-06 by G-Tools |
投稿者 junne : 00:10 | コメント (0) | トラックバック
2014年02月17日
坂崎重盛『ぼくのおかしなおかしなステッキ生活』
■男子にはこういう人が多いんじゃないかという気がするのだが、ステッキには昔から憧れがありまして。遡れがおおむねホームズやルパン(あとまあ怪人二十面相とか)あたりの影響というのが大きいんだとは思うのだが、その後も灰野さんだったり内田裕也だったりとステッキスターたちは枚挙にいとまがない。
■で、この本はコレクター気質の著者がさまざまな角度からステッキの魅力を語る一冊である。そもそもコレクションの魅力はハンティング行為にあると喝破し、旅行に行くたびに珍品名品ステッキ探しに余念がないにもかかわらず、帰国するとけっこう気前よく人にあげちゃうという姿勢には、とみさわ昭仁さんのコレクター論に通じるものがあるように思う。
しかも現物を買うだけでは飽き足らず、ステッキを持った紳士の図版や、近代文学に登場するステッキの描写なども蒐集の対象になっていく。とくに後者なんかはこれまたとみさわさんのエアコレクションに通じるものがある気がしますね.
■そうして集められた図版やステッキの写真も満載の楽しい本でありました。やっぱステッキほしいなー。バリ島の土産物屋なんかでも、柄が蛇とか竜とかのステッキを売っててちょっと欲しくなったんだよなー(持ち運びが面倒くささそうなのであきらめたのだが、そこを乗り越えないとステッキユーザーにはなれまい)
ぼくのおかしなおかしなステッキ生活 坂崎 重盛 求龍堂 2014-01 by G-Tools |
投稿者 junne : 23:19 | コメント (0) | トラックバック
2013年09月30日
短期集中連載#7 最終回(たぶん)ジュンク堂書店池袋本店「編集者が選ぶ本フェア」本日まで
■先日お伝えしたように期間が延長された「編集者が選ぶ本フェア」、いよいよ本日が最終日となりました。ということで、今回はぼくがフェア用に選んだ本&コメントをご紹介します。
■地引雄一『EATER'90s インタビュー集:オルタナティブ・ロック・カルチャーの時代』(K&Bパブリッシャーズ)
学生時代に大いに影響されたミニコミ誌「EATER」掲載のインタビュー集。東京ロッカーズ周辺から同時代のオルタナティブミュージシャンまで日本のアンダーグラウンドシーンを紹介しており、特に大友良英のインタビューは人生の指針のひとつにもなった。
EATER'90s インタビュー集:オルタナティブ・ロック・カルチャーの時代 地引雄一 K&Bパブリッシャーズ 2012-09-27 by G-Tools |
■「Trash-Up vol.15」
いま一番おもしろい雑志。ホラー映画、地方インディーズ、グラフィックアート、現代詩、最近ではアイドルまで、ジャンルレスに面白いと思ったものを詰め込んだ物量と濃度には毎回ただただ圧倒されるのみ。バックナンバーも全部必読!(追記:フェア開始時点での最新号が15号だったのですが、会期終わり頃には16号に差し替えてもらってるはずです)
季刊 TRASH-UP!! vol.15 (書籍) 株式会社トラッシュアップ 2013-05-19 by G-Tools |
■クリス・カトラー『ファイル・アンダー・ポピュラー』
音楽を演奏し、音楽について考え、音楽について語ることで何ができるのか。基本中の基本ではありますが、多くの基本書が入手困難になっている中、十数年前に出たこの本がまだ手に入るというのは重要。
ファイル・アンダー・ポピュラー―ポピュラー音楽を巡る文化研究 クリス カトラー Chris Cutler 水声社 1996-11 by G-Tools |
■佐藤良明『ラバーソウルの弾み方』
ビートルズから、ブローティガン、『イージー・ライダー』、ピンチョン、ベイトソン等々ジャンルを超えて考察することで「60年代とは何だったのか」を捉える試み。学生時代に「音楽を語ることでこんなことができるのか!」と思った本のひとつ。
ラバーソウルの弾みかた ビートルズと60年代文化のゆくえ (平凡社ライブラリー) 佐藤 良明 平凡社 2004-02-10 by G-Tools |
■アリスン・ピープマイヤー『ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア』
「オシャレなアート系小冊子」に留まらないDiY文化としてのジン・カルチャー論は、(それが本来の姿であるにもかかわらず)日本では貴重。ミランダ・ジュライのファンなんかにも読んでほしいし『アメリカン・ハードコア』との併読もお薦めします。
ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア アリスン・ピープマイヤー 野中モモ 太田出版 2011-08-18 by G-Tools |
■副島輝人『日本フリージャズ史』
同著者の『現代ジャズの潮流』がたいへん勉強になったのだが、そちらは現在入手困難なのでこちらを。タイトル通り、著者自身も深く関わった日本のフリージャズ史。最近復刊されて話題の間章も、この本を読んでおくと理解の助けになるのでは。
日本フリージャズ史 副島 輝人 青土社 2002-04 by G-Tools |
サイモン・レイノルズ『ポストパンク・ジェネレーション』
自分のところで出したかった一冊。この前の時代を扱ったのが弊社刊『アナキストに煙草を』と『プリーズ・キル・ミー』。ほぼ同時代のアメリカを扱っているのが『アメリカン・ハードコア』。大著ばかりですがまとめてどうぞ!
ポストパンク・ジェネレーション 1978-1984 サイモン・レイノルズ 野中モモ シンコーミュージック・エンタテイメント 2010-05-12 by G-Tools |
■マイケル・ナイマン『実験音楽―ケージとその後』
現在制作中の本の資料です。タイトル通りジョン・ケージ以降の実験音楽について論じた一冊。現代音楽の流れをコンパクトにまとめた本は意外と少ない。「まずはこれを読め」と言える本、というのは自分の本作りでも重要視している点でもあります。
実験音楽―ケージとその後 マイケル ナイマン Michael Nyman 水声社 1992-12 by G-Tools |
■秋田昌美『スカム・カルチャー』
90年代に隆盛を極めた悪趣味/バッドテイスト文化。中でも個人的に最も影響を受けた名著がこれ。強烈な装丁を手がけるのはDTP第一世代でもある宇川直宏で、DOMMUNEの闇鍋感の源流を辿ると行き着く本のひとつ。
スカム・カルチャー 秋田 昌美 水声社 1994-08 by G-Tools |
■全体として、単に好きな本というよりは自分が本を作る上で影響を受けた本、自分が作った本と併せて読んでほしい本、現在進行形で刺激を受けている本などを選んだ感じです。
■ところでお伝えし忘れてたんですけど、今年発行されたジュンク堂の芸術書オススメ本カタログ「defray」というのがあります。一部で話題になりましたよね。で、この秋は色んな店舗で「defrayフェア」というのが行われています。開催店はこのあたりで探せる感じかな。
この「defrag」という冊子、これがまた上記リンクにあるように「書店員の本気」がうかがえる充実したカタログです。我らが松岡さんのコメントの数々も堪能できます。弊社からは木村覚さんの『未来のダンスを開発する! フィジカル・アート・セオリー入門』が掲載されています。フェア開催店でも手にとっていただけると思うのでよろしくお願いします。
未来のダンスを開発する (ブレインズ叢書) 木村 覚 メディア総合研究所 2009-10-10 by G-Tools |
投稿者 junne : 16:41 | コメント (0) | トラックバック
2013年09月21日
Songs in the Bookshelf: 本棚の音楽#2 #2 変容する「音と意味」~『AMBIENT definitive 1958-2013』をめぐって
(以下のイベント、出演者というか私の都合で急遽延期することになりました!ご予定されていた方申し訳ありません。また改めて日程決まり次第お知らせします!)
■さて、先月よりスタートした音楽書の新刊を紹介するイベントですが、「文化系のためのヒップホップ入門」と題してお送りした第一回に続きまして、第2回はアンビエントです。またしても三田格さんを、今度はメインのお客様に迎えてお送りします。
■メインで取り上げるのは、さきごろエレキング・ブックスのひとつとして刊行されました『AMBIENT Definitive』。ご存知のかたも多いと思いますが、三田格さんはこれまでに2冊、アンビエントのディスクガイドを編集しています。スタジオボイスの特集から派生した『アンビエント・ミュージック』、そしてそこからのスピンオフとして『裏アンビエント・ミュージック』。今回の本はその2冊を統合した「決定版」であるだけでなく、前2作以降にリリースされた音源を大量に含んでいるという点が大きな特徴だと思います。
アンビエント・ディフィニティヴ 1958-2013 (ele-king books) | |
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■これら3冊を読んでいて思ったのは、アンビエントという概念の幅広さなんですね。『裏』のあとがきでも言われてることなのですが、アンビエントとはジャンルではなくスタイルである、と(固有名詞じゃなくて形容詞だ、という意味だと思います)。「ハードコア○○」とか「ギャングスタ○○」とかと同じように、「アンビエント○○」って形で色んなジャンルにアンビエントというのは存在しうると。
■それはたぶんそうなんだけど、本を読んでて思ったのは、これは形容詞としても非常に曖昧なものなんじゃないかということなんです。松村正人さんがアンビエントっていうのは「オルタナティブ」以上に人によって違うんじゃないかって言ってたそうなのですが、それも同感。「ロック」くらい人によって解釈が違う気すらします。なので、そもそもアンビエントって何!?っていう話からしてみるのもいいのかな、と。
■また、本書の特徴としてここ5年くらいの音源をたくさん紹介しているというのがあります。ある意味、既に終わったジャンル、ある程度落ち着いちゃったジャンルのガイドであれば、新しいものが加わってくる余地っていうのはそんなにないわけですよね。ところが本書ではここ5年間のために30ページくらい割いている。明らかにこの間に量的にも質的にもそれだけのリリースがあったということです。しかもアメリカ発の物が多い。これもそれ以前と大きく違う点な気がする。いったいこの5年でアメリカに何があったのか?
■「アンビエント」というものの捉え方は時期によって変化があるというのも本書からうかがえるわけですが、それもまたこの5年で何らかの変化を迎えていると思われる。思うにアンビエントって、リズムとかメロディでなく音響そのものを楽しむ(あるいは「楽しむ」ことすらしない)ジャンルなわけですが、その捉え方が変わるというのは、音に対する仕方が変わってきているということもあるのではないか。
■ちなみにぼくが今作っている本はジョン・ケージの『四分三三秒』についての本なのですが、その中でも音をフェティッシュに愛でるという姿勢について疑義を呈している箇所があります。その辺の話も聞いてみたいところですね。
■ということで、来週火曜日です。よろしく!
■Songs in The Bookshelf [本棚の音楽]
#2 変容する「音と意味」
『AMBIENT definitive 1958-2013』をめぐって
予約はこちらから
[出演] 三田格、野田努、倉本諒、大久保潤
[日時] 2013年9月24日(火) 開場・19:00 開始・19:30
[会場] Live Wire Biri-Biri酒場 新宿
東京都新宿区新宿5丁目11-23 八千代ビル2F (Googleマップ)
・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6~8出口から徒歩5分
・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分
・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分
[料金] 1500円 (当日券500円up)
※終演後に出演者を交えてのフリーフード&フリードリンクの懇親会を開催します。参加費は2800円です(当日参加は3000円)。懇親会参加者には、入場時にウェルカムの1ドリンクをプレゼント。参加希望の方はオプションの「懇親会」の項目を「参加する」に変更してお申し込みください。参加費も一緒にお支払いただきます。
※懇親会に参加されない方は、当日別途ドリンクチャージ1000円(2ドリンク)をお買い上げください。
※領収書をご希望の方は、オプションの「領収書」の項目を「発行する」に変更してお申し込みください。当日会場で発行いたします。
※ご注文者には整理番号をメールでご連絡します。
お申し込み時に住所をご記入いただきますが、チケットの送付はいたしません。
当日会場受付にて、名前、電話番号、整理番号をお伝えいただければ入場できます。
※満席の場合は、立ち見をお願いいたします。
※お支払い後のキャンセルは一切受け付けませんのでご注意ください。
※銀行振り込み決済の締め切りは9/20(金)午後3時、カード決済の締め切りは当日午前0時です。
投稿者 junne : 22:40 | コメント (0) | トラックバック
2013年09月10日
ジュンク堂書店池袋本店「編集者が選ぶ本」フェア延長決定!(短期集中連載#6)
■これまで5回にわたって色々とお伝えしてきたジュンク堂書店池袋本店芸術書フロアの「編集者が選ぶ本」フェア、当初9/10までということだったので、「ああ、もう今日で終わりかー、結局イベント当日しか行けなかったなあ」と残念なような寂しいような申し訳ないような気持ちでいたところへ、担当の松岡さんから緊急連絡! なんとこのフェア、好評につき今月末まで延長が決まったそうです!
■松岡さんからは「ここまでたくさんのお客様に見ていただくのは初めてでした。」とのコメントいただきました。数々のフェアを手がけてきた方がそういうんだから結構なもんなんじゃないかと思います(ぼくも色んなフェアでお世話になってますし)。
■ちなみにぼくの選書からは「Trash-Up」最新号と秋田昌美さんの『スカム・カルチャー』がよく売れてるそうです。やはり俺はTrash & Scumなのか……。ちなみにTrash-Upは9/20に新しい号が出るそうなので、そのタイミングで入替えてくれてもいいんじゃないかなという気もします(まあそのへんはお店のほうに任せます)。
■8/15に行われたアルテスパブリッシング鈴木さん、Commmons:スコラ門松さんとのトークの模様、Ustreamで流れるという話だったのですが結局どうだったのかしらと思っていたらYouTubeのジュンク堂公式チャンネルにアップされておりました。
最初のほうをちらっと見てみたところ、我ながら「えー」「まあそのー」ばっかりで大変に聞き苦しいのですぐ止めてしまいましたけども、他のお二人の話は面白かったと思うのでよろしければご覧いただければと。
投稿者 junne : 21:45 | コメント (0) | トラックバック
2013年09月09日
8/19(Mon)Songs in the Bookshelf: 本棚の音楽#1
■当日は二部構成でお送りしました。前半は矢野利裕さんと2人でここ最近のヒップホップ本をご紹介。まず一冊目はこちら。
ヒップホップ!: 黒い断層と21世紀 関口 義人 青弓社 2013-06-06 by G-Tools |
基本的にワールド・ミュージック系のライターによるヒップホップ本。最初のほう、USのヒップホップについての部分はわりとどの本にも書いてあるようなことだったりして、正直なんでこんな本を今頃?と思ったのだけど、後半に入ると日本も含めて世界中のヒップホップについて、それぞれの国におけるシーンの流れをコンパクトながら丁寧に紹介しておりすごくためになる。アフリカとか、この本を片手にいろいろ掘りたいですな。
■そして日本語ラップシーンをしっかりフォローしているわりと数少ないプロパーな書き手の一人として、二木信さんの『しくじるなよ、ルーディ!』を紹介。この本の見どころとしてはやはり、かつてWebエレキング上で行われた環ロイとのやりとりでしょうか。
二木信評論集 ~しくじるなよルーディ~ (ele‐king books) 二木信 Pヴァイン 2013-01-18 by G-Tools |
■あとは、なんといっても日本語ラップについては金字塔感のある大著、都築響一さんの『ヒップホップの詩人たち』。ボリューム、人選、内容まで、ひとまず現時点での日本語ラップ本としては決定版と言っていいと思います。また、この本にも登場するB.I.G.ジョーの獄中体験を綴った『監獄ラッパー』にも合わせて矢野さんが紹介してくれました。
ヒップホップの詩人たち 都築 響一 新潮社 2013-01-31 by G-Tools |
監獄ラッパー B.I.G. JOE 獄中から作品を発表し続けた、日本人ラッパー6年間の記録 B.I.G. JOE リットーミュージック 2011-08-25 by G-Tools |
■で、ここで本日の議題のひとつと言うべき「リアリティ」の問題についての話題に。ラップの評価軸として「リアリティ」というのが問題になってくるわけですが、そのリアリティというのは実体験が伴わなくてはいけないのか。矢野さんは現在のラップ批評における実体験至上主義について、本来の専門である日本近代文学になぞらえて「”写生文”の時代で止まっている」と表現。
■後半は『街のものがたり』著者の巻紗葉さんとゲストの三田格さんに登壇いただき、『街のものがたり』についてお話を聞きました。「10年代以降の若手ラッパーを中心に」取り上げたとされる本書ですが、実は著者が2012年に良かったと思った人たちであり、自身が現場で遊んでいる時の実感を伝えたい、というのが根底にあったそうです。
■また三田さんはスチャダラパーを聞いた時に日本語の音楽表現がラップに移行しつつあるのかと思ったものの、その後いまひとつノレる相手が出てこなかったことをストレートに吐露。ヒップホップ自体に興味を持ったのはLL COOL Jの「I Need Love」だそうで。全体にヒップホップ観が独特すぎて面白かった。
■「ロックはアウトサイダーを志向するけどヒップホップはルールを守るのが好き」など、特に矢野さんから色々と興味深い視点が提示されて個人的には実に面白く過ごせた2時間半でありました。
街のものがたり―新世代ラッパーたちの証言―(ele‐king books) (ele-king books) 巻紗葉 Pヴァイン 2013-06-28 by G-Tools |
■次回は9/24(火)、『AMBIENT Definitive 1958-2013』を取り上げます。2009年〜2010年に刊行された『アンビエント・ミュージック』『裏アンビエント・ミュージック』を統合した決定版であり、さらに10年代におけるアンビエント観の大きな変化を捉えようとした野心的な一冊(と、解釈した)。詳細はまた追って告知しますのでお楽しみに!
アンビエント・ディフィニティヴ 1958-2013 (ele-king books) 三田 格 Pヴァイン 2013-07-26 by G-Tools |
投稿者 junne : 21:18 | コメント (0) | トラックバック
2013年09月02日
最近読んだ本から
■8月に読んだ本をざっとご紹介。
■湯浅学『音楽を迎えにゆく』
音楽を迎えにゆく 湯浅 学 河出書房新社 2012-02-17 by G-Tools |
『音楽が降りてくる』に続く、湯浅さんの批評集。もちろん面白いのだがやはり何と言っても最大の見どころは大瀧詠一の章だろう。湯浅さんのナイアガラ時代が書かれた貴重な文章。
■小田 雅久仁『本にだって雄と雌があります』
本にだって雄と雌があります 小田 雅久仁 新潮社 2012-10-22 by G-Tools |
Twitter文学賞国内部門グランプリ作品。本にも雄と雌があり、相性のよい2冊を並べておくと子供(「幻書」と呼ばれている)が産まれることがある、というそれ自体が極めてぶっ飛んだところから、さらに話はどんどん奇想天外に広がっていく。饒舌にギャグを繰り出してくる文体がちょっと森見登美彦を思わせますね。
■和田靜香『音楽に恋をして♪ 評伝・湯川れい子』
音楽に恋をして♪ 評伝・湯川れい子 和田靜香 朝日新聞出版 2012-12-20 by G-Tools |
女性音楽評論家の草分けである湯川れい子先生の評伝。むしろ音楽評論家になる前の話が面白かった。
■吉田 豪『サブカル・スーパースター鬱伝』
サブカル・スーパースター鬱伝 吉田 豪 徳間書店 2012-07-21 by G-Tools |
サブカルは40歳くらいで鬱に襲われることが多い、ということで40を目前に控えた筆者がその時期を乗り越えたサブカルの先輩たちに話を聞いてそれに備えるという主旨。それぞれがいろんなことを言ってるが、結局体力なようですね……。あと、最近は「サブカル実家帰り」がむしろ話題になっているというのが個人的にも実感を持って感じられた。
■ポール・ラファージ『失踪者たちの画家』
失踪者たちの画家 ポール・ラファージ 柴田 元幸 中央公論新社 2013-07-09 by G-Tools |
柴田元幸訳。疾走した人々の似顔絵を描くことに特殊な才能を発揮する主人公をめぐる奇譚。安直な喩えではありますが、カフカっぽいと言ってしまっていいのだろうか。舞台となるのがどことも知れない架空の都市で、どことなくヨーロッパというか東欧っぽい感じがするせいもあるのかも。
■高橋 源一郎『銀河鉄道の彼方に』
銀河鉄道の彼方に 高橋 源一郎 集英社 2013-06-05 by G-Tools |
『宮沢賢治グレーテスト・ヒッツ』がいまひとつだったのでどんなもんかなーと思ってたのですがこれはよかったと思う。
投稿者 junne : 14:23 | コメント (0) | トラックバック
2013年08月27日
8/15(Thu)「編集者にとって、本とは」@ジュンク堂書店池袋本店(短期集中連載#5)
■さて、先日までさんざん告知を繰り返していたイベントの本番でありました。ちょっと早めに行って9階のフェアを覗いてみる。一番でかい平台をフル活用してほんとにバラバラな本が並んでおりとても楽しい。つか積み方・並べ方にもあれこれ工夫があって感心した。さすがだなー。FBより写真拝借。
ぼくの選書コーナー。
■会場であるカフェのほうは設営中。
壁際にずらりと今回の選書が並ぶ。これまた壮観!
■で、トーク本番ですが、まずは自己紹介しつつ選書でNGだった本を紹介。ぼくは山ほど持って行ったうちの一部、90年代ユリイカ数冊を紹介しました。特にロック特集はいま見てもどこがロック特集やねんという感じの名前が並んでて面白い。この時にデレク・ベイリーとかレコメン系とかを知ったんだよ、たしか。
■今回のスピーカー3名は期せずして「自分で会社を立ち上げた編集者」「社員編集者」「フリー」という立場の違う顔ぶれになったのでその辺りで各々の視点での話という感じになるのかなと思ってたんだけど、意外とそういうわけでもなく。まあやってることは一緒だなと思う面のほうが多かったんじゃないかしら。つくづく思ったのはやはり編集者の仕事ってなかなか一般化できないなということ。内容によっても著者との関係によっても、何事もケースバイケースとしか言いようのないことが多すぎる。
■せっかくなので、持って行ったけど会場で紹介できなかった本もここで紹介しておきますかね。
おもにZine関係。現在ぼくがZineに興味をもつきっかけになったのは、野中モモさんがLilmagを開店した際のオープニングラインナップの数々。特に「Expansion of Life」「Kathy Zine」でした。パンクスピリットをこういう形で表現できるんだな、と。
遡れば90年代終わり頃にも一時ミニコミにはまった時期があり、その時はけっこう周りの個人サイト主(ブログ以前の話ですからね)が「紙版」としてミニコミを出すことがあって。その時に買った長谷川町蔵さんの「everything cool」(イヤーブック形式で1年分のサイト記事を一冊にまとめている)や山崎まどかさんの紙版「romantic au go go!」、野中モモさんの「bewitched」(これはサイト以前からミニコミとしても作っていた、というかむしろサイト自体がミニコミの「ウェブ版」っていう感じだったんでしょうね。「everything cool」もそれは同様か)など。
ミニコミが熱いという機運は世間的にもそこそこあったのか、『ミニコミ魂』なんて本も作られました(これまたモモさんも執筆に参加してますね)。
ミニコミ魂 (シリーズ・新道楽人生) 南陀楼 綾繁 串間 努 晶文社 1999-08-05 by G-Tools |
■それと、在庫切れにつき選書できなかった本の中からは『クラブミュージックの文化誌』を持って行きました。タイトル通り、いくつかのキーワードによってクラブカルチャーについてある程度網羅的に解説した本。いつかこれのパンク版みたいなものを作りたいものです。
クラブ・ミュージックの文化誌―ハウス誕生からレイヴ・カルチャーまで 野田 努 JICC出版局 1993-03 by G-Tools |
■ということでイベントは終わりましたが、「編集者が選ぶ本フェア」はまだまだ9月上旬まで続く予定。見応えのあるフェアなのでぜひ足をお運びください!
投稿者 junne : 21:18 | コメント (0) | トラックバック
2013年08月15日
短期集中連載「編集者が選ぶ本フェア」@ジュンク堂池袋本店 #4
■ということで本日はトークイベントです。せっかくだから選書に入れられなかった本のことも話せるといいなと思い、死ぬほど重い荷物を背負って出社しました。すでに疲れている……。選書NG本以外にも選んだ本の補足になる本などを持ってきていますが、なぜかミニコミの類が大量に。ついでに自分が作ったミニコミまで持ってきちゃいました。どこまで使うかわかんないけど。
ていうか経験上、こういうのは結局ほとんど使わない。Bollocks TVとかも持っていったけどかけなかった音源が山ほどあったりするしねえ。そのわりに肝心なのを忘れたり(苦笑)。ということで、今夜は池袋でお会いしましょう! まあ予約しなくても入れると思います。ぼくは早めに行って散財してるつもりだったのだけど、これ以上荷物増やしたくない気もしてきた……。
■引き続き選書NG本のご紹介。
『フランク・ザッパ自伝』
前回ご紹介した『ローリング・ストーン風雲録』なんかとも関連してくるんですが、60年代のカウンターカルチャーへの興味っていうのはなんだかんだで継続的にあるんです。MC5とか。で、ザッパの自伝を最初に読んだ時はたぶんぼくはザッパの音楽を聴く前だったんじゃないかな。名前は知ってたけど。たしか高橋源一郎の書評で興味を持ったのだと思う。
シモネタを含むおもしろエピソードと、歌詞検閲との戦いをはじめとしたシリアスな政治的姿勢が共存した、今思えばザッパの音楽そのものでもあるような本です。
フランク・ザッパ自伝 フランク・ザッパ ピ-ター・オチオグロッソ 茂木 健 河出書房新社 2004-02-07 by G-Tools |
湯浅学『人情山脈の逆襲』
湯浅学はすごい、というのは今さら言うまでもなく誰でも知っていることだが、すごく主観的かつ独断的なようで実はデータ的な知識もものすごく豊富に持っていて、しかも読ませる文体を持っているという、こんな人はやはりなかなかいないのです。これはたぶんぼくが初めて買った湯浅さんの単著(というかWikipediaによると最初の単著なのかしら。まあ単著自体そんなにたくさんあるわけではないが)。人物論集(ミュージシャンが多いがそればかりでもない)で、一個一個の文章はコンパクトだしそんなに厚い本でもないのだが、やはり読後感は濃厚の一言。とはいえこれも現在は入手困難だと思うので、まずは最近河出から続けて出た『音楽が降りてくる』『音楽を迎えにゆく』をどうぞ。
ラリイ・マキャフリイ『アヴァン・ポップ』
これはまあ卒論資料というかネタ本です(笑)。そもそもアヴァン・ポップという概念自体が当時は新鮮だったし、ロックや映画、アート、「スリップストリーム」と呼ばれる主流文学とジャンル小説の境界線などを一緒に扱う手法も当時は斬新で大いに影響されました。こういう仕事をしたいなあと思ったものです。
投稿者 junne : 14:30 | コメント (0) | トラックバック
2013年08月13日
短期集中連載「編集者が選ぶ本フェア」@ジュンク堂池袋本店 #3
■先週末、ついに「編集者が選ぶ本フェア」@ジュンク堂書店池袋本店、スタートいたしました!ぼくはまだ行けてないのですが、須川才蔵さんがTwitterで写真をあげてくださっていたのでご紹介。
ジュンク堂書店池袋店の「編集者が選ぶ本フェア・いま・何を読むべき時代にきているのか―」、デジカメ不調につき、企画の松岡さんに撮っていただいた写真がこちらです! pic.twitter.com/Cy8MWPGcur
— 須川才蔵 (@Niwanionegai) August 11, 2013
さらにこちら! ブレてるくらいガマンしろ! pic.twitter.com/8v0JH1ShEH
— 須川才蔵 (@Niwanionegai) August 11, 2013
■また、8/15のイベントについても、一時は「開催が危ぶまれ」ておりましたが、その後着実に予約もいただきまして無事決行されることになりました! まだまだ予約は受け付けておりますのでどしどしご来場ください。
「編集者が選ぶ本フェア・いま・何を読むべき時代にきているのか―」開催記念『編集者にとって、本とは』」
鈴木茂(アルテスパブリッシング・代表)/大久保潤(メディア総合研究所・編集)/門松宏明(commmons: scholaシリーズ・編集)
開催日時:2013年08月15日(木)19:30 ~
ジュンク堂書店池袋本店
TEL 03-5956-6111
東京都豊島区南池袋2-15-5
■さて、前回に引き続き「選べなかった本」のご紹介を。
Michael Azerrad『Our Band Could Be Your Life』
これは流通はしてるはずなのだけど、洋書はNGということで諦めたもの。
今回の選書にあたっては、単に「好きな本」を選んだというわけではなくて自分なりに幾つか基準を設けています。「これは俺が出したかったなー!」と思った本とか、過去に影響を受けた本とか。で、そんな基準のひとつが「自分の作った本と併せて読んでほしい本」。
これは簡単に言っちゃうとUSインディーズ史の本なんですが、ブラック・フラッグを皮切りにいくつかのバンドのバイオグラフィーを連ねていくことで、結果としてUSインディーズの変遷を辿ることができるという内容になっているという巧みな構成にも感心しました。これは是非、『アメリカン・ハードコア』と併せて読んでほしい一冊です。
Our Band Could Be Your Life Michael Azerrad Little, Brown and Company 2002-07-02 by G-Tools |
アメリカン・ハードコア (Garageland Jam Books)
ロバート ドレイパー『ローリング・ストーン風雲録』(早川書房)
先日急逝したミック・ファレンの『アナキストに煙草を』について、ぼくはちょくちょくイギリス版『ローリング・ストーン風雲録』みたいな読み方もできる、と言っています。アメリカのロック・ジャーナリズムを代表する「ローリング・ストーン」草創期の物語はやっぱり盛り上がるっていうもの。音楽雑誌からスタートして、ハンター・S・トンプソンをはじめとするニュージャーナリズムの書き手が集い、時代を作っていく。ミック・ファレンが在籍した「IT」や「NME」もまた独自のやり方でカウンターカルチャーを支えてきたわけですし。
著者は編集長ヤン・ウェンナーが同誌をぐっとビジネス寄り(要は広告重視)の方向に舵を切ったことに批判的で、まあ心情的にはぼくもそれはわかるんだけど、巻末の解説で渋谷陽一がそこを擁護しているあたりも興味深いところではあります。
ローリング・ストーン風雲録―アメリカ最高のロック・マガジンと若者文化の軌跡 ロバート ドレイパー Robert Draper 早川書房 1994-09 by G-Tools |
アナキストに煙草を (Garageland Jam Books)
投稿者 junne : 14:29 | コメント (0) | トラックバック
2013年08月08日
音楽書イベント始めます/Songs in The Bookshelf [本棚の音楽]#1「文化系のための“日本語”ラップ入門」
■ジュンク堂の松岡さんからもビジュアル主体のものよりテキスト主体の「批評」的な音楽書・カルチャー書が最近は売れているという話があったんですが(それが今回のフェアのきっかけになっている)、実はぼくもここのところ音楽書の新刊が熱いなという印象がありまして。ということで、勝手に音楽書を応援するイベントを始めようと思い至りました。
■で、思い立ったが吉日、新宿5丁目のビリビリ酒場さん(書評家の杉江松恋さんがすごく頻繁にイベントをやっています)にご相談して第一弾を8/19に開催するはこびとなりました!
Live Wire 13.8.19(月) Songs in The Bookshelf [本棚の音楽]#1「文化系のための“日本語”ラップ入門」
『街のものがたり ―新世代ラッパーたちの証言―』をめぐって
[出演] 巻紗葉、矢野利裕、三田格、大久保潤
[日時] 2013年8月19日(月) 開場・19:00 開始・19:30
[会場] Live Wire Biri-Biri酒場 新宿
[料金] 1500円 (当日券500円up)
※終演後に出演者を交えてのフリーフード&フリードリンクの懇親会を開催します。参加費は2800円です(当日参加は3000円)。懇親会参加者には、入場時にウェルカムの1ドリンクをプレゼント。参加希望の方はオプションの「懇親会」の項目を「参加する」に変更してお申し込みください。参加費も一緒にお支払いただきます。
※懇親会に参加されない方は、当日別途ドリンクチャージ1000円(2ドリンク)をお買い上げください。
※領収書をご希望の方は、オプションの「領収書」の項目を「発行する」に変更してお申し込みください。当日会場で発行いたします。
※ご注文者には整理番号をメールでご連絡します。
お申し込み時に住所をご記入いただきますが、チケットの送付はいたしません。
当日会場受付にて、名前、電話番号、整理番号をお伝えいただければ入場できます。
※満席の場合は、立ち見をお願いいたします。
※お支払い後のキャンセルは一切受け付けませんのでご注意ください。
※銀行振り込み決済の締め切りは8/17(金)午後3時、カード決済の締め切りは当日午前0時です。
■ご予約はこちらから!今回取り上げるのはエレキングブックスの『街のものがたり』。Simi Lab勢や田我流等々の10年代以降に注目を集めているラッパーたち+ライムスター勢に取材したものです。お店のほうの告知文にも書きましたが、日本語ラップってDQNでチェケラッチョなイメージが強く、なかなかいわゆる文化系の音楽ファンからすると聴く気にならないものなんじゃないかと思うんですよ。で、この本で取り上げられているのは「従来のシーンにとらわれない」一方で、たとえばmoe & ghostとかみたいな文系ラップとも違ってあくまでヒップホップらしさへのこだわりもある、という人たちだと思います。その辺はライムスター勢が混じってることからもわかるかな。
街のものがたり―新世代ラッパーたちの証言―(ele‐king books) (ele-king books) 巻紗葉 Pヴァイン 2013-06-28 by G-Tools |
■この本の著者は、この読み方すらよくわからない名前からもわかるように覆面ライターです。本業との兼ね合い的なことなんでしょうね。とはいえわざわざ一冊の本をこうして作ったわけですから、こうしたラッパーたちの言葉を通じて著者自身も伝えたいことがあると思うわけですよ。なぜこの人たちを取り上げたのか、そして並べ方にもたぶん意図はあるでしょう。せっかくだからオススメの曲なんかも聞きながらやりたいところです。ぼくもそんなに今の日本語ラップに詳しいわけでもないですから、この本をきっかけに良い感じで入門できればと思っています。
■で、最近出たヒップホップ関係の本としてはこの辺の本も取り上げると思います。このあたりはゲストにヒップホップに造形の深い矢野利裕さん(大谷能生さん速水健朗さんとの共著『ジャニ研!』でおなじみ)をお呼びしているのでしっかり紹介できるかと。
ヒップホップの詩人たち
二木信評論集 ~しくじるなよルーディ~ (ele‐king books)
ヒップホップ!: 黒い断層と21世紀
■ゲストとしてはもうお一方、三田格さんをお招きしています。三田さんというとまあテクノとかの印象ですよね。クラブミュージックと一口に言ってもヒップホップとテクノってかなりシーンもノリも違うということもあり、三田さんからはまた違った視点からのコメントが得られるのではないかと思っています。
■あと、クレジットはしてませんが本書の編集をしたエレキングの橋元遊歩さんにもご来場いただきます。たぶんなんかのタイミングで壇上に引っ張りあげると思いますので(笑)橋元ファンのチルウェイヴァーなみなさんもお見逃しなく! お店の料理も美味しいのでよかったら打ち上げも込みで予約してくるといいと思います! 新宿5丁目で乾杯だ!(全部の告知が最後は飲み会のお誘いになってますが……)
投稿者 junne : 19:12 | コメント (0) | トラックバック
短期集中連載「編集者が選ぶ本フェア」@ジュンク堂池袋本店 #2
■昨日とりあえずおしらせ第一弾をブログに載せた直後に池袋に行ってトークの打ち合わせをして参りました。お盆まっただ中に、基本的には無名の編集者3名が集まってトークをしますという挑戦的な企画であるということもありまして、実は予約がいまひとつ伸びてないとのこと(苦笑)。中止の可能性も示唆されたので、とりあえずご予定いただいてる方は予約してもらえると嬉しいです!
「編集者が選ぶ本フェア・いま・何を読むべき時代にきているのか―」開催記念『編集者にとって、本とは』」
鈴木茂(アルテスパブリッシング・代表)/大久保潤(メディア総合研究所・編集)/門松宏明(commmons: scholaシリーズ・編集)
開催日時:2013年08月15日(木)19:30 ~
ジュンク堂書店池袋本店
TEL 03-5956-6111
東京都豊島区南池袋2-15-5
■で、「本を読んだから編集者になるのだ」とかぶちあげましたが、昨日の打ち合わせでは最近いかに本が読めないかという話で盛り上がった体たらくであります。色んな意味で開催が危ぶまれています。とはいえ選書の全貌を見せていただいたんですが本当に被りが一冊もないの(ぼくが選びかけてやめたやつを他の方が選んでる、というのはありましたが)。このリストをネタに話すだけでも面白いものになるんじゃないかという気がしてきました。
■あと、おそらく「選びたかったけど流通その他の理由で選べなかったもの」についてもお話するかと思います。ということでぼくが今回選べなかった本をとりあえず2点ほどご紹介。
『ユリイカ1997年1月号 特集=ジョン・ゾーン』
90年代のユリイカの、特に音楽関係の特集には本当に影響を受けました。本当は93年4月号のロック特集でまずガツンと来たんですけどそこまで古いと青土社のサイトのバックナンバーリストにも記載がなく。これはギリギリ載ってたので在庫があるのかなと思ってリストに入れてみたのだけど、よく見たらこれも品切れだったのでした。まあそりゃそうだよな。
あくまで当時のぼくのリサーチ力の問題なのだけど、この時期まで読書好きの自分とロック好きの自分にはちょっとした溝があったのね。本好きの自分から見て面白いと思える音楽雑誌というのがない、読み応えのある音楽書がない。音楽雑誌といえばインタビュー記事にディスクレビュー。音楽書といえばミュージシャンの伝記かディスクガイドとかヒストリー本。そんな中でこの時期の「ユリイカ」には音楽についての文章が持つ可能性というものについて蒙を啓いてもらったと思います。
実はこの頃の「ユリイカ」編集長は今回の選書フェアにも参加してる方なのですが、そのあたりはフェア会場で確認を!
ところで次号の「ユリイカ」は「クマ」特集ですよ。それはそれで「予想の斜め上」というのはこういうのを言うのかと驚愕しました。サメ特集だったらまだ色々書き手は思い当たるんだけど。
「EL ZINE vol.13」(十三舎)
「Bollocks」というパンク雑誌の版元としていくつか意識している雑誌はあるのですが、特にこの「EL ZINE」はおそらく現在日本でもっとも濃いパンク雑誌だと思います(「Bollocks」はあくまでパンクの王道を行くことを志しているので競合はしてないですが)。作っているのは「DOLL」の編集をやっていた方で、最後のころの「DOLL」の一番渋い部分を継承してるというとわかる人にはわかるんじゃないかと。
vol.13が目下の最新号で、巻頭にスウェーデンはUmeoシーンの大特集。ほかにギリシャのパンクシーンレポートなど大充実。これはたぶんまだ在庫はあるんですが、通常の書店流通に乗っていないものなのであえなくNGとなった次第です。
■ということでまた長々と書き連ねて参りましたがNG本紹介はまだまだ続きます。今日の更新で言いたかったことは「8/15のトークイベントの予約をしてください!」に尽きます。行けたら行きますっていう人が多いそうですが(まあ容易に想像はできますよね)、そう思ったらとりあえず予約! 電話が大嫌いというぼくみたいな人は、とりあえずぼくに連絡くれればお店のほうに伝えておくこともたぶんできます。お盆まっただ中に池袋で乾杯!
投稿者 junne : 17:10 | コメント (0) | トラックバック
2013年08月07日
「編集者が選ぶ本フェア・いま・何を読むべき時代にきているのか―」&開催記念イベント『編集者にとって、本とは』」
■ジュンク堂書店池袋店芸術書担当の松岡さんといえばかつて新宿店在籍時代に弊社刊『小説家の饒舌』あとがきにて「天使」と呼ばれたことでもおなじみですが、そんな松岡さんからお誘いいただいてフェアに参加することになりました! ていうかジュンク堂新宿店のことを思い出すたびにビックロへの憤りが再燃しますよね。あとビックロに行くたびに「ああ、ここにはもうジュンク堂はないんだなあと悲しくなって何も買わずに通過したりしますよね。個人的にはビックロは新宿三丁目駅からディスクユニオンに行く際のショートカットとしてのみ利用しています。
■そんな後ろ向きな話はさておきまして、フェアですよ。批評色の強い音楽雑誌が最近元気なので、そういった仕事をしている編集者の選んだ本を集めてフェアをやろう、というもの。池袋店9階の一番でかい平台を使って大々的に開催されます。なんと総勢13名の編集者が選書に参加。以下、松岡さんからいただいた企画概要。
写真が多めの音楽雑誌や美術画集を買う層が高齢化し、若い人が本を買わなくなって久しいと言われますが、そんな現在、批評が多めの音楽や写真、カルチャー雑誌、もしくは書籍がここ数年力をつけているように見受けられます。そのような雑誌、書籍を購入しているのはどのような層がどのような目的で?また、雑誌や書籍を編集している方々は近年、どのような本に魅かれ、それをもとに雑誌や書籍をつくられているのか?複数の編集者に魅力的な書籍についてたずねる事は、雑誌と書籍をつなぐ試みでもあり、また、読者と作り手をつなぐ試みともなります。
■具体的には影響を受けた本や編集の参考にした本、今作ってるものに必要になってる本などを3〜10冊ほど挙げてくださいとのこと。色々考えてたところ、同じくこのフェアに参加しているscholaの門松さんが先行してリストを早々に提出したというのをFacebookで発見。現在流通しているかどうか微妙な本と、確実に流通しているであろう本を各10冊選んで送ったら案の定というか「微妙な本」は全滅、流通している本10冊が採用となったと。
■なるほどなーと思ってぼくも真似して「流通してそうな本」と「微妙そうな本」をピックアップしてみました。絶版以外にZineや洋書も不可ということもあって結局9冊が採用。このへんの流れ、南人かのフェア参加者とFBで進捗情報交換みたいなことになってて妙に楽しかったです(笑)。
■最終的に選んだものは8月10日くらいから始まるフェアで確認していただくとして(リストに入れてたけどNGだったものもポップに書いてくれるそうです)、このフェアに絡んでトークイベントが開催されることになったのでそちらもご案内しておきますね。
「編集者が選ぶ本フェア・いま・何を読むべき時代にきているのか―」開催記念『編集者にとって、本とは』」
ジュンク堂書店 池袋本店
開催日時:2013年08月15日(木)19:30 ~
鈴木茂(アルテスパブリッシング・代表)
大久保潤(メディア総合研究所・編集)
門松宏明(commmons: scholaシリーズ・編集)
★入場料はドリンク付きで1000円です。当日、会場の4F喫茶受付でお支払いくださいませ。
※トークは特には整理券、ご予約のお控え等をお渡ししておりません。
※ご予約をキャンセルされる場合、ご連絡をお願い致します。(電話:03-5956-6111)
※イベントに関するお問い合わせ、ご予約は下記へお願いいたします。
ジュンク堂書店池袋本店
TEL 03-5956-6111
東京都豊島区南池袋2-15-5
詳細はイベント紹介ページを御覧ください。紹介文もちょっとすごいので必見だ!
■「編集者にとって、本とは」というすごいテーマをいただいております。かつて後藤明生は人はなぜ小説を書くのか、それは小説を読んだからだと喝破したわけですが、その伝でいうならば人が編集者になるのは本を読んだからでしょう(実は意外とそうでもないこともある、というのは知ってて言ってますからね)。それぞれが選んだ本をネタに、読んだ本がどのように新たな本を生むのかみたいな話になるんじゃないでしょうか。
■会場にはこの3名以外にも選書に加わった編集者が来場する(といいなー)と思います。終了後はささやかな打ち上げ兼交流会みたいなものもやりたいと思っているので、その筋の人は名刺を持って池袋に集合!
■なお、短期集中連載として、リストには入れたけどフェアには採用されなかった本をこのブログで紹介していこうと思います(これも
小説家の饒舌 佐々木 敦 メディア総合研究所 2011-07-23 by G-Tools |
投稿者 junne : 17:42 | コメント (0) | トラックバック
2013年06月24日
6/21(Fri) ガイブン酒場
■新宿のちょっとわかりにくいお店で行われている「Live Wire」というトークイベントスペースにて、書評家の杉江松恋さんが定期的にイベントを行なっている。だいたい毎週金曜は杉江さんが何かをやってるような状況で、辻真先連続インタビューなどいくつかのシリーズとして展開されている感じ。で、そのひとつとしてガイブンの新刊を紹介するというものがある。もともとミステリを専門としてこれまで活動してきた杉江さんがいわゆるガイブン、まあ海外の主流/純文学を紹介するというもので、自身のトレーニングも兼ねているということだ。
■前回はリチャード・パワーズの特集だったみたいですごく聞きたかったんだけど、ともあれ今回はドン・デリーロ特集とのこと。デリーロは何冊かは読んでるけどあまり強い印象がない、という作家なので逆に話を聞きたくなったため、会場に足を運んでみた次第。
■今回取り上げるのはデリーロ以外に新刊3点で、編集者とかを舞台に上げて話を聞いていくというスタイルの模様。ちなみにデリーロ前作品を含め、取り上げる本すべての紹介文が書かれたレジュメが配られた。これだけでもけっこう価値がある気がする。
■一冊目はハリー・マシューズ『シガレット』(白水社)。ウリポ唯一のアメリカ人(だったのだが、最近は「唯一」ではなくなったとのこと)という売り文句で、ちょっとまえに佐々木敦さんがツイートしてた作家だとわかる。
ウリポ唯一?のアメリカ人作家ハリーマシューズの『シガレット』読み始めから猛烈オモシロい!
— 佐々木敦 (@sasakiatsushi) June 13, 2013
基本的にはこれまでずっと翻訳不能・ていうか英語でも読めませんみたいな作品ばかり書いてきた作家だが、『シガレット』はその中ではもっとも読みやすい部類だとのこと。時間軸や人間関係が複雑に織りなされ、ミステリのような読後感があって、鮎川哲也『黒いトランク』を思わせるとか。また、今作は数学のアルゴリズムに則って書かれたということなんだけど、円城さんみたいな感じなのかしら。
シガレット (エクス・リブリス) ハリー マシューズ 木原 善彦 白水社 2013-06-13 by G-Tools |
■続いてはフランスの新人作家によるデビュー作、ローラン・ビネ『HHhH』(東京創元社)。翻訳者の高橋啓さんが登壇。まずはタイトルの読み方についての話に(笑)。英語なら「エイチエイチエイチエイチ」だがフランス語なら「アッシュアッシュアッシュアッシュ」、ナチ関連本ということでドイツ語で読むなら「ハーハーハーハー」となる。なんと読んでもいいけど書店で注文の際には「エイチエイチエイチエイチ」で、とのことでした。ナチの高官でヒムラーの懐刀と言われたラインハルト・フリードリヒの暗殺事件を描く、という内容。なのだが歴史小説を書くにあたって事実を追求するあまりにしまいには作者自身が出てきたりする。これって鴎外の『渋江抽斎』みたいなことなのかしら。また、主人公がチェコの総督代理だということもあってかクンデラの引用があったりして、著者自身チェコ文学にかなり傾倒している模様。訳者氏いわく、著者のテンションにつきあうのが大変だったとのこと。十数ページにわたって改行なしに続くド迫力の箇所があったりするんだそうで。なぜかフランス本国よりもイギリスなど外国での評価が高いとか。
HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション) ローラン・ビネ 高橋 啓 東京創元社 2013-06-28 by G-Tools |
■3冊目はコラム・マッキャン『世界を回せ』(河出書房新社)という大著。かつて世界貿易センタービルのツインタワーにワイヤーを張ってそこを渡った芸人というのがいたそうなのだけど(『Man on Wire』というドキュメンタリーがあるそうだ)、その時に周辺で起こっていた様々なことを描く群像劇。小さなストーリーがたくさんあって、それが後半でガチっと組み合わさる瞬間があるということなので、アルトマンみたいな感じなんでしょうかね。
世界を回せ 上 コラム・マッキャン 小山 太一 河出書房新社 2013-06-11 by G-Tools |
世界を回せ 下 コラム・マッキャン 小山 太一 河出書房新社 2013-06-11 by G-Tools |
■といったあたりで一度休憩をはさみ、後半はデリーロ特集。対談相手として登壇のライター矢野利裕さん(『世界を回せ』でも、編集者が来てなかったので聞き手を務めていた)も新刊含めて何冊か事前に読んできたという。新刊の短篇集『天使エスメラルダ 9つの物語』の紹介が中心だが、併せてこれを期に過去の作品で邦訳が出ているものをすべて読んだという。その際、『マオⅡ』がどうしても入手できず(図書館にもなかったそうで)、なんとか貸してくれる人を見つけたのだそうだ。デリーロについては各作品の紹介文以外に年表も配布された。長編の発表年、『天使エスメラルダ』収録短編の発表年、および戦後アメリカ史の重大事件が書き込まれたもの。85年の『ホワイト・ノイズ』に出てくる空気中の有害物質というのが79年のスリーマイルの記憶を反映しているのではないかとの指摘(これ、311以後の日本人が読んでもなかなか興味深いものがある)。
88年の『リブラ 時の秤』はオズワルドとJFK暗殺にまつわる虚実混ざった「藪の中」的小説で、デリーロの「現実観」がよく出ているという。具体的に言うと「情報化」についてポストモダンになりきっておらず、情報化が進むほどに肉体性が顔を出す、みたいな。それは『コズモポリス』も同様でしょうね。ずっとリムジンで相場取引をしながら移動中に毎日健康診断を受けているという。ちなみに社内で前立腺の検査を受けながら大マジメに思弁的な経済哲学論議みたいなのをしてるという、真顔で冗談を言うようなバカバカしさもデリーロの魅力のひとつなんだけどその辺りはあまり触れられる機会がないようで。
で、新刊『天使エスメラルダ』はそういった変なユーモアも含めてデリーロの様々な魅力が一冊で味わえるお得な一冊で、入門編としても最適なのではないか、ということでした(ぼくも読んだけど確かに面白かったですよ)
天使エスメラルダ: 9つの物語 ドン デリーロ Don DeLillo 新潮社 2013-05-31 by G-Tools |
■ちなみに次回はコーマック・マッカーシーだそうです!あと、この会場はぼくは2回めなのだけど、ガラッと模様替えしてイベントスペースとしての体裁がかなり整ってきた感じ。ぼくもなんかここでやりたいなと思うので何か考えますよ。
投稿者 junne : 19:31 | コメント (0) | トラックバック
2013年04月16日
最近の気になる新刊
■メモ代わりに。
■「現代作家ガイド」のオースター増補改訂版。オースターってものすごく面白い!というところまではいかないんだけどなんとなく読んじゃう作家、という感じです。個人的には。
ポール・オースター (現代作家ガイド) | ||||
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■これもまた増補改訂版として「オバマ以降のリンカーン像」を追記したリンカーン研究。リンカーン映画が続いたけどちょっとタイミング遅れたかも。
リンカーンの世紀 アメリカ大統領たちの文学思想史 増補新版 | ||||
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■『今日、恋を始めます』『making of LOVE』の古澤健監督が寄稿!
辞書、のような物語。 | ||||
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■「機械しか愛せない」男が主人公の「ギークサスペンス」だとか。アーレン・ダルノフスキーが映画化ってことで、そっちも面白そうだな。
機械男 | ||||
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■カープ本ブームが続いている。
エースの覚悟 (光文社新書) | ||||
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■山田宏一+和田誠ならそりゃ面白いですよね。
映画 果てしなきベストテン | ||||
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■「1878年~1899年にパリで刊行された冊子『今日の人々』に登場した全469名の戯画に、明解な人物紹介を付した貴重な資料」とのこと。「山藤章二のブラックアングル」みたいなものかしら。
カリカチュアでよむ19世紀末フランス人物事典 | ||||
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■チェホフの妻の姪、とのことだけどチェホフの奥さんっていうのも女優なんですね。
ヒトラーが寵愛した銀幕の女王: 寒い国から来た女優オリガ・チェーホワ | ||||
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■「オセアニア、東南アジア、シベリア、エスキモー、北中南米、アフリカの諸民族が口承で伝える生きた神話の構造」とのこと。特にアフリカに興味がある。
無文字民族の神話 | ||||
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■『赤の他人の瓜二つ』が大傑作だったので楽しみ。
往古来今 | ||||
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投稿者 junne : 12:07 | コメント (0) | トラックバック
2013年04月12日
カープ本ブーム?
■球春到来ということもあってかここ最近は野球関係の新刊が多いのだけど、なかでもカープ関係の本が多いのはたぶん気のせいではないと思う。まあ「アメトーク」のカープ芸人効果なんでしょうかね。
■この「カープルール」はなんとなくちょっと前(といってももう去年か! 時の経つのが早すぎる)に出た「カープあるある」と被りそうな気もするけどどうなんだろう。
カープルール 鯉党制作委員会 中経出版 2013-04-10 by G-Tools |
カープあるある | |
クリエイティブ研究所 アスペクト 2012-10-23 売り上げランキング : 56545 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■なかでも珍書のたぐいだなと思うのはカープグッズだけを集めたこの本。カープ球団はここ数年グッズで儲けるということに味をしめている感があって、サヨナラとかあると即座にTシャツが作られたりするわけです。最近は堂林グッズが熱いみたいね。
鯉MONO語り カープグッズ研究会 竹書房 2013-03-08 by G-Tools |
■開幕に向けて発売されたムック3点。まあガイドブック的なもんですかね。
WE LOVE CARP (ぴあMOOK) ぴあ 2013-04-01 by G-Tools |
別冊カドカワ 総力特集 広島東洋カープ 62484-86 (カドカワムック 482) 角川マガジンズ(角川グループパブリッシング) 2013-03-25 by G-Tools |
るるぶ広島カープ (JTBのムック) ジェイティビィパブリッシング 2013-03-28 by G-Tools |
■石井琢朗引退記念出版。
心の伸びしろ | |
石井 琢朗 ベストセラーズ 2013-03-26 売り上げランキング : 6513 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■そんななかでも結構ちゃんと読みたいなと思うのが北別府のこれ。
CARPはなぜCSに出られないのか・・・ 手を伸ばせば、すぐそこに・・・ 北別府学 ザメディアジョン 2013-04-12 by G-Tools |
■肝心のカープのほうですが、当初は全然勝てなくてどうなることかと思ったけど巻き返して3連勝して最下位脱出と思ったところでまた負けて最下位に。横浜は雰囲気がいいしなんといっても今年の打線は恐ろしいから油断はできないが、中日が思いのほかヤバそうだしまだまだこれからCS狙える気がするよ(毎年この時期はそんな気がしている)
投稿者 junne : 13:16 | コメント (0) | トラックバック
2013年04月02日
週報 2/25-3/3
2/25(Mon)
休み。
鍋横のカレー居酒屋「やるき」へ。タモリ倶楽部で大々的に紹介されて一気に有名になった店である。実際、月曜の夕方5時に行ったのだが6時までにはそこそこの入りになってるくらい。金曜の夜なんか相当混むだろうね。
店主はやるき茶屋の厨房で働いていたインド人。基本的にすべていわゆる居酒屋メニューにスパイスを加えたものばかりなのだけど、品ごとにスパイスやハーブの組み合わせを工夫してる感じなので「全部カレーじゃん!」てことにはならない(いや、全部カレーではあるんだが)。タンドリーチキンが串に刺して出てきたりね。
DVDで『ぼくのエリ 200歳の少女』を観る。面白かったのだけど、あとでここ(ネタバレだけど)を読んで驚愕。全然ダメじゃんそれ!
ぼくのエリ 200歳の少女 [DVD] アミューズソフトエンタテインメント 2011-02-04 by G-Tools |
2/27(Wed)
坐・高円寺で映画「ひなげし」の上映会&ライブ。予告編だけ見てもすでに「頭痛え」って感じだったのだが、実際に見ると相当頭の痛い映画でした。
2/28(Thu)
仕事をしつつDOMMUNEの間章特番を観る。貴重な映像がたくさんかかったのだが、間章って写真も見たことなかったので、イメージと全然違うので驚いた。たぶん阿部薫とイメージがごっちゃになってたのだと思う。
3/1(Fri)
藤田 直哉『虚構内存在』を読む。力の入った筒井康隆論。筒井の「超虚構」理論および「感情移入」の理論を丁寧に作品および発言から紐解いていく力作。第三部(最終節)で、「超虚構」と「感情移入」によって現在何ができるのか、という話になっていくのだけど、やっぱりそこでそういう話(具体的にはネットの話)になっちゃうのかーっていう気にはなったけど、まあ『朝のガスパール』の先を考えようと思ったら仕方ないわな。
虚構内存在――筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉 藤田 直哉 作品社 2013-01-31 by G-Tools |
3/2(Sat)
新宿ハッティでランチ。量的なコストパフォーマンスはけっこうなものだと思うけど(ナン・ライス・カレーともにお代わり自由!)、カレー自体はまあまあかなって感じ。とはいえ、冬季限定で夜はカレー鍋のコースがあり、それが旨いということなので、またそういう時に来たいと思った。
下北沢Shelterでイライザ・ロイヤル&ザ総括リンチとTexaco Leathermanのスプリットレコ発。全バンド最高! とりあえず写真だけ貼っときます。
プンクボイシネ
なんと4月でプンクボイシネとしての活動は終了だという。ええー、残念すぎ!という感じですが、今回もトクさんはほとんどステージにおらず縦横無尽にフロアを(ドリンクカウンターのほうまで)駆け巡り、しょっちゅうマイクを落としてながらの熱演。
イライザ・ロイヤル&ザ総括リンチ
姐さんだいぶ気合入ってた感じ!MCがかなり感動を呼んでたよ。
ギターウルフ
ものすごく久々に観たら知らない曲ばっかになっててびっくりした(たぶん青森ロックフェスの1回目以来)しかしやはりかっこいいなー。
Texaco Leatherman
テキサコについてはビックEこと江川さんとの共演シーンでお送りしました。ちなみに江川さんは総括リンチの曲の中で「好きよシンジ~」って歌ってもらってものすごくニヤけていたということもご報告しておきます。
打ち上げではロックの神様と女王様に囲まれての記念写真を撮らせていただいた。うれしすぎる。
3/3(Sun)
シェイクスピア『じゃじゃ馬ならし』を読む。これはけっこう普通に失敗作なのでは……。最初に出てきたちょっとトリッキーな設定が全然生きてない。
じゃじゃ馬ならし シェイクスピア全集 〔7〕 白水Uブックス ウィリアム・シェイクスピア 小田島 雄志 白水社 1983-01 by G-Tools |
投稿者 junne : 18:24 | コメント (0) | トラックバック
2013年03月26日
いただきもの:『無縁のメディア』『スーパーゴッズ』
■面白そうな本を続けていただいたので、まだ読んでないけどとりあえず紹介だけ。
■粉川哲夫・三田格『無縁のメディア ― 映画も政治も風俗も (ele-king books)』(Pヴァイン)
両氏の対談本で、まあすごく大雑把に言っちゃうと311以降のメディア論みたいなものだと思うのだが、メディアといえばSNS全盛・つながり重視の現在にあって「無縁」というキーワードを打ち出してきた、ということですね(まだ読んでないのでわかんないけど)。
とりあえずいただいてパッと開いてみたところ、いきなり見返しもトビラもなく本文が始まるのでビックリした。
実際は本文というか前書き的なもので、そのあとにトビラや目次があるんだけど、一瞬驚くよね(ネタバレだったかしら……)。
昨年からPヴァインのele-king booksはすごいペースでのリリースが続いており、ちょっと複雑な気分にはなる。
■グラント・モリソン著・中沢 俊介訳『スーパーゴッズ アメリカン・コミックスの超神たち』(小学館集英社プロダクション)。
分厚い!
「小プロ」といえばいまや怒涛の勢いでアメコミの翻訳を刊行している出版社だが、これはバットマンものなんかをよく手がけているグラント・モリソンによるアメコミ史。600ページを超える大著である。実は訳者の中沢君は大学の同級生で、初めてメルト・バナナとか想い出波止場とかの出るようなライブに連れてってくれた恩人(?)である。近年はアメコミおよびBDの翻訳なんかで活躍中。
訳者いわく「アメリカのサブカルチャー史としても面白いと思う」とのことなので、文化史好きとしては楽しみに読ませていただこうと思います。
無縁のメディア ― 映画も政治も風俗も (ele-king books) 粉川 哲夫 三田 格 水越 真紀 Pヴァイン 2013-03-08 by G-Tools |
スーパーゴッズ アメリカン・コミックスの超神たち (ShoPro Books) グラント・モリソン 中沢 俊介 小学館集英社プロダクション 2013-03-23 by G-Tools |
投稿者 junne : 18:56 | コメント (0) | トラックバック
2013年03月08日
3月の新刊「Bollocks 007」「Bollocks Works 2012」
■ここ3日間毎日入稿だったのだけど、なんとかすべて終えました。まあぼくは基本的に待ってるだけだったんだけど。ということで今月末は「Bollocks」のNo.7と、菊池茂夫さんの写真集「Bollocks Works 2012」が出ますよ。
■まずBollocks 007。表紙がガツンとかっこいい! 今回は表紙のお二人の対談も収録しています。これがまた面白いんだ。もちろん個別のインタビューも載ってます。過去と比べるとインタヴューの本数は減ってるんだけど、そのかわり長い記事が増えてるので読み応えは増してると思う。今回から始まったパンク列伝的な新連載にはアナーキーの茂さんが登場。これがまた滅茶苦茶面白いので必読ですよ。あとジョン・ライドンのインタヴューも載ってますがこれまたさすがに重みがあります。
■そしてBollocksの編集スタッフでもあり毎号たくさんの写真を撮っている写真家の菊池茂夫さんの写真集も発売します。「Bollocks Works 2012」と題して、Bollocksのために撮った膨大な写真からセレクトした一冊。既発表の写真もサイズが大きくなって(B5→A4)迫力が増してるし、未発表の写真も山ほど載っています。東北ライヴハウス大作戦の貴重な記録にもなってるし、COBRAとかSTAR CLUBのメモリアルな写真も掲載。あとSLANGがたくさん載ってるんだけど、これがまた菊池さんらしいなと思います。
□Bollocks 007
■表紙:SEIJI(ギターウルフ) × YOSHIYA(RADIOTS)
■SEIJI(ギターウルフ) × YOSHIYA(RADIOTS) 対談
ギターウルフ
RADIOTS
PiL ~John Lydon~
THE STORY OF LEGENDS ~仲野茂列伝~
BRAHMAN
LAUGHIN' NOSE
THE STREET BEATS
WAR PAINTED CITY INDIAN
ROCKET FROM THE CRYPT
BALZAC
COUNTRY YARD
T.C.L
DAD MOM GOD
横道坊主
16TONS
the WILD ROVER 2013
The 5678's
MADE IN STREET ~LessThan TV~
勝手に観やがれ ~MR.PAN(THE NEATBEATS)~
Fxxkin' Culture 短パン特集 ~80's US HARDCORE, THRASH METAL編~
The Arms of PLAYERS ~クハラカズユキ(The Birthday)~
北海道PUNKシーン特集
怒髪天 "ロックバンド・ア・ゴーゴー" ~武道館への道 <壱>~
詩人三代目魚武濱田成夫詩連載
PRAY FOR JAPAN ~東北ライブハウス大作戦~
NBC作戦本舗 他
■P128 ¥890+税
■3月27日発売
■ISBN 978-4-944124-63-3
□「Bollocks Works 2012」
■撮影―菊池茂夫
■発売日―3月30日
■定価―3,300円(税抜き)
■ISBN 978-4-944124-64-0
■A4判 224ページ(うちカラー64ページ)
■発行所―株式会社メディア総合研究所
■収録アーティスト
ASPARAGUS, BALZAC, BEYONDS, the band apart, BAND俺屋, bloodthirsty
butchers, BRAHMAN, BULL THE BAFFALOS, COBRA, COCKNEY COCKS, COMEBACK
MY DAUGHTERS, CRACKS, CRYPT CITY, 怒髪天, eastern youth, EXTINCT
GOVERNMENT, THE FOOLS, FORWARD, 撃鉄, the 原爆オナニーズ, GMF, HARDCORE
FANCLUB, Hawaiian6, HELLBENT, ヒダカトオル, 磯部正文(HUSKING BEE), THE JET BOYS,
JOE ALCOHOL & THE WONDERFUL WORLD, KEMURI, KEN YOKOYAMA, 奇形児, LAUGHIN’
NOSE, 雷矢, LINK 13, locofrank, LOSTAGE, MEANING, マリア観音, THE MODS,
NICOTINE, Pay money To my Pain, POTSHOT, THE PRISONER, RADIOTS, RAZORS
EDGE, RIZE, THE RYDERS, SA, THE SECT, SLANG, SION, SMASH YOUR FACE,
SPEEDER-X, SPIKE, THE STAR CLUB, THE STREET BEATS, T.C.L, 鐵槌, THINK
AGAIN, 内郷げんこつ会, WRENCH, 柳屋睦&THE RATBONES, ZAZEN BOYS, (A TO Z) and
more.
投稿者 junne : 21:19 | コメント (0) | トラックバック
2013年03月01日
週報 2/11-17
2/11(Mon)
中野のDeep Jotyでランチ。入り口付近に立てられた色褪せたメニュー看板とは裏腹に地下に潜る階段を降りて扉を開けるとなかなか小奇麗でオシャレな店なのであった。1000円でカレーが二種類つくセットを注文、マトンカレーとマッシュルームほうれん草カレーを両方辛口で。どちらも割と旨かった。
中野のスタジオで、とある即興演奏プロジェクトのリハに参加。ルールつきの即興みたいなものだと思うのだがまだルールが確立されておらず、まずはルールを固めるところから作っていく段階という感じなのだけど、プロジェクトの発起人自身が何らかの確信を持って進めてるという感じでもないのでなかなか定まらずにいる。とはいえちょっと面白くなる感じはあったので継続して参加できるといいな。
2/12(Tue)
二日続けてスタジオなんて久々だが、昨日に続いて今度は昨年からやっている新バンドのリハである。前回は急遽病欠したメンバーがいたので全員揃うのは3回目で今年に入ってからは初めてだ。前回やったときにもいい感じになりつつあるなと思ったんだけど、いよいよ形になってきた感触。そろそろライブも入れていこうと思うのでご期待ください。
で、二日続けて同じ楽器とエフェクター構成でスタジオに入ってみて思ったのだが、ぼくのギターは大変に音がよい。大甲子園をはじめ、普段はマーシャルを使うことが多いのだけど、なぜかこの二日間はそうではなくて、昨日はフェンダーで今日はJCを使ってみたところ、なんかいつもよりいい音の気がしてきた。実はマーシャルとの相性のよくないギターだったのだろうか。それともマーシャルを使いこなせてないだけで、マーシャルでももっといい音で鳴らせるのだろうか。もう10年近く弾いてるギターなのにいまさら何を言ってるのかって話ではありますが。
写真はメンバーのろーこさんのインスタグラムより無断拝借。なお、バンド名が「Galaxy Express 666」に仮決定いたしました。
そして例によってスタジオの後はサイゼリアで2時間半ほど。ノルウェーのマズい菓子の話から始まりなぜか職場の話に。
2/13(Wed)
雪の予報だったのだがまたしてもはずれたようだ。ちょこっと積もってるところがあったから夜のうちにちょっとは降ったのかね。
印刷所が来て打ち合わせ。けっこう丁寧に準備した上で進める感じになりそうで安心感がある。こういうのあんまやったことないのが我ながらいかがなものかとは思いますが。
シェイクスピア『タイタス・アンドロニカス』を読む。実は今年は週に1冊シェイクスピアを(白水社μブックスの小田島訳全集版で)の読むというのを自分に課しているのである。先週読めなかったので今週あたりは2冊読まなきゃなのだが、とりあえずそのペースで行くと9月くらいに全部読める計算である。
『タイタス・アンドロニカス』はタイトルのかっこよさでは『テンペスト』と双璧なんじゃないか(これをバンド名にしてる人たちもいるよね、たしか)。どんな話かは全然知らなかったのだけど、人名なんですね。ローマを舞台にした復讐劇で、ちょっと驚くくらい血腥い話。これ、舞台でリアルにやったらちょっとしたグラン・ギニョールじゃないの。
解説によるとそのえげつなさのせいか、本当にシェイクスピアの著なのかが長年疑われてきたそうである(そもそも原テクストがずっと行方不明で、その発見のエピソードもちょっと面白そうなのだが、何か詳しく書かれた本とかないのかな)。共著なんじゃないかとか、別の著者がいてシェイクスピアはちょっと加筆しただけなんじゃないかとか色々言われてるようなのだけど、少なくとも何人かきわめてシェイクスピアっぽい登場人物がいるのは確かだと思うんだけどな。
タイタス・アンドロニカス シェイクスピア全集 〔6〕 白水Uブックス ウィリアム・シェイクスピア 小田島 雄志 白水社 1983-01 by G-Tools |
2/14(Thu)
バレンタインデーの思い出とかエピソードといえるものはさほどないのだけど、中学時代に好きだった女の子から義理チョコ(クラス全員に配ってた)をもらって凄く嬉しかった記憶があるのは我ながらいじらしいなと思う。
で、まあバレンタインといえばそんな中学時代からぼくはもうこの曲なのです。
そんな話を日中ちょこちょこと(チョコだけに!)Facebookに書きつけていたら、家に帰ると妻の手作りチョコが待っていました。
写真集「Voice of Africa」を読むというか見る。かつて厳しい情報統制が敷かれていた南アフリカで、「ラジオに見えないようなラジオ」を作ってなんとか情報を求めていたという、そのラジオの数々を集めたもので、玩具を装ってるものが多いのかな。色使いもカラフルでただ見ていても楽しい。キャットウーマンらしきアダルトなデザインのものが見開きで大々的に使われてるあたりが編集やデザインを手がけた都築響一さんの面目躍如といったところか。
Voice of AFRICA―南アフリカの偽装ラジオ (ストリートデザインファイル) ジェニー ロミン 都築 響一 アスペクト 2000-06 by G-Tools |
2/15(Fri)
がんばって仕事を終わらせて(というか、結論を月曜に先送りにして)新大久保EARTHDOMへ。新宿三丁目から区役所通りを通り抜け、寿司三昧と松屋(牛丼屋ではなくカムジャタンが絶品な韓国料理の有名店)を横目に見ながらさらに進んで大久保通りに出ると、韓流ストリートのはずれくらいに行き当たるので、そこから新大久保駅方面に進む。そういえば、ぼくが人生上で食べたもっともマズいラーメンのひとつを出す店と、入った瞬間にアンモニアの強烈な匂いがしてきて中華料理屋はいずれも知らないうちに潰れていた。後者はけっこう昔からありそうな構えだったのだが、ここ数年の急激な街の変化には対応できなかったのであろう。まあたぶん二度と行かないから特に寂しいという気持ちもない。
それはさておき新大久保EARTHDOMは7周年期間中でベテラン勢(原爆オナニーズとか奇形児とかFOOLSとか)が連日出演してるわけだが本日はBlastroを見に来たのである。会場に入るとWorm's Meatが演奏中。これまたEARTHDOMには縁の深いバンド。基本的には出演者も客層もハードコア寄りですね。そんな中、Blastroはなんとライブレコーディングを敢行。とはいえ見てるほうからすると、普通のライブよりちょっとマイクが多いくらいで基本的には見る分には全然支障なし。
昨年初めて見て久々にブッ飛ばされたBlastroだが、ノイズ+ブラストビートという基本線はまったく変更無し、ただブラストながらもリズムパターンを微妙に変えたりといった展開がちょこちょことあるので飽きさせない。いやーかっこよかったわー。リリースも楽しみです。
2/16(Sat)
丸の内エリックサウスでカレー部。ランチミールス(「ミールス」というのは南インドの定食みたいなもの)をいただく。カレー三種類がそれぞれ違った味わい。ライスも2種類と盛りだくさんかつそれぞれが美味しく大満足。
渋谷WWWで「渋谷ロック革命」。ブッチャーズ(久々だなー)と少年ナイフ。WWWは初めて。映画館跡地なんだけど変わった会場だったな。
投稿者 junne : 12:20 | コメント (0) | トラックバック
2013年02月14日
週報 2/4-10
2/4(Mon)
大谷能生『持ってゆく歌、置いてゆく歌』を今頃ようやく読んだ(なんとなく最近俺のなかで大谷さんが熱いのである。ラップをやるようになって以来かもしれない)。青山のブック246で行われていた「旅と本と音楽」にまつわる連続トークイベントの書籍化。イベント自体には何度か足を運んだのだけど、かなり手が加えられている感じなので新鮮に読めた(中上とアイラーの回なんかはアイラーのハラホレヒレハレみたいな歌をかけて爆笑してたと思うのだけど、そういうのはカットされていましたね)。マルコムXとマイルスの章や深沢七郎の章など大いに読み応えあり。
持ってゆく歌、置いてゆく歌―不良たちの文学と音楽 大谷 能生 エスクァイアマガジンジャパン 2009-04 by G-Tools |
2/5(Tue)
DOMMUNEの「初音階段」発売記念番組を観る。前半の「○○階段の系譜」みたいな話も面白かったけど、後半の日野繭子さんを迎えてのポルノ/ピンク映画談義がもっと聴きたかった。初音階段ライブも素晴らしい(なにせ可愛いし!)。
初音階段 非常階段 starring 初音ミク インディーズレーベル 2013-01-16 by G-Tools |
2/6(Wed)
大雪が降るともっぱらの評判だったのだけど蓋を開ければ全然拍子抜けなことになっていたが、電車は予定通りの本数調整を行っていたので都内各所で大混乱だったようである。しかしながら我が安心の丸ノ内線は例によってほとんどダメージなし。
昼休みにBMRのサイト経由でミックステープを大量にダウンロードする。実は最近聴いてる音楽の半分以上がヒップホップとかR&Bなのだけど、こうやって無料で落としたデータ音源って名前とか全然覚えられないのよね。どんなにつまらない内容でもモノがあったほうがまだ何かしら記憶に残るのは不思議なような当たり前のような。
2/7(Thu)
38歳になりました。野比のび助36歳、両津勘吉35歳、星一徹33歳、則巻千兵衛博士28歳……。同じ誕生日としては加護亜衣さんなどがいます。あいぼんおめでとう!
10前後年上のミュージシャンでけっこう仲良くしてくれる方がぼくにはいるのだけど、そういった人たちは10年以上前に知り合ったのが多く、てことは当時はみなさん今の自分より年下だったのかと思うと結構びっくりするものがある。
そして誕生日のディナーとして妻が牡蠣フライを作ってくれた。これが超旨いの! パン粉をパンから作る気合の入り方。
2/8(Fri)
円盤へ、ウルトラビデのヒデさんのトークを聴きにいく。事前に客からの質問を集めていたのでたくさん書いて渡したのだが、最初の質問に入るまでに1時間喋り、最初の質問でさらに一時間みたいな感じで後半は駆け足気味。とはいえ色々と面白かった。内容については書かないでおきます。
円盤の後はたつやか成都と決まっているので今回は成都へ。なんかメニューがちょっと変わった感じ。コーンの上げたやつとか面白い味だったよ!
帰ってDVD『イヴの総て』を観る。ハリウッドには「芸能界の裏側もの」の系譜っていうのがあるよね。
イヴの総て [DVD] ファーストトレーディング 2011-02-14 by G-Tools |
2/9(Sat)
起きてDVD『エージェント・ゾーハン』を観る。アダム・サンドラー映画。猫の蹴鞠シーンヤバい。
エージェント・ゾーハン [DVD] ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2008-12-19 by G-Tools |
渋谷公会堂ですかんちを観る。泣く。
2/10(Sun)
録画してあった『エレキの若大将』を観る。すげえ楽しい! 演奏シーンが普通に格好良くて驚くけど考えてみたら寺内タケシとブルージーンズなので当然といえば当然なのである。しかし勝ち抜きエレキ合戦みたいなのの司会者が裕也さんだと気づかず見落としてしまった……。
エレキの若大将 [DVD] 田波靖男 東宝 2005-06-24 by G-Tools |
新宿三丁目で、5月に某所で行う某イベントについて某氏と打ち合わせ。マイルスの教えに従い若い連中とツルみたいと思います。「ジャニ研!」みたいな感じでヴィジュアル系について、その音楽性から影響力から何からしっかりガチで論じた本が読みたいなっていう話をしてたんだけど、それが書けるのは実のところとみぃさんくらいなんじゃないだろうか。
投稿者 junne : 15:01 | コメント (0) | トラックバック
2012年06月27日
5/30(Wed) こんな小説読んだことない
■保坂和志の新刊『カフカ式練習張』を読んだ。いやーなるほど確かに変な本。全編、膨大な断片の集積。断片ごとの関連は基本的にはない(たまーにあるけど)。日記みたいなのもあれば突然タイムマシーンに関する思弁SFみたいなものあり、猫の話はもちろんたくさんあるし、さらには本当に断片らしく途中でブツ切りで終わってるものもある。
タイトルどおりカフカがノートに書きとめた断片を集めた本みたいなのを作ろうと思ったらしい。面白いこと考えるもんだなあ。音楽でいえばマヘルみたいなもんかなあ。
カフカ式練習帳 保坂 和志 文藝春秋 2012-04-18 by G-Tools |
セ・ラ・デルニエール・シャンソン マヘル・シャラル・ハシュ・バズ 7 e.p. 2009-07-24 by G-Tools |
投稿者 junne : 20:58 | コメント (0) | トラックバック
2012年05月30日
5/22(Tue) All The Young Dudes
■出社前に同僚の実家が営むハンコ屋さんへ。妻の開業の関係もあり実印を作ることにしたのである。一生ものだといわれたのでついついちょっといいやつにしてみました。
■『レバノン―混迷のモザイク国家』『モンスター - 暗躍する次のアルカイダ』と立て続けにイスラム情勢についての本を読んで暗澹たる気持ちになったりしたのだが、やっぱイスラム文化の基本的なところを知りたいなという気になってきた。たしか昔、父がそういう本をたくさん買ってた気がするので今度実家に行った時に借りてこよう。
レバノン―混迷のモザイク国家 安武 塔馬 長崎出版 2011-07-25 by G-Tools |
モンスター - 暗躍する次のアルカイダ 山田 敏弘 中央公論新社 2012-03-23 by G-Tools |
■シアターN渋谷で『モット・ザ・フープル すべての若き野郎ども』を観る。モットのアルバムってまさにその『すべての若き野郎ども』しか持ってなかったんだけど、こうして観るとやはり格好いいバンドだったのだなあと素朴に思う。ある意味プロデューサーによって作られたバンドではあるのだけれど、にもかかわらずおそらく本人たちが極めて純朴だったがゆえになんというか誠実な感じがすごくする。ボウイとかかわらなかったらグラムに分類されることもなかったろうね。むしろ音的にはフェイセスとかに近いし。
映画の前半ではプロデューサーのクレイジーぶりが強調されているわけだが、この人が後にクラッシュの『ロンドン・コーリング』のプロデュースをする人である。そして『ロンドン・コーリング』の30周年エディションかなんかについてたDVDでもそのクレイジーさは強調されている(笑)。ちなみにミック・ジョーンズがこの映画でコメントをたくさんしてるんだけど、クレジットが「ファン」なのもちょっとよかった。
投稿者 junne : 20:12 | コメント (0) | トラックバック
2012年02月10日
Calibre
■Fb経由で知った「電子書籍管理」ソフト。iTunesの電子書籍版だと思えばいいかと。iTunesはいろんなファイルフォーマットの音源をひとつのソフトで管理して、場合によってはファイル形式の変換もできる、あとiPodとかのデバイスへ送ることもできる、みたいなソフトととらえるならば、まさにそれと同じことを電子書籍でやっているものだと思えばいいのではないかな。使い方はこちらに載ってるので各自でご確認ください。
■Kindleをせっかく買ったのに全然使ってないなーと思ってたので導入してみた。これまで洋書のサンプルみたいなのは山ほど入れてあるんだけどあんま読まなかったのね。とりあえずEPUBをKindle対応するように変換できるというので、津田さんのメルマガのここ最近のEPUB版を入れてみた。
■おお、全然問題ないですね。こりゃいいや。残念なのは日本でよく使われているdotbookやxmdfに対応していないということ。とはいえdotbookからEPUBへの変換はボイジャーがツールを提供してるはずだし、XMDFからEPUBへの変換もわりと簡単にできるようなので、とにかく全部一度EPUBにしちゃえばいいいってことだな。
投稿者 junne : 23:28 | コメント (0) | トラックバック
2012年02月01日
JAZZDOMMUNE!!!!!!!!
■今年はブログをちゃんとやろうと思ってたのに気がつけば駅弁大会の前半戦以降パッタリと更新が途絶えて気がつけばもう2月ですよ、どうしたもんかねこれは。
■しかも久々の更新が告知。それもちょっと遅い。というダメなブログもここに極まれリというという塩梅なのだけれども、1月末にこんな本を作りました。
JAZZDOMMUNE (DOMMUNE BOOKS 0008) 菊地 成孔 大谷 能生 DOMMUNE(ドミューン) メディア総合研究所 2012-01-26 by G-Tools |
となるとまあ当然「それを本にして意味があるのか?」という声が上がるでしょう。ひとまずこの本では、大量に写真を盛り込むことでなんとか番組の内容を伝えるべく努力しました。どの程度伝わってるかはわかりませんが、雰囲気うくらいは伝わってくれるのではないかと。
それにまあこの二人の話ですからね、テキスト部分も十分面白いと思います。ジャズ史(に留まりませんが)を彩る奇人・珍盤の数々。どうぞお楽しみくださいまし。
■駅弁大会後半の話も近いうちにちゃんと書きますからね!誰にも求められてない気もするが!
投稿者 junne : 18:48 | コメント (0) | トラックバック
2011年12月19日
Kids These Days 1 1/2
■6月に出た高校生バンドミニコミの続編である。11月の文学フリマで購入。今回は「1 1/2」ということでヴォリュームは少なめで、2バンドのインタヴュー+対談一本という内容。とはいえ、なんと佐賀まで出張しての取材である。もうそこまでやっちゃったら後は海外とか行くしかないんじゃなかろうか。
■登場するバンドは2つ、いずれも若いながらも年季の入ったバンドで、どちらも女の子バンドである。高校に入る前から同じ先生に指導を受けていて、もう軽音部の同級生たちでは物足りないっていうくらいの感じみたい。
■まあ全体に今どきの高校生バンドってこうなのかなあってくらい健やかで眩しいばかりである。今回も「あ、今の子ってそうなんだー」と細部にまで興味は尽きない。
■あと、どちらのバンドも練習は「週一回二時間」と言ってて、「少ないですね」って言われてるのが(汗)って感じでしたね……。
投稿者 junne : 16:15 | コメント (0) | トラックバック
2011年07月19日
7/13(Wed) Machinegun Talk
■大井町のGroovers Paradiseという店に初めて行った(というか大井町自体初めて行った気がする)。ガード下商店街の地下階がスナック街みたいになっていて、その一角にあるロックバー。周辺の飲み屋もなかなか雰囲気のあるところが多くてちょっと気になったり。
■英国で活動するプログレ鍵盤奏者ユミ・ハラ・コークウェル女史率いるMammal Machineの凱旋ライヴ。店の奥にライヴ用の機材・楽器一式がセッティングされており、その前のカウンターやテーブルで呑みながら観る感じ。入っていくとユミさんのマシンガントークが炸裂中でありました。
■最初は男性ベーシストと女性とドラマーの二人によるLOVE-A。
ベース一本ながら上手い具合に低音とリードパートを駆使したドローン系サイケニューウェーヴ、って感じかしら。ちょっと短かったけどかっこよかった!
■続くMammal Machineはユミさんを中心に、ギターがタバタさん、ベースが元マーブル・シープのリエさん、ドラムがMan Dogのワタナベさんというサイケスーパーバンドである。
基本的にはアルバム同様、60年代末頃のイギリスにおけるサイケとプログレの境界くらいの感じなのだけど、いやーさすがに手練揃い、濃厚な演奏でありました。アルバムに入ってたリエさんヴォーカルのNeu!みたいなポップな曲も聴きたかったなー。
密儀 マンマル・マシーン インディペンデントレーベル 2010-12-10 by G-Tools |
■AMT新譜をはじめ、色々と物販でCDを買って帰宅。
■阿部和重『和子の部屋』を読んだ。作家の阿部和重が「和子」として様々な女性作家の「人生相談」に答えるというもの。作家同士の対談なだけに技術論的なところがすごく面白かった。
和子の部屋 小説家のための人生相談 阿部和重 朝日新聞出版 2011-07-07 by G-Tools |
投稿者 junne : 14:45 | コメント (0) | トラックバック
2011年07月07日
7/6(Wed) 責了即興オーディション
■新刊のトビラの色校確認を三鷹で。途中ブランクがあったりしてどうなることかと思った企画だったのだが、ようやくここまで漕ぎつけました!
■佐々木敦『即興の解体/懐胎』を読む。「驚くべきこと」を意図的にやることの(不)可能性についてひたすらああでもないこうでもないと考えた本といいますか。佐々木さんの本の中でもかなりハードコアな部類の本。
即興の解体/懐胎 演奏と演劇のアポリア 佐々木敦 青土社 2011-04-22 by G-Tools |
■スペシャのスマイレージの番組にエコダムドのイライザ姐さんが出演!というので録画してあったやつを観た。コワモテパンクキャラを演じつつ随所でついつい笑っちゃったりしてる感じがいいですね!
投稿者 junne : 12:16 | コメント (0) | トラックバック
2011年05月17日
Home Made Musicスタジオ三昧Weekend
■レス・ポールからマルチネまで、「宅録」を中心としたディスクガイド本。面白い! いろいろとケッタイな音楽が取り上げられててリスナーとしても刺激されるし、自分でもガンガンやりたくなってくる。せっかくMTR持ってるんだしなあ。
宅録D.I.Y.ミュージック・ディスクガイド HOMEMADE MUSIC (P‐Vine BOOKs) | |
江森 丈晃 ブルース・インターアクションズ 2011-03-30 売り上げランキング : 5036 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ディスクガイド部分もさることながら、インタビューや対談、コラムの類もいちいち面白い。個人的には「She Talks Silence」というユニットの日記(初めてギターを買ったとこから始まるの!)が面白かった。
これもやはり『ソングス・イン・ザ・キー・オブ・Z アウトサイダー・ミュージックの巨大なる宇宙』 と併読推奨だなー。
あと宅録といえば最近カフェ・オ・レーベルのコンピ「奇跡のカタチ」を聞き直したりしたんだけどこれがまた良かったな。一応だいたいみんな「うたもの」ってところは守りつつ人によって微妙に逸脱する感じ。一人でうたものをやるとなった時に、弾き語りにはならないところに共感する。
奇跡のカタチ Vol.1 自宅録音コンピレーション The ケン シュガーフィールズ ジュテーム・ダンスフロア スペースカンフーマン プラモミリオンセラーズ インディペンデントレーベル 1998-06-25 by G-Tools |
まあこういうのは「あれが載ってない」って言い出すとキリがないけど、田畑さんの一連のソロなんかはかなり奇っ怪な宅録作品なので、この本が面白かった人は聞くといいと思いました。
Brainsville Tabata Elsi & Jack Recordings 1999-11-23 by G-Tools |
■先週末はなんかスタジオ三昧。土曜は個人練で1時間サックスを。依然として表情筋が疲れる、が、まあなんとか形にはなったかな。
■日曜はスタジオ2発。ひとつめはAmericoの西岡由美子さんと。Miss Donutの想像上のおともだちとして共演することになったので。結構いい感じだったんじゃないかと思いますよ!自分としてもあんまりやったことないようなことなので不安だったけど、もっとやりたいくらいだなー。
■で、そのイベントがこちらなのです↓
『初男ちゃんの部屋』
5/22(Sun) 新宿Naked Loft
OPEN18:30 / START19:00
前売¥1300/当日¥1500(共に飲食代別)
前売り予約はネイキッドロフトのウェブ&電話にて3月6日予約開始!!
【出演】
雨宮処凜(作家・活動家)
pagtas(坂田律子・写真家)
Miss Donut(西岡由美子from Americo)
junne(Filth/大甲子園)
笠原貴博(温泉求道家はむれっと)
【司会】 齋藤初男
■んでもういっこのスタジオは大甲子園。最近やってる新曲の構成に新パートを加えてより酷いものに。いやあこの酷さはなかなか会心です、皆さんに是非聞いていただきたい。そんな大甲子園のGIGが来週末に。
□FOOLS GET RIOT!!!!-THE EXTREME DETONATING SOUND TERRORISM GIG!!!-
■5/28(土) 東高円寺二万電圧
■open_17:30/start_18:00
■ticket:1500yen+1d(前売り/当日一律)
■出演
FIGHTBACK
WORM'S MEAT
PSYCHEDELIC GRINDER
ENDON
DIGZIG
200%
大甲子園
出番は二番目。かっこいいバンドがたくさん出る中での大甲子園のアウェイ感を楽しみに来てください!
投稿者 junne : 18:28 | コメント (0) | トラックバック
2011年04月26日
イノセント・ガールズ
■20世紀アメリカを生きた様々な女性たちの奇妙な人生を描いた評伝集。いっこいっこは短いが面白い! 登場する人たちはいわゆるセレブではなく、不遇のまま終わった人や、一時的に名声を得ながらもその後忘れられたような人が多い。
イノセント・ガールズ 20人の最低で最高の人生 山崎 まどか アスペクト 2011-02-23 by G-Tools |
音楽とかアートで言えば「アウトサイダーアート」に近いようなタイプの人が多く、そういう意味では読後感として一番近いのは『ソングス・イン・ザ・キー・オブ・Z アウトサイダー・ミュージックの巨大なる宇宙』 じゃないかと。
投稿者 junne : 13:40 | コメント (0) | トラックバック
2011年02月23日
処女懐胎
■先日のVivian Boysのインストアライブの様子がYouTubeにあがっていた。
歪みまくってるけど、まあそれだけ爆音でやってたってことですよ。
■なんとなく仏文気分なもので今朝から(Vivian Boysの曲名にもなっている)ブルトン/エリュアールの『処女懐胎』を読み始めたのだけど、昨日はアポリネールの『異端教祖株式会社』を読んでいた。まあ短い奇譚集って感じなんだけど、そのうちの一編にすごく既視感が。既読感じゃなくて「この話、マンガで読んだぞ?」っていう既視感。特に最後の場面など、確実に手塚治虫の絵で頭の中で再現される。
■モヤモヤするのでとっととググってみたところ、『バンパイヤ』で引用されているということだった。なるほど。手塚先生の『バンパイヤ』は個人的に凄く好きな作品なのだけど、残念ながら未完なの。
■バンパイヤといえばFacebookで見かけたニュースによるとダリオ・アルジェントの新作は3D版『ドラキュラ』だという。バズ・ラーマンの新作が3D版『グレート・ギャツビー』だって話の方が実はそそるんだけど(パーティのシーンとかが超キラッキラで飛び出してきたりするんだぜ、きっと)、それはともかく吸血鬼映画がまた来るんですかね。ここ数年映画でも出版でもゾンビがすごく流行ってる印象があって、誰かが「不景気だとゾンビが流行る」って言ってたのでさもありなんと思ってたわけなんだが、吸血鬼と景気は何か関係があるのだろうか……と思って検索してみたら、やはり「景気が悪いと吸血鬼が流行る」とかそういう話があちこちに。
■とりとめのない更新になってきたが、久々のライブが決まったので告知して〆ようと思います。
□Filth & Leningrad Blues Machine
・Filth(junne(g), Isshee(b), Tohru(dr))
・Leningrad Blues Machine(Mitsuru Tabata(g)、Masahiko Shimaji(b)、WATANABE(dr)、Akihiko Ando(sax))
■at Bar Isshee
■3/13(Sun) Open 18:30/Start 19:00
■料金:投げ銭(終演後)/別途バーチャージ500円+ドリンク代)
異端教祖株式会社 (白水Uブックス) ギヨーム アポリネール 窪田 般弥 白水社 1989-10 by G-Tools |
バンパイヤ(1) (手塚治虫漫画全集 (142)) 手塚 治虫 講談社 1979-03-30 by G-Tools |
投稿者 junne : 12:28 | コメント (0) | トラックバック
2011年02月08日
2/7(Mon) 誕生日もカレーで構わない!
■2月7日をもって36歳になりました!ホドロフスキーおよび加護亜衣さんと同じ誕生日です。あいぼんおめでとう!
■バースデーランチは会社の近くに来てた屋台の野毛山カレー。「四川風激辛キーマカレー」と「完熟トマトのチキンカレー」の二種盛をいただいた。
トマトカレーは甘酸っぱく、キーマカレーは「四川風」というだけあってなんか「麻婆カレー」みたいな印象。旨かった!
■そして写真データを届けにきてくれたカメラマンさんから「誕生日プレゼント!」と言って渡されたビニール袋。
中身はインドとネパールのマトンカレー用カレー粉。
そしてマトン!(笑)
近々いただこうと思います。どうもありがとう!
■先日円盤で買ったCDのひとつがSunyell Vivian Boysのトミー氏によるガールズガレージバンド。大変にかっこいい。
今では活動してないそうで大変に残念だ。あと、最近の自分の好みとしてCDだと4~5曲入りで1000円とか(またはCD-Rで500円とか)っていうフォーマットがロックンロールバンドには合ってるんじゃないかなーというのがある。7インチに近い感覚で買えるというか(つか、パンクとかガレージとかそういうロックンロールバンドはやっぱ7インチ出してほしいよね)。
How to Smile SUNYELL;サンエール Beechwood Records 2008-12-20 by G-Tools |
■桜庭一樹『伏 贋作・里見八犬伝』を読んだ。ブレードランナーなんですね。装丁は上製本だし初出は週刊文春だったりするけれども、むしろラノベに近い読後感(だから悪い、というのではないよ)。
伏 贋作・里見八犬伝 桜庭 一樹 文藝春秋 2010-11-26 by G-Tools |
投稿者 junne : 13:34 | コメント (0) | トラックバック
2010年12月07日
11/24(Wed)
■遅くまで仕事した。俺がんばった!
■桐野夏生『魂萌え!』。なんかこう気の滅入る話……。いや、桐野夏生って概ねどれ読んでも気は滅入るのだが、これは殺人とかそういう派手な事件がないだけに地味に堪える感じ。
魂萌え ! 桐野 夏生 毎日新聞社 2005-04-21 by G-Tools |
投稿者 junne : 13:17 | コメント (0) | トラックバック
2010年11月04日
11/1(Mon) ライオンシェア
■いよいよ本格的に風邪なのである。朝はとりあえず出社したが、午後いちで会社近くの病院へ。けっこうシステム化されててスムーズに終わってよかった。だいたい大きい病院って診察が終わっても精算ですげえ時間かかったりするよね!
■昼食は某所で「世界一うまいカレー屋」と言ってる人のいた南新宿の「ライオンシェア」へ。
奮発して1200円のAランチを注文。
キーマライス
+ホウレン草とチキンのカリー。
世界一かはともかく確かにこれはかなり旨い! いかんぜん風邪ひきで味覚が鈍感だったので、また体調のいい時に再訪したいところであります。
■吉田ルイ子『ハーレムの熱い日々』を読む。何というか、熱い女性の一人称ルポルタージュの系譜みたいなのってありますよね。
ハーレムの熱い日々 (講談社文庫 よ 10-1) 吉田 ルイ子 講談社 1979-01-29 by G-Tools |
投稿者 junne : 19:05 | コメント (0) | トラックバック
2010年11月02日
10月に読んだ本
ウィリアム・クウィーン『潜入捜査官―全米一凶悪なバイカーになりきった830日間
』
小規模ながらいまやヘルズ・エンジェルズよりも喧嘩上等的な意味で凶暴なバイカークラブ「モンゴルズ」への潜入捜査。『ノー・エンジェル』と併読すると面白いよ!
仲俣暁生 , フィルムアート社編集部『編集進化論 ─editするのは誰か? (Next Creator Book)』
今の自分の気分としては「場所」を持ちながら発信していく、みたいなところに興味があるので、そのあたりもうちょっと突っ込んで調べてみようと思った
平井 玄『愛と憎しみの新宿 半径一キロの日本近代史』
面白い!
笙野 頼子『なにもしてない』
笙野 頼子『タイムスリップ・コンビナート』
笙野 頼子『東京妖怪浮遊』
笙野頼子を何冊か続けて読んだところ、こちらの問題だと思うんだけど、どうもノレなかった。昔『レストレス・ドリーム』とか読んだときは滅茶苦茶興奮したんだけどなあ。まあまたしばらくしたら読んでみましょうかね。
蓮實 重彦『映画に目が眩んで』
時評とか檄文的なものを収録しているので、比較的読みやすい文章で書かれています。ジャームッシュやヴェンダースがやたらフィーチャーされてるあたりに時代を感じる
横田 順弥『快男児 押川春浪』
明治の快人伝みたいなのはだいたい何読んでも面白いよね
堀 晃『太陽風交点』
古典の風格すら漂う宇宙 SF短編集
柴崎 友香『寝ても覚めても』
傑作です!
マイク デイヴィス『スラムの惑星―都市貧困のグローバル化―
』
坂口 恭平『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』
この二冊はセットで読みたいところですね
JOJO 広重 , 美川俊治 , JUNKO『非常階段 A STORY OF THE KING OF NOISE』
滅茶苦茶面白い
石井 隆『黒の天使 (1) (石井隆コレクション (1))』
石井 隆『黒の天使 (2) (石井隆コレクション (2))』
石井 隆『曼珠沙華 (石井隆コレクション (3))』
舩田 クラーセン さやか『アフリカ学入門―ポップカルチャーから政治経済まで―』
文化関係のことがもっと載ってるかと思ったんだけど、まあ教科書としてよくできた本です
投稿者 junne : 23:24 | コメント (0) | トラックバック
2010年10月28日
10/27(Wed) King of Noise
■昨日も書いたように米がないので、本日の弁当はサンドイッチ。鶏の照り焼きとレタスを挟んでみました。見た目は悪いが旨かったゾ!
■小田急線の某所で打ち合わせ。世田谷区って広いよね。下北とか梅が丘くらいの距離感で会社を出たら思ったより遠くて遅刻しないかと冷や冷やだった。
■何だか風邪気味だし寒くなってきたしで夜は鍋。鮭があったので石狩鍋にしてみました。北海道ではじゃがいもとキャベツを入れるというのでそれに従う。うめえあったけえ。
■ちょっとずつ読んでいた『非常階段 A STORY OF THE KING OF NOISE』を数日前に読み終え、さらに本日付録のDVDを見終わる。
最初の3トラック(80年代のドロドロパフォーマンス時代)の映像は、たぶん録音状態のせいもあってかいかんせん音がショボいのだが(映像は大変貴重なものばかりです。よくとってあったなあ、こんなものと感心する)、最後に収録された30周年ライブの映像は普通にロックとして興奮する。特にJOJOさんの煽り方は完全にハードロック。いいもん観た。
30周年~本のプロモーションと、ここ1~2年はいつになく非常階段の名前を目にする機会が多かったんだけど、何故かそういうときに限って一度も現場には行けずじまいでありました。90年代後半は結構観にいったんだけどなあ。ともあれこの本は滅茶苦茶面白いので読むといいです。
非常階段 A STORY OF THE KING OF NOISE JOJO広重 美川俊治 JUNKO コサカイフミオ 野間易通 K&Bパブリッシャーズ 2010-09-03 by G-Tools |
投稿者 junne : 13:22 | コメント (0) | トラックバック
2010年10月21日
10/19(Tue) 「出来」は「しゅったい」と読むんだよ
■新刊2冊の見本誌出来!
ということで先月末から今月頭にかけてずっとかかりっきりだった二冊ができました。
■『ノー・エンジェル ヘルズ・エンジェルズ潜入捜査官』は副題のとおり、ヘルズ・エンジェルズ潜入捜査の記録。筆者は捜査官本人。こちらに原書が出たときのトレーラーが↓
ルックス的に本物に負けないくらい悪そうなこの捜査官がバイカーに扮してエンジェルズに接近するわけですよ。
んで彼らと日常をともにするうちに影響されていき、もともと突っ走りがちな性格だっていうのもあって家族や同僚と次第に軋轢が生じる、そんな苦悩も描きつつ、やっぱ興味深いのはヘルズ・エンジェルズという集団の生態だったり潜入捜査のやり方とか。
渋いエピソードもいろいろあるので是非読んでみていただきたい。
ちなみにカバーの折り返しのところに革ジャンのジッパーをあしらったデザインになってるんだけど、これはぼくのSchottです。
ノー・エンジェル ヘルズ・エンジェルズ潜入捜査官 ジェイ ドビンズ ニルス ジョンソン=シェルトン 島田 陽子 メディア総合研究所 2010-10-26 by G-Tools |
■んでもう一冊は松江哲明『質疑応答のプロになる! 映画に参加するために(ブレインズ叢書4)』。HEADZ主催のカルチャースクール「BRAINZ」の講義録シリーズ。
この講座はこれまで本になったものと違って結構参加型なもの。舞台挨拶とか映画祭とかでトークとかやった時に、「それでは質疑応答を」って言ってもなかなか手が挙がらない。それってもったいなくない?ってことで、映像作家をゲストに招き、生徒が質疑応答をやってみよう、という記録であります。
毎回上映機会の少ない映像作品を取り上げ、それに関する質疑応答を繰り広げるのだけれど、松江さんも「こんなに笑ったゲラ校正は初めて」というくらいの抱腹絶倒、かつ真摯に映画・映像、ひいては芸術とか表現全般の本質に迫るような熱い議論が行われてるので必読だお!
質疑応答のプロになる! 映画に参加するために (ブレインズ叢書4) | |
松江 哲明 真利子 哲也 いまおか しんじ 村上 賢司 古澤 健 メディア総合研究所 2010-10-26 売り上げランキング : 14273 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 19:33 | コメント (0) | トラックバック
2010年10月14日
10/13(Wed) 快男児 押川春浪
■新刊2冊、両方とも本日白焼き&色校が出る。両方その日のうちに確認、修正依頼を出す。ノリが全然違う本なので頭の切り替えが大変……。ということで、ジュンク堂の松江哲明・森達也トークにも行けなかった、残念。ちなみに11月よりジュンク堂新宿店で松江さんの選書フェアが始まるよ!
■『快男児 押川春浪』(徳間文庫)を読む。だーいぶ前に買った積読本。明治期に活躍した日本SFのオリジネイターの一人であり、大学野球の振興に尽力した人物の評伝。SF作家としてよりもむしろ後半の、早稲田大学OBとしてさまざまな形で野球に貢献する様が面白い。新渡戸稲造&朝日新聞の「野球害毒論」とのバトルとか。つか、まあ明治の快人伝みたいなのはだいたい何でも面白いよね。
快男児 押川春浪 (徳間文庫) | |
横田 順弥 会津 信吾 徳間書店 1991-04 売り上げランキング : 325488 おすすめ平均 明治研究の基礎資料の一つ Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 12:45 | コメント (0) | トラックバック
2010年10月04日
10/3(Sun) 新宿
■本日も休日出勤。昨日ほどは時間がかからず、9時半くらいまで仕事。夕食は簡単にパスタにした。玉葱とパプリカとツナのトマトソース。手抜きだが旨かった!
■平井玄『愛と憎しみの新宿』を読む。新宿とともに生きた半生記。「1968年もの」みたいな本はいろいろあるが、生まれも育ちも新宿のせいか地に足のついた印象。ゴールデン街よりもしょんべん横丁、というか。
愛と憎しみの新宿 半径一キロの日本近代史 (ちくま新書 858) 平井 玄 筑摩書房 2010-08-06 by G-Tools |
投稿者 junne : 14:38 | コメント (0) | トラックバック
2010年10月02日
9月に読んだ本
近藤 譲『音を投げる―作曲思想の射程』
8月に続き仕事の資料
J・ G・バラード『時の声』
初期の短編集。いずれも終末感漂う作品で、この偉大な作家の生涯を貫くものを感じる
クリストファー・プリースト『魔法』
(だいぶ)前に読んだ『奇術師 (ハヤカワ文庫 FT)』がああいう話だったので、こういうことかなとか予想しながら読んだら全然違った。おもしろいよ。
ジェフ・ヌーン『ヴァート』
英国産ヴァーチャル・リアリティ・ドラッグ・サイバーパンク?これはかっこいい!こういうSF大好き!そういえば俺、『時計仕掛けのオレンジ』って読んでなかったんだった
ラルフ・"サニー"・バージャー『ヘルズ・エンジェル―サニー・バージャーとヘルズ・エンジェルズ・モーターサイクル・クラブの時代』
ヘルズ・エンジェルズの栄光を築いた立役者の一人の自伝。
石丸 元章『SPEED スピード』
文体自体でドラッグを感じさせようというカッ飛んだグルーヴのある本
後藤 繁雄『天国でブルー (The day book (3 1995-1998))』
日記と銘打ちつつ、まあバラエティブック的な本。こういう本作るのって楽しそうだよね。装丁が綺麗。
松岡 正剛『連塾 方法日本II 侘び・数寄・余白 アートにひそむ負の想像力 (連塾方法日本 2)』
まあいつもの感じ。
後藤 繁雄 , 日本グラフィックデザイナー協会『デザインの未来』
個人的にはあんま参考にはならなかったかな
神林 長平『グッドラック―戦闘妖精・雪風』
ずーっと前にシリーズの第1作を読み、ずっと前に買ってあった第二作。エンターテイニングながらかなり深くて複雑な思弁というか思考実験を行っている、SFの理想みたいな本。続きも読まないとね……。
ウィリアム・バロウズ『ジャンキー 新装版』
いまやドラッグ本の古典か。医学的な根拠ゼロで思いつくままにドラッグの効能を述べるあたりはさすがである。が、この後の小説のほうがやっぱ凄いね
松江 哲明『セルフ・ドキュメンタリー ---映画監督・松江哲明ができるまで』
10月には弊社からも松江さんの本が出ます。現在鋭意作業中。こちらはまあ自伝ですね。自分は映画の人間ではないけれども、何かと読むと「そうだよな!」とか思って元気の出る本です。
投稿者 junne : 14:42 | コメント (0) | トラックバック
2010年10月01日
ウィリアム・クィーン『潜入捜査官』
■アウトロー・バイカー集団といえば何といっても有名なのはヘルズ・エンジェルズ。しかし、凶暴さにおいてはその上をいくのがモンゴルズというクラブだ。もともとは小さなクラブだったのだが、喧嘩っ早いヒスパニック系のメンバーを増やしたりしてノシてきた模様。ヘルズ・エンジェルズとの抗争でも一歩も引かず、地域によってはより強い勢力を誇るヤバいグループである。
で、そのモンゴルズに2年以上かけて潜入、その幹部クラスをことごとくムショ送りにしたウィリアム・クィーン捜査官の手記が『潜入捜査官』という本。モンゴルズのメンバーになるにはまずは取り巻きから始まって、徹底的な身元調査がなされた上で見習いに昇格。それでメンバーから奴隷のようにコキ使われながら何らかの場面で根性を見せる(場合によってはクラブのために人を殺すようなこともある)と、ようやく正式なメンバーになれる。
バイカーたちの生態とか、彼らにちょっとシンパシーを感じ始めちゃってる捜査官の苦悩とか、いろいろと面白い本です。なお、また後日宣伝するけど、これとかなり被る本を現在制作中。そっちも滅茶苦茶面白いのでお楽しみにね(笑)。
潜入捜査官―全米一凶悪なバイカーになりきった830日間 ウィリアム クウィーン William Queen ヴィレッジブックス 2007-07 by G-Tools |
投稿者 junne : 19:41 | コメント (0) | トラックバック
2010年08月30日
2010年7月に読んだ本
■7月は音楽書月間にするつもりだったんだけど、結果としてはそうでもなかったな。
・とみさわ昭仁『人喰い映画祭』
世の中には知らない映画がたくさんあるんだなあ。
・高橋健太郎『ポップミュージックのゆくえ』
名著の復刊。これは素晴らしいので後で個別にエントリ立てて書きます。
・松岡正剛『松岡正剛の書棚』
丸善松丸本舗の本。まだ行ったことないんだけど。
・ロベルト・ボラーニョー『野生の探偵たち 下』
後半はいよいよ凄いことになっていく。
・クレメンス・マイヤー『夜と灯りと』
現代ドイツ社会のさまざまな、主にルーザーたちを描いた好短編集
・山下洋輔『アメリカ乱入事始め』
海外ツアー日記っていうのは何でも面白いよね
・『20世紀のムーンライダーズ』
参考資料
・間章『僕はランチにでかける』
当時からクラウトロックとかを評価してたことは凄いとは思う
・白洲正子『夕顔』
箱根行きの際に読んだ。合うかなと思って。
投稿者 junne : 19:38 | コメント (0) | トラックバック
2010年07月13日
Jandek on 地上波
■町山智浩さんがTOKYO MXでやっている「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」という番組は普段ついつい見逃してしまうのだが、タイトルどおり日本で公開されない主としてドキュメンタリーの映画を放映する良番組。尺の関係でだいたい二週に分けての公開になってしまうのが難点なのだが、なかなか貴重な作品をちゃんと字幕つけてやってくれるのでありがたい。
■で、先週は「JANDEK on Cornwood」。そう、JANDEKのドキュメンタリーなのだった。昔は雑誌とかだと「ヤンデック」って表記だったけど、今は「ジャンデック」みたいね。すごく大雑把に言っちゃうとアシッド・フォークに分類されるのであろうか。ダラダラと弾きっぱなしみたいなギターと亡羊とした歌。こんなの↓。
■長年人前に姿を現さず、私書箱宛経由の手紙でしか連絡手段がないという謎の人物。その正体については諸説あるが今もって不明。なんか最近普通にライブやってるってうわさを聞いた気もするけどよく知りません。一枚だけアルバム持ってたんだけど無くしちゃったなあ。売ったのかなあ。ディスコグラフィ的なものを見てもどうでもいいような印象に残らないジャケばっかなのでどれだったかわかりません。
■んで、自主制作でアルバムをリリースし続けてるうちに女性ボーカルやドラムも登場してファンに衝撃を与えたりしているのだが、それらもメンバーについても正体はまったくもって不明。今週放映の後半部でそんなジャンデックの謎にいよいよ迫る!らしい。なんかもう川口浩探検隊みたいなノリ。
■なお、ジャンデックについて日本語で読めるものとしてはまずはMapさん発行の「Songs In The Key Of Z」。
ジャンデックに限らず、シド・バレットに始まるアウトサイダー・ミュージック全般を扱った、400ページに及ぶ大著であります。他にもたくさん面白い人が出てくるので必読。MapさんでもLilmagさんでも売ってるよ。
■あと「Sweet Dreams」誌の創刊号でもジャンデックの充実した特集記事が載ってるんだけど(ジャンデックがライブをやったって話しはここで読んだ気がするがよく覚えてない)、残念ながら現在は品切れみたいですね。
■ちょうど今作ってる本の中である意味アウトサイダー・アート的といえる映画作家の話が出てきたりするので、その辺ともシンクロして個人的にすごく興味深かった。ということで、「Songs In The Key Of Z」を読んで今週の後編に備えるといいと思うな。
投稿者 junne : 14:36 | コメント (0) | トラックバック
2010年6月に読んだ本
■うわ、もう13日! 6月はなんとなく映画が観たいぜモードになってたので、映画の本が多かったな。
●三浦俊彦『可能世界の哲学―「存在」と「自己」を考える』
5月の三浦俊彦特集の続き。タイトル通り、「可能世界」についての諸説を検討した本。丁寧に読めば何とかついていけた。これ読んでから『虚構世界の哲学』を読み返すともっと面白いかもという気もしたけど、そんな気力は今のところない
●五所純子『スカトロジー・フルーツ』
面白い! んー、なんか女寺山修司みたいな印象を受けました。寺山についての文章も載ってるし、基本的にだいたい「何かについて」書いた本なのでそういう意味では「批評」なのかなという気もするのだが、むしろそれが自分の表現になってるあたりが寺山的というか。
●淀川長治『私の映画教室』
普通に勉強になる。
●「Coyote (コヨーテ)No.29 特集:サンフランシスコ・クロニクル」
ブローティガン再読したくなった
●「季刊 TRASH-UP!! vol.5(雑誌+DVD)」
今もっとも熱い雑誌の一つ。巻頭にレジデンツ特集。そろそろ新しい号が出る頃ですね。
●山田宏一『美女と犯罪 映画的なあまりに映画的な』
タイトル通り「美女と犯罪」をめぐる映画史。山田先生の文章は愛があっていい
●上野千鶴子『スカートの下の劇場』
●上野千鶴子『性愛論〈対話篇〉』
何気に昨今の草食男子・肉食女子を予見したような箇所が興味深かった
●桜庭一樹『お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記)』
桜庭一樹は実は読書日記が一番好きかも。読みたい本が増えまくり。
●楳図かずお『恐怖への招待』
恐怖論、創作論、自伝(半世紀)。創作ノートが貴重かも。最初にプロットとかかなりノートつけてるのね。
●若松孝二『若松孝二・俺は手を汚す』
先月読んだ『興行師たちの映画史』で、足立正生とかと違って若松は確固たる政治思想とかがあるわけではなく、基本的にはエクスプロイテーションだっていう主旨のことが書いてあったんだけど、これを読むとなるほどそのとおりだなと思う。無類の面白さ。
●ロベルト・ボラーニョ『野生の探偵たち〈上〉』
メキシコの若き前衛詩人グループ「はらわたリアリスト」をめぐる「藪の中」的な小説。超面白い。今下巻を読んでます。
●蓮實重彦・武満徹『シネマの快楽』
対談集。シネ・ヴィヴァンでの対談シリーズが基になっている。取り上げてる映画が時には二人からケチョンケチョンにされてたりして、小屋の人もハラハラだったろうなと思う。
■なぜか河出文庫が多かったね。
投稿者 junne : 10:59 | コメント (0) | トラックバック
2010年06月07日
5月に読んだ本
■もちろん日々本は読んでるのだけど、まとまった感想を書くのも面倒くさいなあと思ったので、こんな感じでまとめてメモ書きをしていこうかと。ちなみに全点ではないです(ほぼ全点だけど)。
■なんかやたらと三浦俊彦を読んでますが特に他意はない。たまたま本棚の端から読んでったらそうなった。ポール・オースターの小説に出てくるエピソードで、本の詰まった箱を家具代わりにしてる男がいて、箱を開けて中の本を端から読んでいき(読み終わった本は処分して)、だんだん家具が減っていく、というのが好きだったので、ぼくも棚の端から読んでいこうと思った次第。
とはいえ図書館の本とか仕事関係とか新しく買った本とかが途中で割り込んでくるからなかなか「端から順番に」というわけにもいかないのだけど。一ヶ月で一段読もうと読もうと思ってたんだけど無理だったなあ。
●ラッタウット・ラープチャルーンサップ『観光』
アメリカ育ちのタイ人作家による短編集。全て舞台はタイ。少年少女が主人公のものが多く、青春っぽくもやるせない好短編集
●三浦俊彦『離婚式』
将来離婚をすることを前提に結婚するカップルが理想の離婚式プランを討論する。変な小説
●三浦俊彦『蜜林レース』
恋愛エピグラムアドベンチャー(なんだそりゃ)
●三浦俊彦『エクリチュール元年』
大学小説(奥泉+筒井みたいな)中心の短編集。
●三浦俊彦『たましいの生まれかた―短篇集』
短編集。全体に筒井っぽいなあという印象だった。
●三浦俊彦『虚構世界の存在論』
タイトル通り、虚構内の存在について分析哲学のタームで考察したハードな哲学書
●松江哲明『童貞。をプロファイル』
童貞時代が芸のこやしになってそうなクリエイター達に童貞時代の話を聞くインタビュー集
●松江哲明『あんにょんキムチ』
同名映画のメイキング本。総ルビなので中学生向きとかなのかしら
●石黒達昌『平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士、並びに、』
架空の論文の体裁をとって横書きで書かれた小説。というふれこみだったが思ったほど論文っぽくない。面白いけど。
●金子邦彦『カオスの紡ぐ夢の中で』
カオス研究者による科学エッセイ+小説。円城塔さんのペンネームの元ネタが出てくることでも知られる(?)。変な本
●松江哲明『童貞の教室』
『童貞。をプロデュース』のメイキング&熱いメッセージ
●柳下毅一郎『興行師たちの映画史 エクスプロイテーション・フィルム全史』
「見世物」としての映画(=エクスプロイテーション・ムーヴィ)こそが映画の本道であるという史観に基づく名著。超面白い。
●森達也『森達也の夜の映画学校』
BOX東中野で行われた映画上映+対談イベントシリーズの記録。オウムがテーマの回でエヴァの庵野監督と一緒に出演したアレフの広報部長が、「いやウチの教祖もね」みたいな感じでさらっと話してるのが何かすげえなと思った。
この中では何といってもオススメはこれ↓ですね。
興行師たちの映画史 エクスプロイテーション・フィルム全史 青土社 2003-12-21 by G-Tools |
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2010年04月14日
3/29(Mon) すさまじい
■会社休み。引越しのお手伝い的なことをした。
■コーマック・マッカーシー『ブラッド・メリディアン』を読む。読書メーターで円城さんが一言「すさまじい」って書いてたけどまさにそういう本であります。あと山形浩生さんが「もう最近、コーマック・マッカーシーさえあれば小説は他にいらないと思うくらい」と書いてましたな。
簡単に言っちゃうと主人公の「少年」が「頭皮狩り隊」というインディアン討伐隊に加わり旅をする話。なのだが、全編に渡って展開する暴力描写、そして「判事」なる登場人物の圧倒的な存在感。『闇の奥』のクルツ(=『地獄の黙示録』のカーツですな)と比較されていたが、それもなるほどという感じであります。他の作品も読んでみよう。
ブラッド・メリディアン 黒原敏行 早川書房 2009-12-18 by G-Tools |
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2010年03月10日
岡田暁生『音楽の聴き方』
■これまで読んだ同じ著者の本が基本的には歴史概説書(随所に筆者の主観・価値判断が入るとはいえ)であったのに対して、こちらはより「著者の考え」を綴った本といっていいかと。
■「音楽は音を楽しむって書くんだよ。言葉じゃなくって感じればいいんだよ」みたいな言い草が個人的には昔から嫌いだったのだけれども、そういう自分からすれば大変に溜飲の下がる本でありました。
■そもそも音楽を「理解」するのに言葉はいらないとか「音は国境を越える」的な言説自体が19世紀の西洋で生まれた一種のイデオロギーでありグローバリズム(ニアリーイコール帝国主義)がその背景にある。言語化せず「感覚的に」「楽しむ」ことができるのは馴染みのある(西洋音楽がベースにあるような)音楽だけであって、耳慣れない音楽を楽しむにはやはりどこかで耳の訓練が必要だし、そのうえで「言葉にする」という作業は有効だ。
■生きていれば「批評」は常につきまとうし、むしろそれを怠ることは視野を狭めることになると思うんですよ。途中から本の紹介というよりぼくの意見になってしまってますが、そんなようなことが理路整然と書かれた良書。少なくともぼくはそういうことを読み取った。
音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書) 中央公論新社 2009-06 by G-Tools |
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2010年03月03日
岡田暁生『オペラの運命』
■こないだ読んだ『西洋音楽史』が面白かったので。
■「オペラ劇場」という特殊な場の成立と変遷を中心に据え、受容層の変化(神に捧げることを目的とした音楽が王侯貴族を讃えるためのものになり、やがて市民社会の時代となってブルジョワ階級のスノビズムを満足させるためのものとなって、というような)にともなってオペラという芸術表現じたいも変化していく。20世紀になるとそもそも「オペラ劇場」という非日常的空間を成立させることが難しくなってくるわけで、そういう意味で20世紀以降に作られた前衛オペラとかそういうのは「オペラ」と呼べるのか、と、簡単に言っちゃうとそんなような話。
■コンパクトかつ平易にオペラの歴史と魅力が語られており、巻末には文献・音源ガイドもついていて嬉しい(映像についてはLD時代のものなので必ずしもそのまま今でも使えるわけではないけど)。『西洋音楽史』は音源ガイドがついてないのが残念だったのよね。
■細かいところでいうとワーグナーが散々な書かれようなのが笑う。
オペラの運命―十九世紀を魅了した「一夜の夢」 (中公新書) 中央公論新社 2001-04 by G-Tools |
投稿者 junne : 18:18 | コメント (0) | トラックバック
2009年09月02日
9/1(Tue) 最近のパンクから
■9月はまた日記を書いてみようかなと。
■悪い夢を見て目を覚ましたところ、怖いメールが入っていた。
■通勤電車(往路)で「EL ZINE」0号を読む。DOLL編集の山路氏が立ち上げたパンク雑誌。DOLL最終号にも登場したAcuteやRydeenが登場していることもあって、DOLLの延長という感じもありつつ、特に硬派かつ渋いところを集中的に継承した、という印象。編集後記のことばが特に印象的だった。行川さんのブログでも指摘されているが黒地のモノクロの表紙とその紙質、そして目次部分の写真のツブれかたなど、ハードコアの7インチのスリーヴを思わせてこれまた渋い。次号も楽しみ。
■ちなみにそのDOLL最終号の表紙を飾っていたスウェーデンのパンクバンドMasshysteriのLPを先日買ったのだけどこれは大変素晴らしかった。時にサーフっぽかったりする哀愁のメロディ、全編スウェーデン語の男女ツインヴォーカル。疾走感はまぎれもなくパンクながら、USインディーズとかRiot Grrrlとかが好きな人にもイケると思う。オススメです。
→マイスペ
■出社すると、またしも組織変更があったり(まあぼくは元に戻るだけなのだが)、微妙にモメごとの気配があったりとバタバタな感じ。まあ自分の仕事を粛々とやるだけなのだが。弁当はトマト煮(鶏むね肉、キャベツ、玉ねぎ、長ねぎ、モツァレラチーズ、をトマトソースで煮たもの。クミンパウダーとホットガラムマサラもちょっとずつ投入)と白米。旨い。
■夕方より、游歩塾の湯浅ちぐみさん「スターのホロスコープ」第3回。今回は基本的には民主党特集でお送りしつつ、最後にはこの一ヶ月もっとも話題だったアノ人を。生まれた時間までわかるとグッと内容が濃くなるのね。
■で、終了後はちぐみさんと代々木の土風炉で軽く呑む。
投稿者 junne : 09:27 | コメント (0) | トラックバック
2009年04月15日
松岡正剛『多読術』
■「まずは目次をじっくり見ろ」みたいな、過去の著作でもちょこちょこ語ってるような話から始まるので、まあ立ち読みでもいっかと思ったのだけど、立ち読んでいるうちに割りと充実した内容な気がしてきたので購入にいたった。バイオグラフィカルな話も興味深かったし(『遊』立ち上げ以前の仕事ってあんまり書いたり喋ったりしてない気がする。ぼくが読んでないだけかもだけど)。
■タイトルだけみると「本をたくさん読むためのノウハウ」みたいな本かなと思うのだけど、むしろ本は一冊で完結するものではない(インターテクスチャリティみたいなことですね)という話をしている本だと思った。で、本と本をつなげるための技法なんかも紹介されてたり。
多読術 (ちくまプリマー新書) 松岡正剛 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 19:31 | コメント (0) | トラックバック
2009年04月03日
キース・リチャーズ 彼こそローリング・ストーンズ
■すごい昔に買ってずっと積読状態にあった本を何気なく読んでみた。要するにキース・リチャーズの伝記で、随所に本人のコメントや周囲の人間の発言が引用される。かなり前に出た本なので、時代的には70年代末くらいまでの話。
■まず印象的だったのは、ブライアンの扱いの酷さ。「何もできないくせに主導権を握りたがって周りに迷惑ばっかかけてた奴」くらいの扱いなの。キース本人も酷くて、ブライアンの死後にインタビューでバンド名の由来を訊かれ「さあな、ブライアンに聞いてくれ」と答え、続けて「どこで会えますか?」と訊かれたら「プールの中だろ」だって。ひどくね?
■たいへんグッときた箇所というのが、ドラッグで捕まって裁判を受けてるときに
裁判官から「リードギターっていうのは何をするのか」と訊かれ、「いちばんでかい音を出す人間です」と答え、傍聴席からやんやの喝采を受けるというくだり。なので今後はぼく大甲子園で「いちばんでかい音を出す人間」でいこうと思いました(まあ改めて思わなくても最近はわりとそうなんだけど)。
■ハノイツアーの後にさらにこんな本を読んだりしたもんだから「血中ロケンローラー濃度」が急上昇中。いや現実的に急上昇中なのはむしろ血中アルコール濃度」なのだが。なんか酔っ払って夜中にギター弾きまくったりしてますよ。近所迷惑もいいとだけど。
■関係ないけどキースといえば最近笑ったのはこの記事
キース・リチャーズ 彼こそローリング・ストーンズ (ソニー・マガジンズ文庫) Barbara Charone 中江 昌彦 野間 けい子 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 18:15 | コメント (0) | トラックバック
2009年03月24日
伊藤計劃『ハーモニー』
■前作『虐殺器官』も面白かったこともあって、発売からはちょっと間が空いてしまったものの楽しみに読み始めたのが一昨日のこと。と思ったとたんに突然の訃報。ある本を読んでいるまさにその間にその著者が亡くなる、それが唐突に遺作になってしまう、というのはこれまで経験したことがなかったので、何だか動揺してしまって、どう反応していいのかわからずにいる。しかもその本の内容が内容だし。
■舞台は近未来。何らかのカタストロフがあって(おそらく『虐殺器官』とつながっている)世界の人口は激減。残された人々は一人ひとりが人類にとって貴重な「リソース」であるという意識のもと、徹底した健康管理/監視に基づいたある種の「ユートピア」を作り上げた。あらゆる病気や不摂生は取り除かれ、暴力や心に傷を与えるようなネガティヴな要素がすべて排除され互いに気遣いあう(子供たちの間ですら「いじめ」の一つもない!)。そんな世界に息苦しさを感じ、自殺することでそこから解放されることを求めた少女たち……というのが冒頭。
■まあ最近よく見かける「快適なディストピア」ものですわな。そしてそこから更にスケールは拡がり、意識とは何かとかそういった思弁的な領域に突入していく。これまた完全に偶然なんだけど、ちょうどこれを読んでる間に更新された松岡正剛の千夜千冊「神々の沈黙」の話とリンクしてきて、これまた変にタイミングが絶妙で気味が悪い。
■作品自体たいへん面白いのだけど、それだけでなく色々な意味で、忘れられない一冊になってしまいそうだ。こんなことで記憶に残るのも嫌なのだけど。この「先」をこそ書いてほしかったのに。この「先」が書けた作家はぼくが知ってる限りまだいないだけに、惜しまれてならない。
ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) 伊藤 計劃 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 20:49 | コメント (0) | トラックバック
2009年03月02日
いとうせいこうが小説を!!
■いとうせいこうが連載小説ブログを開設!本日第一回が掲載された!これは楽しみすぎる!
投稿者 junne : 17:06 | コメント (0) | トラックバック
2009年01月14日
ブラック・メタル本、ようやく発売ですよ!
■さてさて、本年最初のリリースですよ(やってたのは昨年末だけど)
ブラック・メタルの血塗られた歴史 (Garageland Jam Books) (Garageland Jam Books) 島田 陽子 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
えーと、今現在アマゾンでは微妙に品切れになってますが、すぐ入荷すると思います。超面白いので夜露死苦ね!
投稿者 junne : 12:53 | コメント (0) | トラックバック
2008年07月02日
スタジオボイス2008年7月号
■もう先月号なんだけど、「リトルプレス特集号」ということで、友人知人が多数寄稿しているということもあって購入してあったのね。で、ようやくとりあえず特集をざっと読んでみたのだけど、うーん、なんか違和感が。そもそも紹介されてるのが全体にアートブックみたいなやつが多いの。んで、まあ一応小さいながらも出版社の体裁を取っていて、ちゃんと製本とかして作ってる感じの。とりあえずぼくがLilmagで買い漁ってるようなものとはちょっと趣が違う。
■あのですね、俺は字が読みたいの! ビジュアル本も悪いとはいわないけど、そればっかってのはどうなのかと。海外のジンを紹介するならもっと文芸誌とかがほしかった。絶対いっぱいあるはずなんだよね。まあ自分で探せって話か。あと、基本的にぼくはパンク感のあるジンが好きなんだけど、そういうのが少なかったのも残念。つかあれなのか、「ジン」と「リトルプレス」は別物で、「リトルプレス」は単に部数が少ない普通の本っていう感じだったりするのかしら。
■そんな中で「そうそうこれこれこれ!」って感じだったのはYEBISU ART LABO FOR BOOKS、Irregular Rhythm Assylum、タコシェ、Lilmagによる「Zine & Minikomiレビュー」およびばるぼらさんによるストレンジ古雑誌紹介、それと写真家・平野太呂のジンの履歴書。最後のは写真家のジンなので「字が読みたいんじゃねえのかよ!」って思うかもしれないけど、「コピーでぱぱっと作って友達と交換したりするが楽しい!」っていうスタンスに共感。まあ載ってる写真がOAC(なつかしい!)とかBREAKfASTとかだったりするっていうのもあるんだけど。
■でもまあ、なんか最近は会社やめても本は作れそうだなあという気分になってきててそういう意味では隅っこを読めばそれなりに元気の出ることも書いてあったんじゃないかね。
STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2008年 07月号 [雑誌] Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 12:34 | コメント (2) | トラックバック
2008年06月26日
【メモ】買う予定の新刊、行く予定のイベントなど
■気がつけば以下の2冊は今日が発売日じゃなかったっけか!買わなきゃだー
VOL 03 萱野稔人 高祖岩三郎 酒井隆史 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
コーナー Musics DVD付 大友 良英 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
VOLはG8に合わせての緊急発売、って感じなのかね。最近はZine版の「VOL Zine」というのも作っていて、現在05号まで出ている模様。IRAで売ってるのを見たことあるので存在は知ってたんだけど、PDFのフリーダウンロードもしてたんですな。「製作用」のPDFを両面印刷して自分で折って綴じればちゃんとZineになる!何気にこれっていいかも!
そして大友さんの新刊はもうほんとに待ちに待ったとしか言いようがない。ガツンとDVDとかもついて、待った甲斐のあるものになっているかと思われますよ。手に取るのがほんとうに楽しみだ。
■んで、来週はG8に向けてこんなものが↓。いくつか行ってみると思います。
◎G8対抗国際フォーラム http://www.counterg8forum.org
今年、7月7日から9日まで、北海道・洞爺湖で、G8サミットが開催されます。現在、政府やマスメディアによるキャンペーンが盛んに行われていますが、一方で、G8が押し進めるグローバリゼーションに反対する市民団体、NGO、NPOなどのグループやネットワークによって、様々な対抗運動の枠組みが作られています。
こうした現象は、日本の国内にとどまらず、1999年のシアトル、2001年のジェノバから引き継がれるグローバル・ジャスティス・ムーブメントの世界的な潮流だと言えます。
私たちは、こうした世界的な状況に、政治的、社会的、文化的、または理論的に呼応する形で、国内外からの参加者と集まり、大学という公共空間を中心に、国際的な対抗フォーラムを開催したいと考えています。
★6月30日(月)13:00~17:00 中央大学駿河台記念館/18:30~20:30 明治大学リバティホール(リバティタワー1F)
★7月1日(火)18:30~20:30 明治大学リバティタワー
※フォーラムは、メイン・フォーラムと、パネル・ディスカッションで構成されています。
※メインフォーラムのみ、資料代として500円をいただきます。
※中央大学駿河台記念館および明治大学リバティタワーはともにJR御茶ノ水駅より徒歩5分。
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◆メイン・フォーラム:グローバリゼーションと対抗理論の可能性
日時:6月30日(月)
場所:明治大学リバティホール(リバティタワー1F)
司会:鵜飼哲(一橋大学、フランス文学・思想)
提題:足立眞理子(お茶の水女子大学、経済学)、ジョン・ホロウェイ(プエブラ自治大学、国家理論)
応答者:マイケル・ハート(デューク大学、政治哲学)、岩崎稔(東京外国語大学、政治思想)
G8をあたかも有意味な政治日程であるかのように押し出すために、支配的なメディアからは、この世界ばかりが唯一ありうる現実態であるかのような言説が、かつてない規模で垂れ流されている。だが、そもそもG8は非公式かつ恣意的な会合にすぎず、国際社会における正当な代表性など、いかなる意味においても備えてはいない。G8は、グローバルな困窮と悪夢の引き金とはなっても、現にある問題を何一つまともに解決することはない。そのようなG8の会合が、警察的な排除、監視、抑圧を通して、世界中の無数の抵抗と創意を窒息させようとしているのである。
わたしたちは、このように露呈している底なしの不正と不平等の世界を、だが、どのように適切に分節化しなおすことができるのだろうか。「G8対抗国際フォーラム」の《メインフォーラム》では、フェミニストの経済学者である足立眞理子が、「再生産領域のグローバル化」という現下の事態を切り口として、資本主義と古き社会主義の強固な前提であった賃労働そのものが、いまやメルトダウンしようとしている事態を解明するだろう。また、「権力を取らないで世界を変えること」を構想するジョン・ホロウェイは、来日する多くの知識人を代表して、不正で不平等な社会に対する具体的経験を伴った「叫び」から始まる、あらたな変革のイメージを提示するだろう。そのふたつの報告を受けて、『<帝国>』の共著者マイケル・ハートと、今回のフォーラムを支えてきたフランス文学者・鵜飼哲や政治思想家・岩崎稔たちが、ぎりぎりまで議論を押し広げ、この世界をいまとは別様に把握する対抗的な構想力の可能性を模索する。
対抗理論への問いが、さらに多様な実践を作り出し、さらに豊かな連帯を作り出すことを確信して、友人たちよ、すべてのパネルでの激論と交流を経て、このメインフォーラムの討議の輪のなかに合流してもらいたい。
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◆パネル・ディスカッション
6月30日(月) 中央大学駿河台記念館 13:00-15:00
★パブリックかコモンか?――サミット体制と明日の条件なき大学 @560
大学は資本や国家といかなる関係を切り結ぶべきなのか?かつてのデリダのように、われわれもサミット体制に抗する「条件なき大学」を語ることができるのだろうか?もしそうであるとすれば、パブリックな討議空間である以上に、学生と教員が共に生を営む場として、いかなる群集状態が想い描かれるべきなのだろうか? G8大学サミット開催と敵対しつつ、コモンとしての大学への展望を考えてみたい。
パネラー:西山雄二(東京大学、ARESER:高等教育と研究の現在を考える会)、大野英士(首都圏大学非常勤講師組合)、世取山洋介(新潟大学、DIC日本支部事務局長)、コ・ビョンゴン(研究空間スユ+ノモ)
司会:白石嘉治(上智大学)
★「ゾンビの国」で考える連帯の条件――グローバル・ジャスティス運動、固有性、マルチチュード @570
映画『ランド・オブ・ザ・デッド』(2005)では「ゾンビ」と「貧者」、つまり排除された者同士が闘っている。事情は日本でも世界でも同じだ。排除された者(ワーキングプアや貧困国)と搾取される者(「名ばかり」正社員や「名ばかり」先進国)が競わされる。運動の実践や日常の搾取の経験から「ゾンビ」と「貧者」の連帯の可能性を考えたい。
パネラー:デイヴ・エデン(オーストラリア国立大学)、ハリー・ハルピン(エジンバラ大学)、ブランドン・ジョーダン(映像作家)
司会:渋谷望(千葉大学)
★自律メディアは増殖する! @680
わたしたちの最も内密なはずの知覚や感情もすみずみまで管理しようともくろみ、「世界」を捏造しつづけるマスメディア。この世界を「売り上げ」によって価値評定することで「多数派」の幻想を肥大化させ、「世界」を相対化しそこから逃れる道を封じてまわる、マスメディアの有機的知識人たち。ここではフランスのポスト構造主義とニューヨークの実践、アメリカのマイナー文学や思想とを、ラジカルに衝突させつづけ、対抗グローバリゼーションにいたる理論的・実践的地場をいち早く 描いてきたニューヨークの独立出版社Autonomediaのジム・フレミングを囲み、日本で今繰り拡げられている、刺激的な実験をぶつけてみたい。
パネラー:ジム・フレミング(Autonomedia)、成田圭祐 (Irregular Rhythm Asylum)、佐藤由美子(トランジスター・ プレス)、加藤賢一(気流舎)
司会:酒井隆史(大阪府立大学)
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6月30日(月) 中央大学駿河台記念館 15:00-17:00
★プレカリティは創造する @560
現代資本主義の下、われわれは不安定を生きており、それに対応可能であることが存在の条件にすらなっている。この不安定性をみずからのものとし、それをより自由なものへと転じさせることはできないのか。そしてそれを新たな構想へと接続することだって可能なのではないだろうか。プレカリティ――以上の問題関心をもちつつ、本セッションでは、その展望を各パネラーとともに探ることとしたい。
パネラー:マウリツィオ・ラッツァラート(社会学者/哲学者)、ダイアン・クラウテマー(IWW)、ブノワ・ユージェーヌ(NO VOX)、千々岩弦(フリーター全般労組)
司会:入江公康(社会学/労働運動史)
★反資本主義のための資本主義論 @570
真に有効な反資本主義運動を展開するために必要な現代資本主義の理解とはどのようなものか。「価値」、「本源的蓄積」、「フェティシズム」、「生産/再生産」、「賃労働/非賃労働」といったさまざまな古典的概念を時間論(死んだ時間と生きた時間との闘い)や身体論(規律化とそれへの抵抗)として捉え返し、その現在的意義を考えてみたい。私たち自身の価値を創造する身体と資本の価値増殖のプロセスに組み込まれた身体とのあいだで日々繰り広げられる「階級闘争」を表現し進展させるために必要な概念とはどのようなものか。
パネラー:マッシモ・デ・アンジェリス(東ロンドン大学)、ハリー・ハルトゥニアン(ニューヨーク大学)、イ・ジンギョン(研究空間スユ+ノモ)
司会:田崎英明(立教大学)
★戦術の多様性をめぐって @680
戦術にまつわる思想は、運動体の性質を決定する上で、核的な部分を占めている。当パネルでは、東京に集合した各地の活動家数人に、それぞれの活動内容と戦術的思考について発表してもらい、観客を含めた広い交流/交換の場としたい。ここでは昨今主要な潮流となっている「戦術の多様性」の有効性が論議の焦点となる。
パネラー:デヴィッドソルニット(アーティスト)、マリーナ・シトリン(サンフランシスコ・ニューカレッジ)、リサ・フィシアン(戦術家)他
司会:高祖岩三郎(Autonomedia、VOL編集委員)
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7月1日(火) 明治大学リバティタワー12階 18:30-20:30
★地球的組織の未来 @1121
当パネルでは、アンドレ・グルバチッチ(バルカン半島)、デヴィッド・グレーバー(北米)、平沢剛(東アジア)など世界各地を出自とする活動家的知識人を迎えて、未来の地球的組織化の可能性について論議する。それぞれの立場/経験に基づいて、過去の国際連帯/国際的組織化のありかたを分析し、将来可能な形態を提起してもらう。
パネラー:アンドレ・グルバチッチ(サンフランシスコ・ニューカレッジ)、デヴィッド・グレーバー(ロンドン大学ゴールドスミス校)、平沢剛(明治学院大学)
司会:高祖岩三郎(Autonomedia、VOL編集委員)
★地下大学東京――秋葉原で起きたこと―― @1122
6月8日の白昼、秋葉原中央通りの路上ではいったい何が起きたのか? 120秒の間に、残酷な形で交差したものは何だったのか? 青森に生まれ、各地の派遣「飯場」を流れた末に、静岡からあの街に現れたKは、ちょうど40年前に4人を射殺し、遂に刑死したNを呼び戻した。彼の『無知の涙』が読まれているという。――あの場所にやって来たKと、そこで殺された人々に集中したあらゆる動線と、そこから伸びていくものについて徹底討論したい。
パネラー:鎌田慧(ジャーナリスト/作家) 他
司会:平井玄(音楽批評)
★反戦反基地――軍事化に抵抗する @1127
本セッションでは、まさに今起こっている軍事化を理解し、その軍事化への抵抗運動を、スピーカー、参加者の皆さんと共有していきたい。そして、それを共有するだけではなく、より有効的な抵抗運動を、構築していきたい。
パネラー:梅林宏道(NPO 法人ピースデポ代表)、キム・ディオン(研究空間スユ+ノモ)、抵抗運動に関わっている人
司会:伊佐由貴(一橋大学)
★アウトノミアとメディア運動 @1128
アウトノミア運動のスポークスマンとして知られ、イタリア初の自由ラジオ「アリーチェ」以来、ガタリとの協働を経て最近のテレストリートに至るまで、つねに現代メディアを刺激してきた実践的思想家フランコ・ベラルディ(bifo)。ラジオ・アーティスト/理論家として、世界のメディア運動に多大な影響を与える粉川哲夫との対話。
パネラー:フランコ・ベラルディ(メディア理論/活動家)×粉川哲夫(ラジオアーティスト、メディア批評家)
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問い合わせ:G8対抗国際フォーラム事務局 Tel:080-5539-6059 Fax:042-330-5406 Email : info@counterg8forum.org
カンパ・協力金の振り込み先:郵便口座00100-9-357506番 口座名称:G8対抗国際フォーラム実行委員会
投稿者 junne : 15:59 | コメント (0) | トラックバック
2008年06月24日
はじめてのDiY
■こないだの『貧乏人の逆襲!』ともちょっとかぶる内容なのだが、こちらはより包括的かつ理論的(だけど人文/学術書的な硬い本ではない。中学生でも読めると思う)。冒頭に
ふと見わたすと、まわりに、おもしろいこと、おもしろいひと、おもしろい場所がじわじわと増殖しているような気がします。
この、おもしろいこと、おもしろいひと、おもしろい場所はどうもこれまでとは全然違ったところから生まれているようです。
七〇年代の消費社会、八〇年代のバブル経済、そして九〇年代の「失われた十年」とは異なる、新しいポジティヴな生活と文化が登場しつつあるのです。
とあるけどこれについてはぼくも割と同感で、ここ2,3年で急激にこうした活動が増えているなーという印象。
■個人的にも注目していた流れではあるので情報としてあまり目新しいことは書いてなかったんだけど、まあこういうのは受身でいるより自分もやったほうが絶対楽しいので、ガンガン時流に乗っていくといいと思うな。元気の出る本であることは確かです。あと、さすがに学者の書いた本なので海外の事例や参考文献とかも載ってるのが嬉しい。
はじめてのDIY 何でもお金で買えると思うなよ! (P-Vine BOOks) 毛利嘉孝 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年06月20日
貧乏人の逆襲!―タダで生きる方法
■なぜか周囲の一部で局地的に異常な盛り上がりを見せている新刊。高円寺素人の乱五号店(リサイクルショップ)の店長であり、「家賃をタダにしろ」「俺の自転車を返せ」といった一風変わったデモの首謀者であり、昨年の杉並区議選でも話題をさらった(『いるべき場所 』にも迫真の描写があるので読むといいぜ!)著者による初の単著。滅茶苦茶面白くて、ありがちな表現だが電車の中で笑いをこらえるのに苦労したよ!
■貧乏生活マニュアルみたいな本はけっこうあって、だいたいが節約の仕方が書いてあるわけなんだけど、本書はそういうしみったれた話とはちょっと違う。いちおう衣食住および移動手段などについてそれぞれについて金をかけない作戦がいろいろと提示されてはいるのだが、ヒッチハイクや野宿のコツ、地域(商店街とか)をまきこめ!等々、単に金をかけないのではなく、如何に人と絡んで「金持ち連中」や「金もうけ企業」に対抗していくかという視点が通底している。
■で、貧乏生活術の話しは最初の一章だけ。あとは著者が過去に実践した作戦の数々の紹介など、より積極的に打って出ることを目指した内容になっている。ていうかまあとにかく威勢のいい文体が楽しくてグイグイ読んじゃう一冊だ。元気が出るという意味ではこれほど元気の出る本もそうそうないと思う。
貧乏人の逆襲!―タダで生きる方法 松本 哉 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年06月17日
少女と少年と大人のための漫画読本 2007-2008
■マンガってここ数年ほんとに読まなくなっちゃってるんですよ。面白いんだろうなーと思いつつなかなか手が出ないという状況で、結局ドカベンを時々立ち読みしてるだけという有様。
■そんな矢先に、いつもZineを買っているLilmagの店主・野中モモさんが満を持して自身のZineをドロップ。これがもう待ってましたというものなのである。内容としてはモモさんが以前に「流行通信」で連載していたマンガレビューと、「2007年の年間ベスト&2008年に期待される作家・作品」というアンケートが中心。編者が日ごろ情報源としてアテにしている人たちからアンケートを取っているということなので偏りはまああるとしても、一般の年間ベスト10とかよりはアテになりそうな気がするというもんだ。
■ということで読んで早速マンガ買っちゃったよ(いましろたかし『化け猫あんずちゃん』→最高)。ほかにもいくつか(いくつも)気になるものがあるので順次読んでいきたい。つか、ほんとここ数年マンガっていうのは自分の中でかなり課題だったのよ。
■しかしマンガって場所取るからなあ。「ジョジョ読みてえ!」って思ってもなかなかふんぎりがつかない部分もありますよね。いや、マンガ喫茶にあるようなものはそれでもいいのかもだけど、少なくともここで紹介されてるものの多くはマン喫で見つけるのは難しそうだ(ていうか、実際そう書いてあった)。と思ってたらちゃんと貸し本屋さんもアンケートに登場してきてて、これが近所だったりするので是非利用していきたい。あと貸し借りとかはマンガに限らずちょっと試みていきたいかも。ブクログとか使ってなんとかできないかね。
■ブクログといえば最近出てきた「読書メーター」っていうウェブサービスに登録してみた。読んだ本を記録していくだけのシンプルなサイト。読書量がグラフ化して表示されるのと、同じ本を読んだ人が探せるので読書傾向の似た人を見つけとくと参考になるかも。
■なんか関係ない話になってきましたが、とにかく既存のベスト10とかに不満のある人とかは一度このZineを手にとってみてはいかがかと。万人にお薦めではないかもだけど、ある種の傾向があう人にとっては大いに参考になるかと思われます。
(追記)
日ごろ扱ってる商品は切り貼りコピーホチキズ製本みたいなのが多いけど、自分で作るときはやっぱりビシっと作るのね、と思ったりもしたわけですが(装丁はフランスのペーパーバックみたいだし)、付録はちゃんと切り貼りコピーホチキス製本だったのでちょっと嬉しい。
化け猫あんずちゃん (KCデラックス) いましろ たかし Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年05月27日
南博『白鍵と黒鍵の間に』
■ジャズ・ピアニストの南博さんが時々サイトで書いているウェブ日記は、南さんならではのダンディズムと独特のユーモアが好きで昔から愛読していたのだけど、ついに本が出たので喜び勇んで購入した。サイトでも断片的に紹介されていたバークリー留学前のエピソードを集めたエッセイで、ひさびさに読む前から「面白いに決まってる!」と思える本。
■クラシック・ピアノの勉強をしているひとりの高校生がジャズと出会い、小岩のキャバレーで演奏をするようになり、やがて銀座のクラブで演奏するようになる。たかだか20年くらい前、ちょうどバブルの時代の話。ハコバン、ホステス、ヤクザ等々、それほど昔の話とは思えない癖のある人々が描かれる。菊地さんがオビで「この本は、僕のどの本より面白いです」と凄いことを書いているが、実際滅茶苦茶面白くて半日で一気に読んでしまいましたよ。
白鍵と黒鍵の間に―ピアニスト・エレジー銀座編 南 博 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年05月26日
吉田豪『バンドライフ』
■オススメです!
■インタビューの達人として有名な吉田豪氏による、バンドブームを作ったアーティストたちへのインタビュー集。インタビュー対象は森若香織、氏神一番、関口誠人、ダイヤモンドユカイ、水戸華之介、中山加奈子、阿部義晴、いまみちともたか、BAKI、石川浩司、サンプラザ中野、サエキけんぞう、NAOKI、KERA、仲野茂、MAGUMI、KENZI、イノウエアツシ、DYNAMITE TOMMY、大槻ケンジの20名。基本的には生い立ちから現在までのライフストーリーで、収入の話しとか結構突っ込んだ話にまで至っているものが多い。
■バービーボーイズの成り立ちが結構意外だったり、アナーキーのメンバーの複雑な間柄だとか、いろいろ読みどころはあるのだけど、リアルタイムでは興味がなかったりむしろ嫌いだったりしたひとも含めてみんな「現在の姿」がすごくかっこいい。特に読み応えがあるのは他の面々の倍の文字数を割いたナオキ(ラフィン、コブラ、SA)へのインタビュー。ここに載ってる話とカブるところもあるけど、必読だと思います。ほんとかっこいいなこの人。
バンドライフ―バンドマン20人の音楽人生劇場独白インタビュー集 吉田 豪 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年04月28日
ロイド・ブラッドリー『ベース・カルチャー』
■ジャマイカ音楽の歴史を、背景となる政治経済事情もしっかりと踏まえて描いた大著。個人的にここ数年レゲエとかちょこちょこと聞くようになってたので、こういう本がまさにほしかったのだ。あとがきで訳者も指摘してるように、ダンスホールレゲエについては端的に著者が嫌いだという理由からあまり紙幅が割かれておらず評価も低いのだけど、そのあたりのバイアスや事実誤認については訳注なんかでかなりカバーされていて、すごいいい仕事してるなーと思った。見習いたい。
ベース・カルチャー レゲエ~ジャマイカン・ミュージック ロイド ブラッドリー 高橋 瑞穂 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年04月23日
円城塔『Boy's Surface』
■『Self-Refrence Engine』に続く、円城塔のハヤカワSFシリーズJコレクション第2弾。SFマガジンに発表されたものを中心に書きおろしを加えた短編集。いずれも数学的構造とかそういうのを主人公におき(よくわかってないです、すいません)、でもなんかラブストーリーっぽくあるという、スペキュラティヴ・フィクション集だ。『オブ・ザ・ベースボール』にくらべてもだいぶハードルが高いと思う。数学SFというと、個人的に思い出すのはラッカーとかなんだけど、調べてみたらインタビューで「もう少し踏み込んでくれれば面白いのに」とか言ってますね。実際ラッカーよりかなり「踏み込んだ」作風とはいえるけど、随所で笑えるところもあったりもして楽しく読んだ。
Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) 円城 塔 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
オブ・ザ・ベースボール 円城 塔 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) 円城 塔 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年04月02日
円城塔『オブ・ザ・ベースボール』
■昨年、早川より『Self-Reference Engine』(面白い!)で鮮烈なデビューをした作家の、こちらは文学界新人賞受賞作(タイトル作)を含む2つの短編を収めた本。おもしろいわー。
■タイトル作は、ある田舎町に一年に一度くらい人が降ってくるという設定。で、レスキュー隊が組織され、語り手はその一員なのだが、そのレスキュー隊員に配られているのがユニフォームとバット。で、みな日々バッティング練習をしていると。それだけで何だそりゃって話なのだが、そういう話が断章形式で綴られていて、印象としてはガルシア=マルケス・ミーツ・ヒバリミュージックって感じの奇妙でとぼけたユーモアがあり、それでいて何らかの方法意識が感じられるというもの。
■いっしょに収録された「つぎの著者につづく」は、簡単に言っちゃえば自分の作品がRという作家の剽窃であると言われた作家が、その疑いを晴らすべくRについて調べていくというような話なのだが、膨大なリファレンスつきでちょっとヌーヴォーロマン感のある作品となっている。こっちも面白い。
オブ・ザ・ベースボール 円城 塔 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) 円城 塔 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年04月01日
買わなきゃいけない本メモ
■最近本はもっぱら図書館なのだが、以下の本は買わなきゃなのだ。ていうかむしろまだ買ってねえのかよ!って感じの本ばっかなのだが、超金欠でいつ買えるのか全然わかりません。不義理で申し訳ない。どれも読んでないけど面白いに決まってる!
萌える日本文学 堀越 英美 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
大谷能生のフランス革命 大谷 能生 門松 宏明 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究 菊地 成孔 大谷 能生 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
服は何故音楽を必要とするのか?―「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽達について 菊地 成孔 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年03月27日
高橋悠治『言葉をもって音をたちきれ』
■近著を読む前に、『たたかう音楽』と一緒に図書館で借りてきた本を。こちらのほうがさらに前に書かれたもので、72~74年くらいの間に書かれた文章が集められている。これが最初の単著とのこと。
■音楽にまつわる様々な制度(社会的・文化的な意味でも美学的な意味でも)が、やはり舌鋒鋭く批判される。そしてその問題意識はおそらくその後より社会運動的な内容となった『たたかう音楽』にも通底しているものだ。で、最近の「音響」とか「音響的即興」にも通じるような問題意識もここで既に出てきていたりして、非常に興味深い。
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今村仁司『貨幣とは何だろうか』
■94年刊。ソ連をはじめとする共産圏の崩壊がまだ記憶に新しかった時期にかかれたものだな、というのが随所からうかがえる。「貨幣とは何か」ということについて、経済学的見地ではなく哲学的見地から考えた本。
■貨幣の持つ「媒介」という役割は人間にとって根源的なもので、それは「文字」も同様であるとし、ルソーに代表される西洋哲学の文字批判・貨幣批判=「媒介」批判を批判する。媒介物をなくすことは人の持つ暴力性が剥き出しになることにつながり、その例がスターリンやポル・ポトだ、という。なんか飛躍がある気もするが。ていうか議論の前提として提示される「貨幣と『死の観念』は関係がある」という考え方がそもそもいまいちピンと来ないというか、よくわからない。
■ともあれ、3章および4章で書かれている、ゲーテ『親和力』とジッド『贋金つかい』を「貨幣小説」として読む、という試みは大変面白かった。文芸批評として普通に面白いと思う。
貨幣とは何だろうか (ちくま新書) 今村 仁司 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年03月24日
高橋悠治『たたかう音楽』(晶文社)
■76~77年に集中的に書かれた文章を集めたもの。タイのクーデターや在日朝鮮人の運動などと絡めつつ、運動の場において歌、音楽が力を持ちうるとしたらどういうものなのか。そしてそういった力を持つに至っていない日本や欧米の文化状況を舌鋒鋭く批判する。
■いろんな意味できわめて70年代的な文章だと思うのだけど、では現在この問題意識はどのようになっているのか。実は現在においても全然通用する話をしてたりもするように思えるだけに、今の著者の考えも知りたい気がする(ので、近著も読んでみようと思った)。
■そして、「運動と音楽」「運動と歌」という話でいうと、「言うこときくよな奴らじゃないぞ」は実にエポックメイキングな曲だったんじゃないかなあと思ったりしましたよ。
■この本自体は現在は絶版になってると思うけど、たぶん平凡社ライブラリーのコレクションに入ってるものが結構あるんじゃないかと。
高橋悠治|コレクション1970年代 (平凡社ライブラリー (506)) 高橋 悠治 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年03月21日
佐藤優『国家論 日本社会をどう強化するか』
■年末年始に続けざまに読んだ萱野稔人の著作の数々との関連性や、いとうせいこうが絶賛してることもあって興味を持っていた本。なるほどこれは面白い。
■基本的に著者の前提として国家とは基本的に悪であるという考えがある。暴力をコントロールし、官僚を通じて収奪を行うのが国家である。この辺の認識は『カネと暴力の系譜学』なんかとも通じるものがある。
■そこで国家の暴走を防ぐにはどうしたらいいのか、という話が本書では展開される。簡単に言っちゃうと「国家」と「社会」は別物なので、「社会」を強化することで「国家」を牽制しましょうっていうことだと思うのだけど、そういう話を進めるにあたって参照するのが前半ではマルクス『資本論』および宇野弘蔵、後半では柄谷行人のアソシエーション論およびカール・バルトの神学。特に後半やや観念的な話になりすぎてね?という気もしなくもないが、それでも随所にアクチュアルなたとえ話が入ってくることからある程度具体性を持って読むことはできると思う。これはねー、結構な収穫だと思うな。
国家論―日本社会をどう強化するか (NHKブックス 1100) 佐藤 優 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年03月18日
ジャック・ケルアック『オン・ザ・ロード』
■『路上』というタイトルで出ていた旧訳(河出文庫版)を読んだのはたしか学生時代。正直そのときはピンと来なかったというか、「タルいなあ」という印象しか残ってない。というかそもそも印象に残ってないかも。そのまま「ケルアックは退屈」というイメージが自分の中でついてしまった。
■が、各方面で今回の青山南による新訳『オン・ザ・ロード』が絶賛されているので再挑戦。そしたらこれがすげえ面白いの!まず全然印象が違うのが、ディーンが車をかっ飛ばす場面の疾走感。とにかくこんなにスピード感のある小説だとは全然思わなかった。
■そしてビバップ時代のジャズの現場を捉えた熱気あふれる描写。これはまあ、旧訳初読時にはあんま興味なかったから印象に残らなかったという可能性もあるけど。場末のクラブで若いミュージシャンたちがすげえぶっ飛んだビバップを演奏している様がすごく活き活きと描かれている。これだけでも読む価値はあると思う。
オン・ザ・ロード (世界文学全集 1-1) (世界文学全集 1-1) (世界文学全集 1-1) ジャック・ケルアック 青山南 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年03月01日
マイク・デイヴィス『自動車爆弾の歴史』
■同じ著者の『要塞都市LA』『感染爆発―鳥インフルエンザの脅威』と面白かったので続けて読んだ『自動車爆弾の歴史』。タイトルどおり、自動車などの乗り物に爆弾を積むという形のテロリズムが20世紀に生まれ、それがどのように発展して今に至るのかというのを詳細にまとめた本。
■強硬なシオニストたちがイスラエル建国前後に採用した戦術がパレスチナゲリラによって発展的に継承されてたり、敵味方を超えてテクノロジー(爆薬の種類とか)と戦術(車の種類とかターゲッティングとか)が受け継がれ発展していく様子というのはなかなかすげえもんだなあと思う。あと、それに対する政府等の国家機関や大企業といった、自動車爆弾攻撃の対象にされる側にいまひとつ危機感や認識が足りてなかったり、対策がピントはずれだったりっていうのを指摘してまわる語り口は『感染爆発』とも非常に近いものがあって、これっていうのはもうこの著者のスタイルなんだなあと思った。
自動車爆弾の歴史 マイク・デイヴィス 金田 智之 比嘉 徹徳 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年02月22日
En-taxi 19号
■先日阿佐ヶ谷ロフトで行われた仲俣さんのイベントは大変盛況でびっくりしたわけなんだけど(トークイベントってはやってますよねー←棒読み)、そんときに聞いたEn-taxi編集長の話が大変面白かった(他の人の話も面白かったけどね)。
■で、その時に話題になった記事のひとつがこの号の巻頭に載っているヤンキースタジアム訪問の記事。単に野球観にいっただけなのにそれが仕事になるってのはうらやましいなあという話なんだけど(笑)、それより何よりこの号で注目なのはミュージシャンによる小説2本だろう。
■ECD「酩酊」は100枚一挙掲載。アル中時代のことを描いた私小説(『失点イン・ザ・パーク』は入院したとこから始まるから、その前日談ってことになるのかな)。一応登場人物は仮名になってるが、まあすぐわかります。ていうか全部『いるべき場所』のほうでは実名になってるからね(笑)。ぐいぐい読んじゃいました。そろそろ本にならないかなあ。
■そして大江慎也の「気違いピエロ」。前号に載ってたやつもかなりヤバいオーラを発していたが、今回も実にヤバい。基本的には思い出を断片的につらねているだけなのだが、なんかこうつながりとかがいちいちおかしいんだよね。小説になっているのかどうかも怪しいが、ついつい読んでしまう。最新号の20号でも書いてる(なんかモメたという話だが)はずなのでそれも近々読もうと思った。
■あと福田和也の原稿でストゥージズの話が出てきてますが、「I Wanna Be Your Dog」のギターはジェームズ・ウィリアムソンじゃなくてロン・アシュトンですよ!(それともライブ盤の話をしてるのかね)
en-taxi No.19 (AUTUMN 2007) (19) (ODAIBA MOOK) 福田 和也 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年02月13日
Sweet Dreams issue 1
■昨年創刊されたZine。これは超おすすめですよ!
■基本的には音楽雑誌なんだろうけど、音楽の記事にしてからが超強力なJANDEK特集だったり、ほかにも短編小説の翻訳(これがまた気の利いた作家を選んでくるんだよねー)や写真家が取り上げられてたり。「音楽」がベースになった総合カルチャー誌、みたいなものには目がない(もっと出てきてもいいよねえ)ので非常に気に入りました。次号が待たれる!
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2008年02月04日
マイク・デイヴィス『感染爆発―鳥インフルエンザの脅威』
■実のところトリインフルエンザについて特に関心があったわけではない。そんならなんでこんな本を読んだのかというと、この著者の『要塞都市LA』が超面白かったから。で、本書も『要塞都市LA』にくらべるとややライトだが期待にたがわず面白い。
■インフルエンザについての概説、過去の世界的大流行(パンデミック)の経緯、そして現在にいたる世界各国の対策状況(というか、対策できていない状況)、といった内容。インフルエンザウィルスがいかに強力か。利益重視のグローバル製薬会社、対応の遅い各国政府、そして最貧国のスラムが流行の温床となっていく仕組みを告発する。
■『自動車爆弾の歴史』も図書館に頼んであるので早く読みたいなーと思いました。
感染爆発―鳥インフルエンザの脅威 マイク デイヴィス Mike Davis 柴田 裕之 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年01月26日
萱野稔人『国家とはなにか』『カネと暴力の系譜学』『権力の読みかた』
■年末から立て続けに萱野稔人の著作を読んだ。
■『国家とはなにか』では国家=暴力装置である、というテーゼを提示。国家とは合法的に暴力を行使できる機関であると論じられる。
■続く『カネと暴力の系譜学』では卓越した暴力を背景として富を収奪するという国家の基本的なありかた(税とはヤクザのみかじめ料と同じである)を説明。前著と重なる部分も多いが、ヤクザ組織などの非公式な暴力組織を国家がどのように利用しているかといった話は興味深い。
■最新作の『権力の読みかた』は副題にもあるように「状況」と「理論」のパートに分かれている。特に「状況」のパートは前2作で展開された理論をふまえて現在の政治・社会状況(ナショナリズム、対テロ戦争、ポピュリズム政治等々)を分析したもので大変面白い。
■どの本についても言えるのは、とにかく文章が明晰であるということ。引用は多いがいたずらにペダンティックになることがなく、読んでてしっかり論旨を追うことができる。こういうの、実はかなり稀だと思います。
■それで思い出したんだけど、今こんな連載をしてるのね。後で読もう(メモ)→「交差する領域」
『国家とはなにか』 萱野 稔人 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
カネと暴力の系譜学 (シリーズ・道徳の系譜) 萱野 稔人 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
権力の読みかた―状況と理論 萱野 稔人 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2008年01月24日
イルクーツク2
■「goningumi」(柴崎友香 長嶋有 名久井直子 福永信 法貴信也)による文芸同人誌の第二号(第一号は「メルボルン1」)。まず目を惹くのが造本。普通に折って製本するのではなく、一枚一枚を重ねてそれを糸で綴じるという形(と、いう説明で合ってるのかな?)。表紙にはかなり厚めの紙が使われ、表紙にも本文にもさまざまな工夫が施されている。
■中身については、同人の作品もさることながらゲスト?の作品がまたいちいち面白い(いしいしんじの「塩浄瑠璃」はかなりブッ飛ぶこと請け合いです。すげえ)。執筆者それぞれが何らかの「新しさ」を共有しているような気がする。2100円という値段は高めに思えるかもしれないけど、ぼくは全然損じゃないと思うね。
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2008年01月16日
若島正『ロリータ、ロリータ、ロリータ』
■連休中(Filthのライブ後)に風邪を引き、布団の中で読み終えた一冊。いやー、これは面白い!ナボコフを読む、『ロリータ』を読むとはどういうことなのか、テクストのほんの一部を抜き出して様々な角度から読み方の例を示す。テクストに縦横無尽に織り込まれた仕掛けがあざやかな手つきで明らかにされてゆく様は圧巻であると同時に、おそらくそれですらも決して「すべて」ではないのだろうということが予感され、著者も言うように「『ロリータ』を読むという行為」には終わりはないという実感がもたらされるとともに、「何はともあれもう一回読もう!」という気にさせられる。いやー小説を読むってのは楽しいよなあ!
ロリータ、ロリータ、ロリータ 若島 正 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ロリータ (新潮文庫) ウラジーミル ナボコフ Vladimir Nabokov 若島 正 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2007年11月12日
ECD『いるべき場所』
■ここ一ヶ月くらいつきっきりで作業してた本がもうすぐ発売になります。
いるべき場所 ECD Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■ECDの著書というと、これまで出たものは『ECDIARY』と『失点イン・ザ・パーク』。前者はタイトル通りの日記、後者はアル中治療時代のことを描いた私小説。それ以外に「新潮」や「En-Taxi」に掲載された短編もだいたい自伝的な色彩の強い私小説だ。
■で、今回はオビにも大きく「ECDの音楽史」と謳っているように、音楽を通して半生を振り返ってもらう内容になっている。過去に「Recorder」とか「QJ」とかで「日本語ラップシーンを振り返る」とか、「東京のパンクシーンを振り返る」みたいな記事はあったけれど、今回は生まれてからつい最近まで。
生まれて間もない頃の記憶、ロック少年時代、劇団で活動しつつパンクに出会った時期、そしてヒップホップと出会いECDとしてデビュー、さんピンCAMPなどで日本語ラップシーンの基礎を築きつつも、そこにも違和感を感じ新たな場所を捜し求める。そんな時々で目撃したシーンの数々を綴った内容で、ある種「東京の同時代カルチャー史」ともいえるような一冊になっていると思う。
ということで、ECDファンはもちろんのこと、それ以外にも様々な人に読んでもらいたいし、読んでもらえる本ではないかと。乞うご期待!
■そしてその発売を記念して12/7にはアップリンクファクトリーさんで記念イベントを行います。著者秘蔵の貴重な映像、未発表音源なんかを流しつつのトークで、ゲストには野田努さんをお招きしますよ!さらに当日ご来場の方70名先着で、著者作成のCD-Rプレゼントも行います。こちらの内容は当日までのお楽しみ!
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2007年10月14日
内田樹『村上春樹にご用心』
■内田樹の本、以前は出れば必ず買っていたのだけれど、最近は正直ぜんぜんフォローできていない。本出しすぎ!っていうのもあるし、ちょっと政治的に首をかしげる箇所が多くなってきたせいもある。ともあれ久々に購入した最新刊。
■タイトルどおり、村上春樹に関するテキストを集めたもの。多くは初出がブログだが、一部雑誌等に発表されたものもある。ものによってはかなり加筆が加えられている模様。「村上春樹はなぜ世界中で読まれるようになったのか」というのが大きなテーマであり、村上春樹の小説の多くに見られる物語構造を読み解くことでその答えを提示している。それ自体は面白いし「なるほど」と思う。また、その視点は他の小説を読む際にも新たな補助線というか座標軸というか、そういうのを与えてくれるものでもある。ぼくにとっては優れた批評というのは、「それによってものの見方が変わる」ような新たな座標軸を与えてくれるものだと思っているので、そういう意味では本書もすぐれた批評だと言っていいと思う。
■んだけど、なんか引っかかる点があって、それは何かというと、執拗に繰り返される「批評家」「評論家」批判なのね。村上春樹が評論家を「馬糞のようなもの」と言っているというのを嬉々として何度も引用してたり。そういう政治性がどうしても引っかかって、「スリリングな批評を読んだ!」という爽快感がだいぶ減じられてしまったのが非常に残念ではある。
■とはいえ、村上春樹の小説についての「読み」に関しては非常に面白いのは確かなので、一読をお薦めはしますよ。
村上春樹にご用心 内田 樹 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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松岡正剛『ちょっと本気な千夜千冊虎の巻―読書術免許皆伝』
■松岡正剛の「千夜千冊」といえば言わずとしれた、一日一冊本を紹介する、というのを千冊にわたって続けていた(そして現在は千冊をとっくに越えて、毎日じゃなくなったけど今でも続いている)すげえサイトである。何か調べる際にとりあえず参照することの多いサイトのひとつで、個人的にはWikipediaあたりよりも全然重宝してたりする。
■書籍化もされたのだが、こちらは大幅に加筆・再編集がほどこされ、10万円とかするようなバケモノじみたものになった。当然そんなもんは買えません(が、割と売れてるみたいね。そんなの一回作ってみてえなあ、とは思うけど)。で、本書はその書籍版「千夜千冊」について、特にお薦めの本をピックアップしたりしながら概説するというもの。インタビュー形式で読みやすいが、こちらも内容は結構濃い。本の紹介だけでもなかなかありがたいのだが、それ以外にも松岡正剛流の「読書術」について語ってるあたりが読みどころかと。身体的に読書をする、というのは今読んでる内田樹『村上春樹にご用心』でもキーワードだったりするので、併読すると意外といいかも。
■『CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ (NT2X)』でさわりだけしてたような話がもうちょっと詳しく出てきたりもする(たぶん、全集版『千夜千冊』にはもっと詳しく書いてあったりするんだろうけどね……)ので、そちらの読者にも併読推奨。たまたま手に取った本がこうやって連環していく、というのは読書の歓びですな。
ちょっと本気な千夜千冊虎の巻―読書術免許皆伝 松岡 正剛 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
村上春樹にご用心 内田 樹 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ (NT2X) 小寺 信良 津田 大介 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2007年10月10日
伊藤計劃『虐殺器官』
■早川SFシリーズ Jコレクションといえば西島大介『アトモスフィア』(上)(下)や円城塔『Self-Reference Engine』など注目作が目白押しなわけだけれど、近未来を舞台にした正統派SFの本書もこれまたえらく面白かった。
■9.11以降、先進国では個人認証の技術が進み、誰もがあらゆる個人情報を記録されている。一方、後進国では内戦などによる虐殺が横行。主人公はアメリカ軍の特殊部隊に属する軍人で、そうした虐殺の鍵を握ると思われる要人の暗殺を職業としている。そして、彼らの行く先々で姿をチラつかせる謎の男の存在が浮かび上がる……。
■セキュリティの名の下で管理されるプライバシー、軍隊や刑務所にいたるまで進む民営化など、なんとなく設定上は「ギートステイト」なんかとも重なる部分が多い。というのはやっぱSFが描く「未来」は常に「現在」を反映するものだから、なんでしょうな。
■主人公の心に圧し掛かる罪、それを投影して主人公の眼前に現われる「死者の国」、任務で訪れるたびに繰り返される地獄絵図、重いテーマを扱いつつもサスペンスフルにガンガン読ませる、非常にクオリティの高い作品かと。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) 伊藤 計劃 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2007年09月18日
【新刊】レッグス・マクニール&ジリアン・マッケイン『プリーズ・キル・ミー』予約開始
■ということで、先日ちらっとお伝えした新刊ですが、アマゾンにて予約が始まっております。どしどし予約してね!自慢じゃないけど超面白いので!
プリーズ・キル・ミー レッグス・マクニール/ジリアン・マッケイン 島田陽子 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2007年09月15日
円城塔『Self-Reference Engine』
■各方面で話題の大型新人デビュー長編。なるほどこれはすごい。「イベント」以降、時間の進み方がバラバラになってしまった世界を舞台にした短いエピソードの集積。「四次元」というのは我々三次元の存在には視覚的に想像することができないわけで、この本で実際に起こっている事態というのもうまく想像するのが大変難しい。
■が、時に衒学的に、時に思索的に、時にバカバカしくデタラメに、時に笑えて時に泣けるエピソードの数々は、理系出身者ならではのハードなSF的想像力も含めてなかなかに新人離れした筆力だと思う。こういうのが出てくるから小説は目が離せないってもんだ。
■最近、日本の音楽ってのは世界的に見てもかなり個性豊かで面白いのではなかろうかなんて思ってる(し、そう言ってるひとは少なくともぼくの周りには少なくない)のだけど、小説も案外そうかもしれない。もっと小説読まなきゃなあ。
Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) 円城 塔 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2007年09月02日
小寺信良・津田大介『CONTENT'S FUTURE』
■出てすぐ買ったのだけど、ようやく読んだ。いや、すげえ面白いっすよ、これ!
■IT系ライターの両氏が、コンテンツビジネスの最前線にいる人々と鼎談。「放送と通信の融合」を視野に入れたテレビ・ラジオ業界の展望。音楽業界を筆頭に、権利者たちの様々な思惑が交錯し行き詰まりつつある著作権制度などなど、興味深いテーマの数々。
■椎名和夫氏の章での、現在の音楽業界は老舗のガンコな蕎麦屋のようなもので、今は柔軟な二代目の登場が待たれる、なんていう発言を筆頭に、数々の提言をブチあげている津田さんの「生意気な青年」キャラっぷりがおもろいなー。トークなだけに、今まで読んだ著書とくらべて普段喋ってるときの印象に近い気がします。「Life」リスナーの津田ファンは必読ではないかと。小寺さんは年長者なせいかどちらかというと津田さんに対しては突っ込みにまわるほうが多いようだが、それでもビシっと主張するところはする。映像業界で実際に制作の現場にいたひとだけに、主張にもリアリティが感じられる。
■で、個人的な興味の対象となるのはやはり書籍の未来。鼎談の相手は松岡正剛。千夜千冊を読んでると、主に政治的なスタンスの部分でちょっと微妙だなーと思うこともあるひとなのだけれど、そうは言っても「書籍」という形態についてポジティブな発言が読めるのは嬉しい。なんだかんだでテレビなんかより未来は明るいんじゃないかとすら思える。雑誌は厳しいかもしれないけど、やっぱ本というメディアは実際完成度高いと思う(まあぼくの場合は思い入れも多分にあるのであれだけど)。
電子書籍がいまいち伸びない理由について、書籍はそれ自体がすでに充分にモバイルだ、という指摘はなるほどと思ったし、あと紙に変わる、安くて魅力的な新素材が待たれるという話なんかは結構膝を打つものがあった。そうなの、最近よく話すのだけど、著者に払う印税より印刷所に払う費用のほうが高いのとか、どうかと思うよなあ。アナログレコードからCDになって材料費が大幅に下がったというような技術革新が書籍にも起ることをせつに望みます。その際には、CDみたいに原価は下がってるのに定価は下がらず印税も上がらない、なんてことがないことも望みます。
■この本自体がクリエイティブ・コモンズ・ライセンスでのリリースであり、また鼎談の一部を映像配信したり著者たちによるネットラジオの配信が行われたりと、本から派生した「コンテンツの未来」的な試みが行われているのも興味深くかつ心強い。有言実行っていうのはなかなかできないやね。
CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ (NT2X) 小寺 信良 津田 大介 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2007年08月23日
早稲田文学
■フリーペーパー時代を経てついに早稲田文学が復活。気分も新たに創刊0号としての再出発。これがなかなかの充実ぶり。
■前と後ろ両方が表紙になった両A面形式(小説サイドと評論サイド、なのかな)。小説ではいきなり芥川賞候補作の川上未映子「わたくし率 イン 歯ー、または世界」がトップをかざる。これがいきなりかっとんだ面白さ。他にも中原昌也の「執筆委任」、鹿島田有希「美しい人」、青木淳吾「日付の数だけ言葉が」等々これ一冊でかなりお腹一杯なラインナップだ。
■一度つぶれた雑誌を立て直すというのはなかなか大変なことだと思うけど(実際、ぼくの伯父さんはそれで失敗してたりするのねw)、これだけ力の入った紙面づくりを続けてくれるのえあれば是非応援したい。
わたくし率イン歯ー、または世界 川上 未映子 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 00:49 | コメント (0) | トラックバック
2007年08月17日
ミシェル・ウエルベック『ある島の可能性』
■フランスのSF作家(なの?)による思弁SF(スペキュラティヴ・フィクションてやつですね)。「インビテーション」の三田格さんによる書評を読んで気になってた一冊。
■2つのプロットが交互に語られる。「ダニエル1」と「ダニエル24」(後半からは「ダニエル25」)がそれぞれの語り手。ダニエル1のほうはほぼ現在を舞台にしており、ダニエル24および25はクローン技術によって生まれたる遠い未来の「ネオヒューマン」たちだ。哲学的なコメディ作家として高い評価を得ているダニエル1の「人生記」。それに対するダニエル24および25による「注釈」によって話が進められる。
■えーと、どこまで書くとネタバレになるのか判断に苦しむところがあるのでストーリー紹介はここまでとしておくけど、個人的にはいかにもフランスのSFだなあと思ったフランス映画でSF的な要素を取り込んでいるやってこういうノリのが多い気がする(テキトーかつ漠然とした話ですいません・苦笑)
ある島の可能性 ミシェル・ウエルベック 中村 佳子 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 14:30 | コメント (0) | トラックバック
2007年08月08日
残雪『突囲表演』
■佐々木敦さんのブログで「アタマがアレになった人が書いたとしか思えない驚異のメタフィクションにして唯一の邦訳長編」なんて書いてあったので、「そそそそれは読まねば!」と思って図書館で借りてきた。なるほどこりゃすげえや。あ、松岡正剛の「千夜千冊」でも紹介されてますな。
■基本的には中国の田舎町を舞台に、謎の女性「X女史」の「姦通事件」をめぐり、周囲の村人たちが「藪の中」的にさまざまなことを語るマジック・リアリズム小説、というような感じ。著者の両親は文革の際に「右派」とされて結構つらい思いをしているようなので、「X女史」に詰め寄る村人たち不条理ぶりなんかはそういった経験が反映されているのかな、なんて思ったりもするのだがそこにはとどまらない。「筆者」と称する語り手がまた曲者で、中原昌也+森見登美彦みたいな大仰かつ饒舌な文体で語られる。いやあこんなブッ飛んだ小説はひさびさに読みました。世界は広いなあ。
■河出から今度スタートする池澤夏樹・編の世界文学全集にも、残雪の未訳作品「暗夜」が収録されるという。楽しみです。それまでに他の作品も読んでおこうと思う。
ちなみにこの全集、他に個人的に楽しみなのは青山南の新訳によるケルアック『オン・ザ・ロード』と沼野充義の新訳によるナボコフ『賜物』とかかなあ。
突囲表演 残 雪 近藤 直子 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 14:50 | コメント (0) | トラックバック
2007年07月23日
古川日出男朗読GIG映像@YouTube
京都で行われた朗読ライブの映像が。
投稿者 junne : 11:36 | コメント (1) | トラックバック
2007年07月18日
「新潮」8月号
■仲俣暁生さんのブログで触れられていた橋本治・浅田彰対談が読みたくて購入。が、基本的に日本美術の話が中心でいまいちピンと来なかった。まあ全体的に、ガツンと突き抜けちゃった橋本治に対していまひとつキレの悪い浅田彰、という印象。しかしながら個人的に膝を打ったのは浅田彰の
「ディシプリン」だけれど、日本語で言えば要するに「躾け」ですね。姿勢をちゃんとしなさいとか、げらげら笑ってちゃいけませんとか(笑)
という発言。なるほどー、さすがうまいこというなあ、なんだかんだで頭のいいひとは違うなあ、と思いました。
■で、珍しく掲載されてる小説も(連載ものを除き)ざっと読んでみた。大竹昭子「見学随時可」という短編が結構おおっ!と思う出来。中年サラリーマンが散歩中に立ち寄ったマンションで変わった物件を発見し、誰にも内緒の隠れ家としてそこを借りることにする。が、そこからだんだん悪夢的な展開に……、というようなもの。なかなかゾクっとくる幻想小説。
■あと田中慎弥「蛹」というのが変な小説だなぁと思った。かぶと虫の幼虫が主人公なの。変に重厚な文体で、幼虫の物思うさまを描くという。
■ちょっと前にomo*8くんに「文芸誌なんか普通に買ってるんですねー」と感心されたことがあるのだが、実際たまに読むと面白いですよ。
新潮 2007年 08月号 [雑誌] Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 23:59 | コメント (0) | トラックバック
2007年07月09日
スタジオボイスの政治特集号
■水越真紀、雨宮処凛、三田格、田中康夫、高祖岩三郎、ECD、外山恒一となかなか豪華メンバーが揃っているので買ってみたよ。
STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2007年 08月号 [雑誌] Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■まだ読んでないので感想はのちほど。ちなみに仲俣暁生さんが
ついでにこの特集、「初心者のための政治アイテム22」と称した必読書&映画ガイドがあまりにひどいので、いくつかこちらで追加
といって本などをいくつかあげている。個人的にさらに追加するとするならば、本ということでいうと、まずは大学受験用の参考書でいいから世界史のテキストを読むべきなんじゃないかな。
これ、あくまで自戒をこめてというか受け売りなんだけど、ちょっと前の論座で柄谷行人が左翼になるためのブックガイドみたいな記事の中で、「まずは世界史を一通りおさえろ」と書いていたのにハッとしたのであります。これはほんと、自分もできてないことなので、近々何か適当な教材を買って勉強したいと思ってるところ。
投稿者 junne : 23:23 | コメント (0) | トラックバック
2007年07月08日
吉田アミ『サマースプリング』
■一読してとにかくまず思ったのは「よく出した(出せた)なー」ということだ。
■本書は著者が中学生のときに体験した「地獄の季節」を記録したノート(10年にわたって綴られたそうだ!)がもとになっている。現在の著者の手によって全面的に手が加えられているが、おそらく痛いとか恥しいとかそういう理由で削ったような箇所はないんじゃなかろうか。中学生らしい自意識と周囲の軋轢なんかが生々しく残されている。著者は76年生まれということで、ぼく(75年生まれ)とほぼ同世代だ。ちょうど「校門圧死事件」なんてのがあって、校則の厳しい学校教育が問題になったりしてた時期(『ぼくらの7日間戦争』でワクワクしたクチですよ!)、「ゆとり教育」なんてことが言われだす前のこと。
■周囲との摩擦、そして家庭も無残に壊れていく。そんな中で発せられる「プライマル・スクリーム」としてのハウリング・ヴォイスの原点。そして現在の彼女の持つある種の「強さ」の原点が描かれる(ここはほんとに感動するよ)。
■ある意味かつてこんな本は存在しなかったと思う(さすが、前衛家ならではですね)。みんな買うといい。
サマースプリング [文化系女子叢書1] 吉田アミ 郡淳一郎/木村カナ タナカカツキ Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 23:59 | コメント (0) | トラックバック
2007年07月01日
between 2~5
■先日Lilmag店主から取り置きしていたミニコミをばっさり受け取った(けど、手持ちが足りなくてお金を払えませんでした、ごめんなさい!今度ちゃんと払います!そういえばその翌日は呑み会でお金が足りなくて、超久々に会った友達にお金を借りたのだった!ダメじゃん大人なのに!猛省!!)のだけど、その中にあったのが「渋谷系とその時代」トークも大変面白かった(イベントの感想は後日書きます)ばるぼらさんのミニコミ「between」の2~5号。
■前にもちらっと紹介したけど、「3分以内に読み終わる」ことを目的とした「ミニなミニコミ」で、基本的に古本紹介の本。よくもまあこんなものを見つけてくるよなあ、というようなものもあれば、「あ、それ俺も持ってる!(ロマゴー紙版とか)」とちょっと嬉しくなるようなものもあり。が、一番衝撃的だったのは「買ったらすぐ読んじゃうので積ん読がほとんどない」という記述だった!凄すぎる!
投稿者 junne : 14:53 | コメント (0) | トラックバック
2007年05月07日
GW前半に読んだミニコミなど
■GW前半(弊社はカレンダーどおりの営業)は体調が思わしくないこともあって基本的には家で家事とか読書とかして過ごした。ということで、GW前半に読んだZineなどをご紹介(すべてLilmag Storeで入手)
架空のスーパーヒーロー(?)のイラスト集。ロールシャッハ感のある奇怪な造形で、ちょっと山塚EYEの描く絵に通じるセンスがあると思った。
8cmCDサイズのミニ・コミックというか絵本?いろんな場面や文字に隠された縮れた毛を探せ!こういうのがレコード屋とかにさりげなく置いてあるのを見つけたりすると、きっと嬉しいと思う。
熱い&厚い!160ページとかあるのにコピー誌でしかも版型が変則(縦長)。ガワから感じられる熱気は、中身を読んでも裏切られることはないだろう。えーと、内容を説明するのはすっごく難しいのでみんな買うといい。
ばるぼらさんが「3分で読める内容」というコンセプトで立ち上げたミニコミ。肩の力を抜いて継続的に出していこうという趣旨で、中身は手近にあったもののレビュー。とはいえ取り上げられているもの(ほとんどが珍しい古本)は結構濃かったりするので読後はしっかり充実感は感じられる。続きに期待!
■そしてネット通販が苦手な人に朗報!5/12の2525稼業野外ライブ@代々木公園の際に、Lilmag Storeの出張販売が。ゲストに、Extreme NightでFilthと共演してもらう鈴木新さんも参加するということでこれは必見でしょう。
投稿者 junne : 23:01 | コメント (0) | トラックバック
2007年04月16日
雨宮処凛『バンギャル・ア・ゴーゴー』
ヴィジュアル系バンドの追っかけの女の子を描いた小説。著者も追っかけだった経験があるということなので、自伝的とは言わないまでも実際に見聞きしてきたことが描かれているんだろうと思う。
北海道の田舎町に住むいじめられっこ気味な優等生が、中学でヴィジュアル系と出会い追っかけになる。学校や親など周囲との軋轢。追っかけを通して出会った友達。やがて高校を中退し、東京へ……。
地方のライブハウス周辺での追っかけカルチャー描写はいろいろと興味深いし、著者がぼくと同い年だったりするので「あー、あったあった!」と思うような記述も多い。そういった風俗記録としての面白さもさることながらそれと同じくらい、いやそれ以上に多くの紙幅を裂かれているのが主人公(≒著者?)の独白だ。周囲の理解が得られず仲間内だけで孤立していく。ただ「バンドが好き」「バンドマンが好き」ということだけがよりどころで特にやりたいことも得意なこともなく、強い自意識をもてあます。なんかこう、地方の文化系女子に対する抑圧のキツさ、みたいなものがビシビシと伝わってくる感じで痛々しいことこのうえない。『グミチョコ』も情けなかったけど、こちらはもっと徹底的に救いがない。
余談だけど、「ヴィジュアル系」っていう言葉自体が出てきたのは実際にはこの本で描かれてるよりもうちょっと後なんじゃないかという気がする。93年くらいじゃなかったっけ?個人的には大学入ってから(93年度入学です)出てきたと思うんだけど。最初は「お化粧系」とか言ってたよね?
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投稿者 junne : 22:06 | コメント (2) | トラックバック
2007年04月12日
Our Band Could Be Your Life
■3ヶ月ほどかかってようやく読み終えた。80年代のUSインディーズ史を、代表的なバンドのバイオグラフィで綴った本。登場するバンドは
・Black Flag
・Minutemen
・Mission of Burma
・Minor Threat
・Husker Du
・The Replacements
・Sonic Youth
・Butthole Surfers
・Big Black
・Dinosaur Jr
・Fugazi
・Mudhoney
・Beat Happening
■SSTがまったくの手探りで始まったところから、91年のニルヴァーナ旋風あたりまでが対象になっている。各アーティスト当人および周辺の人々への取材も結構丁寧に行われているようで、随所で本人の発言が引用される形式。Minutemenに関しては去年の映画と結構重なる部分があるので、同じインタビューがもとになってるんじゃないかな(そしてそのMinutemenの章では、やはり最後のD.Boonの死のところが泣けます)。
■Butthole Surfersはあまりにクレイジーだし、Fugaziはあまりにかっこいいし等々、個別に語られるエピソードの面白さはもちろんなのだけど、あまり興味のないバンドの分も読んでいくと、一冊を通してアメリカのインディシーンの変遷が浮かび上がるようになっているのがなかなか構成の妙だと思う。いい本です。
Our Band Could Be Your Life: Scenes from the American Indie Underground 1981-1991 Michael Azerrad Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 23:59 | コメント (0) | トラックバック
2007年04月06日
菊地成孔『聞き飽きない人々』と発売記念トークイベント@ジュンク堂新宿店
■以前学研からリリースされた「200CD」からのスピンオフ企画として出版された『聴き飽きない人々』。要するに「200CD」収録の対談をピックアップして大幅増補したものだ。「200CD」の時点では取り上げられた音楽ジャンル(ビターブラック、スイートブラック、ラテン、ポップス、クラシック/現代音楽、ジャズ)の全てにおいて「80年代はダメだった」という評価に落ちついたのだけど、今回の『聴き飽きない人々』で追加で収録された「アフリカ」の章では、「アフリカン・ポップスは80年代がピーク、というか80年代しかない」という驚愕の結論が。
■大量の音源について言及されてはいるけれども、ディスクガイドとしてまとめたページというのがない分だけ「200CD」に比べると実用性では劣る。こちらはあくまで「オモシロ音楽談義」を楽しむというのがメインだろう。もちろん、ディスクガイドを作成するために行った対談だから、ここに登場するディスクを拾ってくだけでも面白いとは思うけど。
■ということで4月5日(木)には発売記念イベントとして、「80年代は永遠にダメなのか?」と題してトークイベントが行われた。聞き手は元ユリイカ編集長の須川さん。ちょうど二人の年代が近いこともあって「80年代観」をかなり共有している模様で、なかなか盛り上がったのではないかと。
■もう何年も「来る来る」と言われていた80年代リバイバルだが、どうもこのまま永遠に来ないんじゃないかという話から、以下気になったキーワード
・Perfumeはたぶんこのままずっと来ない(チャート的には)
・若者たちの動物化を超えた退行ぶり
・雇用が悪いと顔つきが変わる
・現在の80'sリバイバルはあくまで音色レベルの話で、作曲技法には及んでいない
・アフリカン・パーカッションの音色と80年代レコードのサウンドとの親和性
等々。何年かしてからもういちど「結局80年代は来たのか?」という検証をしたいかも(笑)
聴き飽きない人々 菊地 成孔 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
FRANZ KAFKAS AMERIKA デートコースペンタゴンロイヤルガーデン Amazonで詳しく見る by G-Tools |
投稿者 junne : 18:35 | コメント (0) | トラックバック
2007年03月30日
AERA '07.4.2号
現在発売中の「アエラ」巻頭記事の「ワーキングプアーの大逆襲」が良い。
派遣などの非正規雇用者による新しい形の労働組合、そして高円寺ニート組合などの活動についてのレポート。立場の弱い非正規雇用の若い女性が携帯メールやmixiのコミュを使って会社に知られないように根回しをして組合を立ち上げる経緯などすごくためになるし、水越真紀さんによる高円寺ニート組合などの、ネタっぽいノリの政治活動についてのレポート記事も面白い。こないだ紹介した「riot grrrlというムーブメント」のvegangrrrlさんも取り上げられてます。
あと、後ろのほうに載ってる音楽の記事で「ダウンロードDJ」とかいって、やけのはらと露骨キットが紹介されてたりするのも笑う。
投稿者 junne : 13:21 | コメント (0) | トラックバック
2007年03月28日
ニューヨーク烈伝―闘う世界民衆の都市空間
■ニューヨークは、ぼくが今まで一番多くの回数訪れている外国の都市だ。初めて行ったのが98年だったかな。この時点ですでにジリアーニによるジェントリフィケーションは相当進んでおり、街のあちこちに警官が立っていて、特に怖い思いをすることもなかった。まあ、1~2週間かそこら滞在するだけの観光客にとってはそれはそれでありがたいことではある。
■が、それによってニューヨークから失われたものが確実に存在する。それは「文化」とか「刺激」とかいったある種「嗜好品」的なものだけではなく、より実際的な多くの問題をはらむ。家賃の値上げによって追い出される人々、とか(そして、これって現在東京に住む上でも見逃せない問題だと思うのだ)。CBGBの移転とか、Tonicも危ない、なんてのもそういう流れの中にある。
■高祖岩三郎『ニューヨーク烈伝―闘う世界民衆の都市空間』は、さまざまな人種・階級からなる民衆の闘争の場としてのニューヨークを描いた本。基本的に「ニューヨーク本」とかっていうのは「ニューヨークっていいよねー」で済んじゃうようなものが多い(偏見です)のだけど、この本は一味違う。いろいろと我々が学べる本だと思う。ABC No Rioの話とか、血が騒ぐことこの上ない。選挙の前に読んでおきたい一冊だ。実はこの本は図書館で借りて読んだのだけど、近いうちにちゃんと買います。
ニューヨーク烈伝―闘う世界民衆の都市空間 高祖 岩三郎 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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2007年03月12日
CRASS ストーリー
■新宿のアナキスト・インフォショップ「Irregular Rhythm Assylum」(IR.A.)制作のパンフレット。世界のパンク/HCに多大な影響を与えたアナーコ・パンク・バンドCRASSのシングル・コレクション・アルバム『Best Before 1984』についていたライナーノーツを邦訳したもの(英文も併録されている)。バンドのおおざっぱなヒストリー。「パンク」、そして「音楽」や「カルチャー」になにがしかの「意味」を求めたいひとは必読。ぼくはLilmag Storeで買ったけど、IRAに行って自分でホチキス止めしたら割引があるそうだ。
■ちなみに他に現在入手しやすいCRASS関連のテキストとしては、「Spectator」誌の「レベル・ミュージック」特集号、それから「文藝別冊 セックス・ピストルズ」なんかがある。「文藝」のほうはドラマーのペニー・リンボーの自伝の抜粋。原書はこちら。それと最近チェリー・レッドから出たアナーコ・パンクのヒストリー本『The Day The Country Died』なんかも併せて読むといいかもしれない(洋書2冊はは買ったんだけどまだ読んでないです……)。
Best Before 1984 Crass Amazonで詳しく見る by G-Tools |
スペクテイター (Vol.12(2004Spring issue)) Amazonで詳しく見る by G-Tools |
セックス・ピストルズ Amazonで詳しく見る by G-Tools |
Shibboleth: My Revolting Life Penny Rimbaud Amazonで詳しく見る by G-Tools |
The Day the Country Died Ian Glasper Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2007年02月25日
Expansion of Life
■これまたLilmag storeで買ったミニコミ。新宿御苑のアナキストショップ(といっちゃっていいのかな。「インフォショップ」というらしいのだけど)IRA(Irregular Rhythm Asylum)が発行しているもの。
■特集は「DIY」で、巻頭にはDIYでツアーをしている反体制アーティストFILASTINEのインタビュー。その他、小川てつオ&いちむらみさこ(カフェ・エノアール)、DIYパンクファンジン作者のテキスト、堕胎について、どぶろくの作り方、ディスクレビューなどさまざまな記事がいちいち興味深いというか、もう、今ぼくが興味のあるところど真ん中かも!パンク!
■読んでたらすごく行ってみたくなったので、実は先週日曜にライブの前にIRAにも行ってきた。噂どおりの和みスポットだったなあ。コーヒーをご馳走になったり。そして来店していたお客さんは新潟から来たラッパー(もうすぐ東京に引っ越してくるとのこと。キセルして帰ると言ってたw)と、杉並の反戦落書き裁判の被告。フツーに茶飲み話としてデモの話とかをしてるのがいい感じだと思った。
ということで、以下その時に買ったもの
-「アナキズム」第8号 特集:DIY
-ボブ・ブラック『労働廃絶論』
最近では「CRASSパンフ」なんてものも出たそうだ。これもほしい!
2007年02月24日
ハイスクールU.S.A.
■長谷川町蔵さんと山崎まどかa.k..a. salt water tuffyさんが「アメリカ学園天国」というサイトを立ち上げて同時代のアメリカ学園映画を紹介しだしたのは何年前だろう、たぶん20世紀のことだよね。やがて雑誌での連載も始まったり。で、そんな二人の活動がこの名著に結実!
■とにかく大充実の情報量。「学園映画ガイド」にとどまらない、アメリカのユースカルチャー論の本としてすごく貴重な一冊だと思う。脚注や囲みの作品紹介まで、ひとつひとつが丁寧に面白く書かれていて、ついついこちらも丁寧に読んじゃうもんだからすごく読むのに時間がかかった。ていうか、ウェブでやってたころから不思議だったんだけど、これってどうやって書いてるんだろう。内容の濃さから考えて、ライブトークを起こしたものじゃないと思うんだけど。チャットして編集、とかなのかなあ。
■ていうか、実はぼくは5年くらい前に会社に「長谷川町蔵・山崎まどか著『アメリカ学園天国』」という企画書を出してるのね。ひさびさに悔しい思いをしましたよ!
ハイスクールU.S.A.―アメリカ学園映画のすべて 長谷川 町蔵 山崎 まどか Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2007年02月22日
BET
■「Riot Grrrl」本と一緒にLilmag storeで購入した、『教科書(ry教科書』(←NOIZ NOIZ NOIZも出てくるよ!)、『ウェブアニメーション大百科 GIFアニメからFlashまで』で有名なばるぼらさんの最新ミニコミ。
伝説の自販機本「JAM」「HEAVEN」およびその他の自販機本レビュー、デザイナーの羽良多平吉インタビュー、そして伝説のライブスポット「吉祥寺マイナー」といった内容。
ばるぼらさんといえば年表なわけだが、今回もマイナーのものすごい年表が(国会図書館で「ぴあ」と「シティロード」のバックナンバーを漁って作成したとか)。「JAM」「HEAVEN」も今まで名前だけは知られていて表紙画像くらいはいくつか見たことあるんだけど、これだけ一冊ごとの内容が載ってる記事は初めて見た。
圧倒される充実ぶり。今後、nuの戸塚さんの装丁で製本され、『BETWEEN』としてリリースされる予定だそうなのだけど、その際にはきっとさらにデータが充実化されると思うので今から楽しみであります。
教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書 ばるぼら Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ウェブアニメーション大百科 GIFアニメからFlashまで ばるぼら Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2007年02月11日
riot grrrlというムーブメント-「自分らしさ」のポリティックス
■モモさんのネットショップで買ったミニコミのひとつで、もともとは大学の卒論として書かれたものとのこと。
■Bikini Killなどを中心に、90年代に、フェミニズム的なメッセージを前面に押し出したパンキッシュなガールズバンドが登場して「Riot Grrrl」と呼ばれた、というふうに記憶していたのだけれど、本書によればRiot Grrrlとはそうしたバンドだけではなく、ファンジン制作やワークショップ活動など、様々なDIY活動全般を指すものだったという。とかいうとぼくなんかはまずハードコアカルチャーと通じるものを感じがちだけど、実際にはパンク/ハードコアシーンの男性中心主義へのカウンターという側面も強かったそうだ。確かに映画『American Hardcore』の中でもハードコアの女性嫌悪ということが取り上げられている箇所があり、ヘンリー・ロリンズもそれは否定していなかった。実際にRiot Grrrl系のバンドのライブでは、男性のハードコア・パンクスによる暴力的な嫌がらせが後を絶たなかったらしい(そういえば、Los Crudosの曲でもハードコア・シーンの中の性差別についての曲があったはず)。
■フェミニズムを前面に押し出した姿勢は当時から(おそらく現在も)批判や揶揄の対象になりがちだったけれど、本書ではそうした批判に対して一つ一つ丁寧に反論し、このムーヴメントの功績をポジティブに評価しようとしている。自分にとって本当に大事なものを全力で擁護しよう、というその姿勢が何よりいいと思う。そしてその評価の中でも特に大事だなと思ったのは、Riot Grrrlの功績として、若い子の間でフェミニストであることが「クールなこと」「かっこいいこと」「ポジティブなこと」と思われるようになった、という指摘だ。左翼がかっこよくてクールでポジティヴなものに見えるようなパンクスが出てくることを切に望みます!KLF的な斜にかまえたやつじゃなくってさ!(もちろんあれはあれですごくかっこいいんだけど)
2007年02月08日
イアン・ボーデン『スケートボーディング、空間、都市』と『Dogtown & Z-Boys』
■『スケートボーディング、空間、都市―身体と建築』は、学術書なのでかなり高いのだが、内容的にはかなり面白いので、図書館で借りてても読むといいよ!
■根底にあるのはアンリ・ルフェーブルによる「街の持つ意味は建築物だけで決定するのではなく、そこにアクセスする人間の文脈によって決定される」という理論。そしてその理論を基にして、スケーターたちがいかにして都市にアクセスしていったか、それがいかに抵抗としての意味を持っていたか、というのを論じていく。単純にスケートカルチャーの発展史の資料としても貴重だと思うし、個人的にはスケートカルチャーの持つ反権威主義および反商業主義についての記述から、ハードコアカルチャーとの親和性(長年の興味の対象のひとつだったの)の謎の一端が解けた気がしたのも嬉しかった。いろんな有名スケーターの写真、広告やメディアに登場したスケーター像の変遷などなど、興味の尽きない一冊。
■そして、この本と併せて観るのにバッチリな映画が『Dogtown & Z-Boys』。80年代の南カリフォルニアを舞台に、スケートカルチャーの大パラダイムシフトを起した少年スケートチーム「Z-BOYS」。留守宅に忍び込んでプールの水を抜いてスケートをし、数々の斬新なトリックを生む。その犯罪スレスレというか立派な不法侵入でスケートを楽しむ彼らの姿は確実に「街の意味」を自分達の文脈で作り変えている。本の中に出てくる伝説的なスケーターたちが実際にプールで滑っているところがたくさん映っているのが嬉しい。あと個人的に見所だったのが、「当時DCで『Thrasher』に載ってるZ-BOYSの姿を見て、『すげえことが起こってるんだな!』って興奮したよ」なんて語っているイアン・マッケイとヘンリー・ロリンズ。彼らは最近「昔話をする」のが主な仕事になってるような気がするぞ、特にロリンズ(笑)。
■えーと、ていうかあれだ、せっかく板買ったんだからスケートしような、俺。
スケートボーディング、空間、都市―身体と建築 イアン ボーデン Iain Borden 齋藤 雅子 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
Dogtown & Z-Boys (Full Dlx Sub Dol) Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2007年01月18日
柴崎友香『きょうのできごと』
■映画の原作ということだが、映画のほうは未見。数名の男女のある日のできごとを、それぞれの視点から描いた連作短編。ひとつひとつはどうっていうことのない話なのだけどこれがなんだか凄くいい。
■関西弁の会話がどれも読んでて凄く気持ちがいいのと、ところどころで「おおっ!」と思うような文章が出てくる。のだけど、これってあくまでも文の流れの中で生きるものなので、そのフレーズだけ抜き出してみてもたぶんその良さは伝わらないだろうなあ。
■最初の短編で「今日が明日になるのはいつか」という会話が出てきて、最後の短編では「気がついたら朝になっていた」瞬間が描かれている、なんて辺りもかっこいい。
きょうのできごと 柴崎友香 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2007年01月11日
Lilmag storeオープン
野中モモさんがzine、古本、その他いろいろを扱うネットショップ「Lilmag store」をオープンさせました。ということで、いきなりガシガシ購入(注文第一号だったらしい・笑)。今回受け渡しは手渡しでお願いすることにしちゃったのだけど、自宅のポストにミニコミが届くというのもほんとは好きなんだよなー。
開店早々魅力的な商品ラインナップだし、今後も点数を増やしていってくれると思うので楽しみであります。ぼくが買ったものについては、また手元に届いてから改めてってことで。
そして、一昨日急に思いついたのだけど、今年はミニコミを作ろうと思っています(仕事でも本を作ってるのにね!どんだけ本が好きなんだって話ですけどね!)。
完成したら是非置いてもらいたいところだわー。なんつうか、ここに自分の作ったものを一緒に並べてほしいと思わせるサイトだと思います!
投稿者 junne : 19:25 | コメント (0) | トラックバック
2006年10月03日
The EX / 1936, The Spanish Revolution
オランダのポストパンクバンドがリリースしたCDブック。スペイン内戦の写真集に8cmCDが2枚(それぞれ2曲入り)がついたもの。
スペイン内戦時のアナキスト組織CNTの残した写真で構成された写真と、簡単な説明がつく。
CDは革命歌のカバーや、革命家の言葉にバンドが曲をつけたものなど。どこか東欧っぽいような旋律もありつつ、ノイジーで攻撃的なギターと鋭角的なリズム、ストイックなヴォーカルで凄い硬派な演奏。すげえかっくいいです。
バンドが自身のレーベルからこういうものをリリースしてるってことが凄いよな。
1936, The Spanish Revolution Ex Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2006年09月05日
200CD ザ・ロック・ギタリスト
一見するとありがちなCDガイド本だが、その実えらく偏った一冊。なにせ執筆陣に角田さんやら宇波くんやら畠中さんやらといったCozmic Urination勢がいたり、取り上げられたギタリストには杉本拓やら秋山徹次といった名前もあったり。
ということで一筋縄ではいかない本だが、「ロック・ギタリスト」と謳っておきながらジョニー・サンダースと鮎川誠がいないってのはどうかと思う。クリス・インペリテリとか載せてる場合じゃないでしょw。
200CDザ・ロック・ギタリスト―憧れのギタリスト名演ディスクガイド 200CDザロックギタリスト編集委員会 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2006年08月22日
8/22(Tue)の日記
■仕事のことをはじめとして、いろいろと気がかりなことがあって眠れない。ということでこういう時は読書だ。
クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い 西尾 維新 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
実は初めて読む西尾維新。ちょっと前に読んだ吾妻ひでお『うつうつひでお日記』で、しきりに「こっぱずかしい恋愛小説」みたいに書かれていたのを思い出して、あーなるほどそうゆうふうに読むんだー、と思ったりした。
2006年08月21日
8/21(Mon)の日記
■高校野球が気になって仕事になりませんでした。
■ボリス・ヴィアン『ぼくはくたばりたくない』を読む。詩・シャンソンの歌詞+ジャズ・エッセイを集めたもの。詩はスカしてていいですなあ、ヴィアンはこうでなきゃ、っていう。
ジャズ・エッセイは、まさにビバップが出てきた時期にリアルタイムで書かれたものなので、普通に資料として興味深い。「ダウンビート」とかから最新情報をクリップしてコメントしていく、というスタイルはちょっと植草甚一を思わせる。時代的にはバップ黎明期で、ファンの間でも賛否両論だったりする中で一貫してバップを擁護する姿勢を見せてるところも、常に「新しいジャズ」を擁護していたJ.J.氏に通じるものがあるような。
ボリス・ヴィアン全集 9 (9) ボリス・ヴィアン 伊東 守男 村上 香住子 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2006年08月17日
8/17(Thu)の日記
■『植草甚一主義』を読む。だいぶ前に(結構安く)手に入れていたのだけど、ずっと積んであった一冊。大判で、とにかくJJ氏のコラージュやら写真やらがたくさん載ってるのが嬉しい一冊。これは結構宝物ですね。
2006年08月07日
8/7(Mon)の日記
■辛酸なめ子『道徳の時間』を読む。なめ子せんせいの下ネタは大変くだらなくて最高なので、是非ぎしょれとコラボレートしてほしいと思いました。
道徳の時間 辛酸 なめ子 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2006年08月06日
Inferno Punx
■日本が誇るグレイト・パンク・レーベル
MCR Companyの設立25周年を記念したクラスト写真集。6月くらいに買ってそのまま床に積んであったのに目を通してみたよ。
■今でも活躍しているベテラン勢の90年代前半くらいの勇姿、今では存在してなくて伝説になっているバンド、伝説にすらなってないバンドなどなど、とりあえずぼくはかっこいいパンクスの写真については見てるだけで飽きないので満足な一冊であります。
2006年07月19日
吾妻ひでお『うつうつひでお日記』
『失踪日記』が大変評判になった吾妻せんせいの新刊は、『失踪日記』刊行前の時期に書かれていたマンガ日記。ほんとに日記です。ものすごく淡々と変化に乏しい日常を描いていて、特に最初のほうは結構読みにくいのだが不思議と読ませる。驚くのが本を凄くたくさん読んでること。その感想が結構興味深かったり。
うつうつひでお日記 吾妻 ひでお Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2006年01月16日
『ロリータ』読了
ようやく『ロリータ』を読み終えたわけだが、解説の若島せんせいのアドバイスに従って冒頭を読み返すと…おおおおー!そうだったのか!これはちょっとまた読み返さなきゃだなあ。
「新潮」掲載の「二重露光」も大変興味深い指摘が。
2006年01月12日
ウラジミール・ナボコフ『ロリータ』
元日に購入してからずっとこればっかり読んでいる。少なくとも小説は他には読んでいない(あ、プリーストは読んだのは去年の暮れなの)。
保坂和志が、小説を読む時にはその小説へのチューニングというのが必要で、一度ある小説にチューニングをあわせてしまうと他の小説を併読するのは大変だ、というようなことを言っていた(と、queequegさんが言っていた)。
で、ぼくは最近までそういうことはあんまりなかったんだけど、ここ一年くらいか、時おりそういう状態になることがある。あたりまえのことかもしれないけど、丁寧に読もうとするとどうしてもそうみたいで、ナボコフみたいにちょっとひっかりながらも惹きつけられてゆっくり読み進む、みたいな場合が多い。
こうなっちゃうと読書っていうのはもう楽しくてしょうがなくなってくるわけで、わずかな金額で何時間も何日も楽しめるんだからつくづく本ってのは安上がりな道楽だ(ってことは何度も書いてるけど、何度でも言いたい)。
その反面、そういう読み方をしてると読むスピードはどうしても遅くなるので積読本が溜まってしまいがちなんだけど、それはまあ仕方がない。今年は今までより丁寧に本を読むことを心がけたいな、と思う。ようやく小説の読み方が少しわかってきたのかもしれないから。
そうそう、あちこちで今月号の「新潮」の豪華執筆陣が話題になってて、実際ぼくも買ったわけだけど(例によって積んである)、みんなが言ってる「小島信夫・中原昌也・青木淳吾・福永信(アンド保坂和志の連載)」というところよりもぼくが楽しみなのは、若島正の「二重露出―『ロリータ』新訳の眩暈」というエッセイだったりするのです。
ロリータ ウラジーミル ナボコフ Vladimir Nabokov 若島 正 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2006年01月11日
クリストファー・プリースト『奇術師』
二人の奇術師の長年の争い、それぞれのイリュージョンの謎、そして複数の視点から語られる「信用できない語り手」の手法。しかもちょうどアラマタせんせいのブログにもこないだ登場したニコラ・テスラが絡んできたので「おお、タイムリー!」と個人的に盛り上がってみたり。
ハヤカワ文庫FTということでファンタジーに分類されてはいるが、SFでもありミステリでもある。ちょっと前に薦められて読んでみたのだけれど、これはアタリでしたな。ということで続けて『魔法』も読まなきゃですな。
〈プラチナファンタジイ〉 奇術師 クリストファー・プリースト 古沢 嘉通 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2006年01月10日
音楽未来形―デジタル時代の音楽文化のゆくえ
なんか最近この手の本ばっか読んでる気が(笑)。
テクノロジーの進歩によって「音楽」というものがどう変わりつつあるのか。結構レコード産業の成立とか、更にそれ以前の十二音平均律による記譜法の成立とか、歴史に立ち返って、現在一般的に考えられている「音楽」」像があくまでも歴史的なものであり、21世紀を迎えて既にそれも古くなりつつあるということを明らかにしてゆく。
『誰が「音楽」を殺すのか』や『Jポップとは何か』がジャーナリストの仕事であり、『デジタル音楽の行方』がアジテーター(笑)の仕事だとするならば、これは学者の仕事ということができるだろう(著者が実際に学者である、ということとはまた別の話。学者であっても資質的にはジャーナリストだったりアジテーターだったりするひとというのは多いからね)。
ということで、そういった本と併読するといいと思います。
音楽未来形―デジタル時代の音楽文化のゆくえ 増田 聡 谷口 文和 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
併読のススメ
だれが「音楽」を殺すのか? 津田 大介 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
Jポップとは何か―巨大化する音楽産業 烏賀陽 弘道 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
デジタル音楽の行方 David Kusek Gerd Leonhard yomoyomo Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2005年12月27日
デジタル音楽の行方
デジタル技術の発展により、音楽業界は今後どうなるのか!?という本。レコード業界は一環して「デジタル技術がもたらした違法コピーにより、音楽は危機に瀕している!」と叫び続けているわけだが、本書の主張によればそもそも「音楽業界=レコード業界」という図式が成り立っていたこと自体が異例なことであり、むしろ音楽へのニーズは今までになく高まっている。人々の暮らしの中で音楽というのは欠かせないものになっており、旧態依然としたパッケージ商法から上手く抜け出した者が今後の音楽産業で生き残っていくだろう。
結構去年から今年にかけてはこの手の議論に関わる本を色々読んだ(ローレンス・レッシグの三部作『CODE』『コモンズ』『Free Culture』、津田大介『だれが「音楽」を殺すのか?』、烏賀陽弘道『Jポップとは何か―巨大化する音楽産業』など)ので、個人的には結構既視観のある議論ではある。
で、本書で言われているようにリスナーはただ同然で音楽を楽しむことができて、かつアーティスト側には適切に利益が分配される、そんな世の中になれば大変素晴らしいことだと思う。とはいえ現状のレコード業界の抵抗ぶりを見てると、ほんとにそんなに上手くいくのかなあ、という気も(本書では、かつてのラジオやケーブルテレビなどの例をひいて、最終的には行政が介入して強制的に解決するだろう、という見通しをしている)。
あと、ここで言われている「アーティスト」っていうのが、なんだかんだでポップスターを想定してるのかな、っていう気はしました。もっとこう、ちょっとデータ形式での「配信」というのが馴染まないタイプの音楽って世の中にはたくさんあると思うんだけど。いや、テクノロジーの発達によって「ニッチ」な音楽でもそれを求める層に着実に届けることが可能になる、という話であるんだけど。んー、うまく言葉にできないんだけど微妙に引っかかるとこもないではない。
それこそ「アルバム」という単位がなくなって、みんな「好きな曲」だけを手に入れるようになる、という話とか。あと機械的に「これもオススメ」ってしてくれる機能が発達して、どんどん自動的に「好きな音楽」と出会いやすくなる、なんていう話も個人的にはちょっと胡散臭く思ってるのね。それって、「用意された」「想定内の」多様さでしかないんじゃないかな、っていう。それこそ「オススメ」機能なんていうのは、むしろシステムにより個々人のテイストまでが管理される世の中を招いてるようにも思えちゃうのです。偶然の出会いの機会がスポイルされるというか。
とはいえ、その辺は偏った音楽が好きな偏屈者が文句つけてるってだけの話で、概ね大変オプティミスティックで元気の出る本だと思うので、読んでみてはいかがでしょうか。
デジタル音楽の行方 David Kusek Gerd Leonhard yomoyomo Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2005年12月23日
保坂和志『小説の自由』
保坂和志の『小説の自由』を読んでるんだけど、色々とものを考えるきっかけになることがほんとにたくさん書いてあってもの凄く刺激的です。
音楽のことと擦り合せて考えることもできる(「見る」ことについて書かれてるあたりは大友さんの「聞く」ともあわせて考えたいと思った)し、小説の読み方ついても勿論色々と考えさせてくれる。あと「あ、この本読みたい」と思わせることが多いところもいい(これはぼくの中では良書の条件のひとつ)。しかも「読みたい」と思わせる本に持ってる本が多い(というか積読にしてある本が多い)というところもいい。
実際「積読本を読むきっかけ」を与えられる、っていうのは結構嬉しいことで。
こないだ古川日出男のインタビューを読んだら、「直感で買って数年後に読むと、直感を二段階ふむのではずれがない」ってなことを言ってたので「なるほど!」とか思ったのですが(積読を正当化されて嬉しかったともゆう)
まあ、まだ読みかけなんだけど、クロード・シモンの『フランドルへの道』の話をしてるあたりで、本から得られる高揚というのは読んでる間がピークであって読み終わってしまうと何割かしか残らない、みたいな話が出てくるので、読みかけの高揚感をお伝えしようと思った次第。
で、今読んでて「おお!」と思ったフレーズを引用しますと、(カフカの『城』は何度読んでも完全には記憶できない、という話で)
――しかし、やっぱり私は『城』をもっと記憶するまで読まなければいけないのではないか。クラシック音楽のファンだったら、四、五十分ある交響曲の全体を記憶している曲が一つか二つあるのではないか。それなのどうして小説の方は一回や二回読んだだけで「読んだ」ことになってしまうのか。小説をもっとずっと音楽の受容の仕方に近づけることが、小説を、批評という小説とは似ても似つかない言葉から自由にすることなのではないか。
『重力の虹』を3回続けて(英語で)読むと、その次に読んだときには冒頭からもうガツンと鮮明で感動するらしい、なんてことが書いてあったんだが本当だろうか。残念ながらぼくにピンチョンを原書で読むってのはちょっと荷が重過ぎるけど。
や、訳は一応読んだんだけど、凄い時間かけてダラダラ読んじゃったから全然内容はおぼえてないんだよな。もっかい読もうかなあ。そういえば『V.』も読み返したいってこないだ思ったとこだったんだよなあ。ていうかエリクソンも読み返したいしなあ。いや、でもここはやっぱシモンをいっときたいよなあ。
小説の自由 保坂 和志 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2005年12月21日
Lords of Chaos
しばらく前から、ちょっと読んでは中断し、また続きを読み始めては中断し、という感じで読み続けていた『Lords of Chaos: The Bloody Rise of the Satanic Metal Underground』をようやく読了。ノルウェー・ブラック・メタルのドキュメント本。
ブラックサバスとかにさかのぼって「エンターテイメントとしてのロックと悪魔」について概説、そして悪魔信仰の基礎知識なんかも交えつつ、いかにしてノルウェーにマジで悪魔を信仰するアンダーグラウンドなメタルシーンが生まれたか、オスローのブラック・サークル(Mayhemを中心としたブラック・メタルのグループ)、BurzumやEmperorのメンバーによる教会への放火事件、そして内部抗争による殺人、悪魔崇拝から土着信仰、そして極右思想へと結びつき世界中に影響力が広まる、悪魔教会の教祖アントン・ラヴェイへのインタビュー(「彼らがいう悪魔というのは我々が考える悪魔とは関係ない」とか言ってます)、関係者の獄中インタビュー、などなど、レアな写真(少年時代のBurzumとか)も満載の大変充実した一冊。
どう見てもコピーで作ってそうなファンジンとかまでちゃんと資料として集めてるっぽいところが素晴らしい。
ノルウェーブラックメタルっていうと、どうしても興味本位に「教会燃やすんだってよ!」「殺人までしちゃったんだってよ!」「ヤベーーー!」というノリになりがちなのだけど(いや、少なくとも10年くらいまえにはぼくはそういうノリで接してました)、結構ちゃんと「社会問題」として真摯にジャーナリスティックに取り組んだ本だと思います。
Lords of Chaos: The Bloody Rise of the Satanic Metal Underground Michael Moynihan Didrik Soderlind Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2005年10月09日
三連休の二日目であるが
■本日も仕事。まあ3時くらいにいって8時くらいには上がったので楽なものである。
■ルーディ・ラッカー『ウェットウェア』読了。解説によると、初めてサイバーパンクを意識して書いた作品なのだそうだけど、急激にサイバーパンクっぽくなってるので結構驚く。『ソフトウェア』に引き続きグイグイ読ませる面白さ。いやあ、この人体改変ネタのセンスたるや、ジーターとかスターリングより過激なんじゃないでしょうか。
ウェットウェア 黒丸 尚 ルーディ ラッカー Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2005年10月04日
通院してそのまま休んだ
■午前中は通院。基本的に問診では「どうですか?」「いや、特に変わりはないです」「あ、そうですか」くらいで、あとは次の予約を入れるだけ、という感じなのだけど、月初で保険証の確認があったりする関係でなんだかんだで時間を食うのだった。
■で、早稲田の青空古本祭で本を買う。それぞれ500円。
「ニューヨーカー」の時代 常盤 新平 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
精神病の構造―シニフィアンの精神病理学 藤田 博史 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■で、さらに高田馬場のレコファンでCD
BLUE BLOOD X YOSHIKI TOSHI Amazonで詳しく見る by G-Tools |
なんてものを買いました。105円。
■夕方新宿で『チャーリーとチョコレート工場』を見る。
いやあ、相変わらずすげえ完成度。ジョニー・デップの怪演も楽しいし、結構黒いセンスが復活しつつあるのも嬉しい。ファンシーなマーズアタックっつうかw
2005年10月03日
ダスビダーニャ
■日中は、授賞式へ来てくれた皆様へのお礼メール書き。コピペせずにちゃんと一通一通心をこめて書きました(や、ちょっとだけコピペもしたけど)。
■夕方になると、本日帰国のロシア人受賞者イリーナ・エフチェーエワさんを見送りに。彼女は英語が全然ダメでロシア語かフランス語しかしゃべれない、ということなので、昔取った杵柄で多少はフランス語のできるぼくの出番となったのです。が、実のところぼくのフランス語は今となっては惨憺たるもの。「昨日はどこに行ったんですか?」と聞こうとして「昨日」という単語が出てこない、とかそういう世界。それでも辞書片手になんとか間を持たせようとしたのだけれど流石になかなか難しかった。結局先方が疲れて舟を漕ぎ出したのを幸いこちらも黙り込む。チェックインの終了5分前にギリギリで滑り込んでチェックインさせてなんとかミッションコンプリート。しかしながら9時とかになると成田のレストランって全然開いてないのね。しかたないからリムジンバスで新宿までもどってC&Cでカレー食って帰宅。
■ばるぼら『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』読了。いやはや凄い本です。ぼくの青春は「テキストサイト前夜」くらいかなあ。つか「テキストサイト」という言葉が出てきたときに何となく違和感があったのを覚えている。ちょっと前にあべ++くんとも話したのだけど、ぼくはたぶんe-zine世代に属するんでしょうな。ネット草創期の、ほとんど神話の世界のような話の登場人物が普通に知り合いだったりする、という不思議な距離感がある本。
教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書 ばるぼら Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■ルーディ・ラッカー『ソフトウェア』も読了。こないだ読んだ『ハッカーと蟻』がいまいちタルかったんだけど、これは一気に読み終えました。おもしれえー。
ソフトウェア 黒丸 尚 ルーディ・ラッカー Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2005年09月19日
オールの翌日は使い物にならない
■デニーズから帰って寝る。昼には起きるつもりだったのだけれど、結局17時半まで寝てしまった。ということでフランス革命は断念。
■芥川龍之介『河童・或阿呆の一生』(新潮文庫)を読み始める。とりあえず最初の方に載ってる短い奴をざーっと読んだのだけれど、うーん、芥川ってやっぱどうもいまひとつピンと来ないんだよな。物凄く上手いのはわかるんだけど。